昨年夏の某日。北海道のJR登別駅から程近い住宅街の端っこにある「旅荘いずみヴィラ」へ立ち寄って、日帰り入浴して参りました。海岸から続く平たい住宅地が終わって、いよいよ奥深い山がはじまる緑豊かな崖の下に位置しており、周囲には観光客がやってくるようなものが一切ありませんので、事前に情報を仕入れていなければ、こんなところに温泉が存在しているだなんて気づかないでしょうね。登別にあるとはいえ、かの有名な登別温泉とは全くの別物です。
こちらの施設は元々住友系列の保養関係施設だったようですが、いろんな変遷を経て、現在は一般客も気軽に入浴や宿泊ができるような施設となっているみたいです(今に至る経緯はホームページ内にて細かく紹介されています)。
黄色い外壁が印象的な平屋の建物は、8~9年ほど前にリニューアルされており、館内はまずまず綺麗な方かと思います。受付にて湯銭を支払い、ロビーに置かれたマッサージチェアやソファーなどを横に見ながら、奥の浴室へと向かいます。
大きなガラス窓から陽光が降り注ぎ、明るく気持ちの良い環境が保たれている浴室。床や壁はタイル貼りです。男湯の場合、右手に2つの浴槽が前後に並び、左手には洗い場が配置されています。洗い場には温泉のお湯が出てくるカランが計9基設置されており、うち7基はシャワー付きです。ボディーソープなどの備え付けもありますので、タオル一枚あれば、気軽に利用できますね。
内湯の浴槽は大小2つが前後に並んでおり、いずれも縁は黒い御影石で、槽内はタイル貼りです。両者を仕切る塀の上に湯口が置かれて、双方に対してお湯を注いでいました。お湯はほぼ無色透明ですが、決して澄んでいるわけではなく、僅かに薄い山吹色を帯びつつ、弱い翠色を呈しているようにも見えます(翠色に関してはタイルの色の影響かと思いますが)。
お湯の投入量が豊富であるため、縁からは惜しみなく溢れ出ており、床に落ちた際に発生する波紋が、窓からの光をキラキラと反射させていました。後述するように温泉には加水されていますが、加温循環は行われておらず、れっきとした放流式の湯使いが実践されていました。
二つの浴槽を比較してみましょう。左(上)画像に写っている小さな浴槽はおおよそ1.5m×3mで、3~4人サイズ。脱衣室に掲示してある案内によれば42℃に設定されているとのことですが、実際にはそれよりやや熱く、私の体感では43~44℃はあったように思われます。湯口のお湯を手にとって口に含んでみますと、薄い塩味の他、芒硝味、そして金気を含む塩化土類泉のような味が感じられました。またアブラっぽい感覚や独特なエグミが含まれているようでした。
一方、右(下)画像の大きな浴槽は、小さな槽の2倍程と見られる容量があり、加水によって40~41℃という入りやすい温度に抑えられていました。でもその加水の影響なのかお湯の個性も弱まっており、小さな槽で得られたような特徴が全体的に薄まっているように感じられます。実際、浴槽内を見ましても、小さい浴槽では槽のタイルや御影石にうっすらと山吹色の温泉成分が付着しているのですが、大きな方ではその付着があまり確認できず、浴感としましても小さな槽の方が温泉らしい感覚がはっきりと伝わってきました。
露天風呂の浴槽は内湯の小さな槽とほぼ同じ容量で、縁の黒御影や槽内のタイルも共通しています。裏山に面している上、周囲を板囲いされているので、湯浴みしながら景色を眺望することはできませんが、塀の上からは、崖に広がる緑や青い空は眺めることができ、風も入ってきますので、露天らしい清々しい環境の中で入浴を楽しめました。露天浴槽を満たしたお湯は、縁の切り欠けから足湯らしき玉砂利敷きの細長い槽へと落とされ、そこから更に床へとオーバーフローしています。
露天風呂の湯口には金網が張られており、網目にはベージュ色の付着が見られます。おそらくこの露天も加水されていると思われますが、湯船の温度は42℃前後であり、絶妙な湯加減でした。当然ながら内湯同様、放流式の湯使いでしょう。この浴場においては、内湯の小槽が最もお湯が良く、次点はこの露天でした。
登別温泉は北海道屈指の温泉地として、国内のみならず海外からも多くの観光客がやってきますが、皆様ご存知のように温泉地は駅からはかなり離れており、今回取り上げた駅付近の登別東町「いずみヴィラ」で入ることのできる源泉は、登別温泉とは全くの別物であります。どちらかと言えば、位置的に近いお隣白老町の虎杖浜温泉に似ているように思えるのですが、よく吟味してみますと、虎杖浜の湯に芒硝感と土類感をミックスさせたような独特のフィーリングを有しており、虎杖浜温泉とは一線を画すロンリーウルフ的な存在と言えるでしょう。日帰り入浴ウェルカムであり、備品類も整っており、しかも放流式の湯使いで露天も利用できますから、当地で登別や虎杖浜とはちょっと毛色の違ったお湯に浸かりたい方におすすめしたいお風呂です。
住友3号
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉 56.2℃ pH7.2 221L/min(動力揚湯) 溶存物質2.248g/kg 成分総計2.350g/kg
Na+:410.8mg(62.24mval%), Mg++:20.3mg(5.82mval%), Ca++:174.2mg(30.27mval%), NH4+:0.5mg, Fe++:0.1mg,
Cl-:128.4mg(12.57mval%), HS-:0.5mg, SO4--:801.2mg(57.92mval%), HCO3-:512.2mg(29.13mval%),
H2SiO3:167.9mg, HBO2:16.2mg, CO2:101.8mg, H2S:0.4mg,
加水あり(地下水を加水して温度調整を行っている)
JR室蘭本線・登別駅より徒歩12分(1.0km)
北海道登別市登別東町3丁目17-6 地図
0143-83-1331
ホームページ
日帰り入浴11:00~21:00
410円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★+0.5