温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

下風呂温泉 さが旅館

2021年11月28日 | 青森県

(2020年11月訪問)
多くの温泉を訪ねている私にとって「一番良い温泉はどこですか?」という質問ほど悩ましく答えに窮するものはありません。なぜならどの温泉もそれぞれの個性があって素晴らしく、甲乙を付けること自体に違和感を覚えるからです。しかし、そんな中でも敢えて答えなくてはいけない場合、私は青森県下風呂温泉の名前を挙げることにしています。なぜなら個人的に大好きだから。本州の北端らしい最果て感があり、アットホームでリーズナブルな小規模旅館ばかりで、硫黄たっぷりのお湯に浸かった後は、目の前の津軽海峡から水揚げされた新鮮な海の幸に舌鼓を打てるという、私好みの条件をいくつも兼ね備えているからです。
拙ブログでもいままで複数の施設を紹介しており、昨年(2020年)11月には閉館カウントダウン中だった公衆浴場「新湯」「大湯」を取り上げました。これら両公衆浴場を訪ねた際、私は「さが旅館」で一晩お世話になっていましたので、今回記事ではその時のことを書き綴ってまいります。

宿が位置する場所は昨年閉鎖されてしまった大湯公衆浴場の右隣、「まるほん旅館」の向かい側です。チェックインしますと、とても気さくな女将さんが色々とお話ししながら、お部屋へと案内してくださいました。


この時通されたお部屋は上画像の和室です。清掃が行き届いた室内にはテレビやエアコンが完備されている他、トイレや洗面台も備わっており、とても便利で快適に過ごせました。


お部屋の窓を開けると、まず目の前に大間鉄道未成線を遊歩道化した「鉄道メモリアルロード」が目の前を横切り、その向こうに下風呂の漁港と津軽海峡を望めます。


かつてアイヌの方々がしょっぱい川と呼んだ津軽海峡の対岸には北海道の姿がはっきり見えます。おそらく恵山でしょう。当地を旅したことがある方ならご存じかと思いますが、当地は青森県にもかかわらず、北海道のテレビやラジオの電波が海峡を越えてしっかり届くため、青森と北海道両方の放送を視聴・聴取できるんですね。


下風呂温泉に宿泊する楽しみの一つが、新鮮な海の幸。当然ながらお宿によって献立や得意料理が異なりますが、どの宿も魚介が中心であり、とっても美味!
上画像は夕食です。品数が多くて食べきれそうになかったのですが、とても美味しいので気づけばペロリと平らげていました。


この時はオプションで活アワビのステーキをお願いしました(予約の際に申し出ています)。おそらくご近所の佐井村で採れたものではないかと思います(佐井は天然・養殖両方のアワビの産地です)。活きたアワビは身を左右によじりながら火あぶりにされ、その姿を目にすると少々気の毒な気もしますが、でもこれが実に美味。しかも他の地域と比べると当地はかなりお安くいただけます。おすすめ。


こちらは朝食。ホタテや焼き魚などの他、下風呂名物のイカがお刺身として出されました。近年はイカの不漁が続いており、東京ではなかなか美味しいイカを入手できないため、私は敢えてイカを口にしないでいたのですが、さすが下風呂のイカは非常に美味。久しぶりのイカに私は欣喜雀躍でした。


さてお風呂へまいりましょう。浴場は1階にあり、シンプルな造りの内湯が男女1室ずつ。綺麗に手入れされていますから気持ち良く湯あみできるでしょう。更衣室から浴室へ入るドアを開けると、ご当地ならではの硫化水素臭がツーンと鼻孔を突いてくれるので、温泉気分が一層盛り上がること間違いなし。なお洗い場にはカランが5基並んでおり、うちシャワーつきは3基です。


縁に木材が用いられることで見た目も感触も柔らかく温かな感じをもたらしている浴槽。私はこの湯船へ宿泊中に5回ほど入ってしまいました。
下風呂温泉には大きく分けて大湯・新湯・浜湯という3種類の源泉があり、宿によって引いている源泉が異なることは、温泉マニアには夙に知られていますが、こちらのお宿に引かれている源泉は新湯です。
当記事の冒頭で申し上げたように、こちらのお宿は大湯公衆浴場に隣接していますし、周囲のお宿も大湯源泉を引いているので、ここも大湯を引くのが自然なのですが、なぜか離れたところで湧く新湯源泉をわざわざここまで引いているのです。

白濁しやすい大湯と異なり、新湯は比較的透明なことが多く、引湯距離が長いこちらのお宿では湯の花が発生しやすいのが特徴です。下風呂の多くの旅館では湯口にストッキングを被せて湯の花を漉し取っていますが、こちらでは湯口で漉し取らずそのまま投入しているので、湯の花がたくさん舞うのでしょう。しかし、私が宿泊した時は、透明ではなく湯の花もさほど舞うことなく、夜も翌朝もひたすら白濁し続けていました。硫黄泉はコンディションによって見せる姿が異なり、大いに固定概念を覆してくれるので実にユニークですね。

ちょっと熱い湯加減なのですが、とにかく浴感が素晴らしいので、一度湯船に入ると後ろ髪を引かれて出られなくなってしまいます。訪問時は既に海峡から冷たい風が吹いていましたが、このお湯に浸かったおかげでいつまでもホコホコと温浴効果が続きました。
下風呂はどのお宿もすばらしく、お湯も最高なので、アクセス面に少々難があるものの、何度も足を伸ばして訪ねたくなります。今度はいつ行けるかな。


新湯1・2・3・4号泉(混合泉)
含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉 78.8℃ pH7.40 溶存物質5.280g/kg 成分総計5.331g/kg
Na+:1179mg(62.23mval%), Ca++:274.7mg(16.64mval%), NH4+:136.4mg(9.17mval%),
Cl-:2402mg(86.35mval%), Br-:3.6mg, I-:1.0mg, HS-:2.8mg, S2O3--:8.7mg, SO4--:294.0mg, HCO3-:250.9mg,
H2SiO3:128.0mg, HBO2:378.7mg, CO2:49.5mg, H2S:1.3mg,
(平成27年11月30日)

青森県下北郡風間浦村下風呂字下風呂24
0175-36-2214
紹介ページ(風間浦商工会)

日帰り入浴不可のようです
夜間23:00~翌朝6:00は入浴不可

私の好み:★★★
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羽生温泉 華のゆ

2021年11月22日 | 東京都・埼玉県・千葉県
前回記事で群馬埼玉県境の利根川を行き来する「赤岩渡船」を取り上げました。わずか4~5分の船旅ですが、れっきとした県道に指定されている航路であり、かつ歴史ある渡し船でもありますので、川風を全身に受けながら昔日の往来に想いを馳せ、実に風流なひと時を楽しむことができました。


さて群馬県側に降り立った私は、千代田町役場付近でタクシーを呼び寄せて館林駅まで向かい、館林から東武電車に乗車。せっかくなので羽生駅で途中下車し、駅から至近にある温泉入浴施設「華のゆ」へ立ち寄ることにしました。駅からとても近く、しかもお湯の質も良いため、これまで私は4~5回ほど利用しているのですが、拙ブログでは遠方の温泉を優先して取り上げていたため、なかなか紹介する機会がありませんでした。


こちらは別の日に撮った正面の画像です。当たり前ですが、明るい時間帯に撮った画像の方が見やすいですね。この「華の湯」はホテル「ルートイングランディア羽生」の入浴部門と称すべき施設で、ホテル宿泊客は無料で利用できるほか、スーパー銭湯としても営業しており、いつも多くのお客さんで賑わっています。


「華の湯」の玄関は、ホテルのエントランスからぐるっと裏側へ回ったところにあります。


まず下足を下駄箱に納め、その鍵を持って玄関ホールを横切った奥にある受付へ向かい、料金を先払いします。そして料金と一緒に下駄箱の鍵も預け、引き換えに館内精算用バーコードが付いたロッカーキーを受け取ります。

脱衣室のロッカーは縦に長い上下二段式で比較的大きなものが用意されています。また脱衣室の奥の方には洗面台付きパウダーゾーンが設けられ、ブース数が多く、総じて使い勝手が良好です。


今回の記事に浴場内の画像はありません。場内の様子をご覧になりたい方は、お手数ですが公式サイトでご確認ください。

脱衣室から浴場の引き戸を開けると、男湯の場合は入ってすぐ右手にスライドドアで仕切られた洗い場があり、中に入るとシャワーつき水栓が計30基設けられています。一般的なスーパー銭湯ですと、大きくて広い一つの空間の中に洗い場や浴槽を配置しますが、こちらは両者を完全に分けており、相互間を行き来するには通路を歩くという、他ではあまり見かけない設計を採用しています。なぜこのようなスタイルにしたのか、どのような効果が期待できるのか、どなたかご存知でしたら教えてください。

内湯にはミスト・高温・中温の各サウナ、水風呂などといったサウナ愛好家に欠かせない設備があるほか、真湯のジェットバスや半身浴など各種浴槽が並び、窓側には源泉かけ流しの主浴槽が配置されています。プールを彷彿させる大きな主浴槽は檜風呂で、縁の表面は滑り止めの溝が掘ってあります。また底面にはグリーンタフの石材が敷かれており、湯船に浸かっておしりを落とした時の感触が良好です。
この主浴槽では壁際にある湯口からは源泉のお湯が絶え間なく落とされ、大きな湯船を満たしています。適温で実に良い塩梅です。そして湯船のお湯は檜の縁からオーバーフローして直下のグレーチングヘと流下していきます。グレーチングの周りは温泉成分の付着によって薄く焼け爛れたような色に染まっており、温泉マニアとしてはビジュアル的な興奮を覚えずにはいられません。

次に露天ゾーンへ移りましょう。露天にもバラエティに富んだ浴槽が並んでいます。まず中央には屋根が無い源泉かけ流しの岩風呂(歪な楕円形で縦4メートル×横2メートル程か)、そして丸い形をした「変わり湯」(私の訪問日は山代温泉の入浴剤が投入されていました)が隣り合っており、そしてその中央の浴槽を取り囲むようにして、左から時計回り順に、寝転び湯、寝湯、真湯の熱湯、屋根付きの源泉かけ流し浴槽(2.5×3メートルほどの四角い岩風呂)、座湯、壺湯といった浴槽が並んでいます。お客さんがそれぞれ自分の好みに合った浴槽を選べますし、いろんな浴槽をハシゴする楽しみも得られますね。なお、こちらの施設において、源泉かけ流しの浴槽にはネームプレートに温泉マークが付けられており、私のような「かけ流しじゃなきゃ入りたくない」という御仁にとっては実に親切な配慮と言えましょう。

露天風呂の各浴槽(特に2つのかけ流し浴槽)は内湯よりも若干ぬるめの湯加減でしたが、とはいえ適温であることに変わりなく、特に私個人としては、奥に位置する屋根付きの小さなかけ流し浴槽に入った時の気持ち良さが他の浴槽より頭一つ抜け出ていたような気がします。


分析表によれば、地下1500メートルから汲み上げたこちらのお湯の見た目は無色透明なんだそうですが、実際の浴槽では薄い鼈甲色を帯びた透明であるように見えます。湯口のお湯を口に含んでみますと、薄い塩味と重曹らしい清涼ほろ苦味、微鉱物油臭や微かな木タール臭が感じられ、ツルツルスベスベの滑らかな浴感が全身を包み込みます。重曹の滑らかさや爽快感とともに食塩泉の力強さが兼ね備わっているため、温浴効果が強く、いつまでも汗が引きません。
不特定多数のお客さんが利用するために全浴槽において塩素消毒が実施されていますが、内湯・露天ともに源泉かけ流し浴槽は文字通り加水・加温・循環・濾過が行われておらず、良好な状態の温泉を堪能できます。

埼玉県平野部といった利根川流域の氾濫原に点在する各温泉は古東京湾の影響を受けているため、化石海水型のしょっぱい温泉が多いのですが、この羽生では確かに塩分が含まれているものの決して塩辛くなく、むしろ滑らかな感触が肌に優しい重曹の個性がはっきり出ています。これは利根川の対岸にある熊谷の「花湯スパリゾート」も同様です。平野部の地下に存在する温泉だからみんな同じというわけではなく、地域によってちゃんと個性が分かれているんですね。だから温泉巡りはやめられません。


羽生温泉 華のゆ
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 43.8℃ pH8.0 460L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質1.404g/kg 成分総計1.412g/kg
Na+:389.0mg(94.68mval%),
Cl-:290.1mg(43.03mval%), I-:0.8mg, HCO3-:659.0mg(56.81mval%),
H2SiO3:38.0mg, CO2:7.3mg,
(平成29年10月26日)
加水・加温・循環なし(気温が低いときは加温)
消毒あり

埼玉県羽生市西3-19-3
048-560-4126
ホームページ

10:00~24:00(最終受付23:00)
平日850円、土日祝1100円(平日・土日祝とも21時以降は割引料金適用)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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利根川唯一の水上県道 赤岩渡船

2021年11月14日 | 群馬県
※今回の記事に温泉は登場しません。悪しからず。

前回まで青森県の温泉を取り上げた記事が連続しており、まだまだこれからも続く予定ですが、ここでちょっと青森県と温泉から離れて小休止をしましょう。

日本のみならず世界各地の温泉をメインにたくさん取り上げている拙ブログですが、今までの閲覧数を確認してみますと、なぜか温泉以外の記事も多く閲覧されていることに気づきます。代表例は海外におけるレンタカー利用体験を How to 形式にして書き綴ったものですが、日本国内の地域交通ネタもちらほら閲覧されており、例えば北九州の「若戸渡船」を取り上げた記事は、公開から数年経った今でもコンスタントに読まれているようです。渡し船というノスタルジー溢れる前時代的な交通機関には、単なる船舶以上の魅力を感じ、しかも全国的に数が激減しているため、拙ブログをご覧くださるような旅好きな方の琴線を揺さぶるのでしょう。

かく言う私も「渡し船」と聞くと強い旅情と歴史的な情緒を感じ、機会があれば乗船してみたいと思っております。坂東太郎の異名を持つ利根川にもかつては多くの渡船が運航されていましたが、次々に架橋されることによって廃止に追い込まれ、現在では3ヶ所しか残っていないそうです。その中でも今回は唯一県境をまたぎ、しかもその航路が県道(主要地方道)に指定されているという珍しい特徴を持った「赤岩渡船」に乗ってまいりました。


赤岩渡船は埼玉県熊谷市と群馬県千代田町を結ぶ渡船で、その歴史は戦国時代にまで遡れるんだとか。具体的な場所は上地図をご覧ください。公共交通機関で当地までアクセスする場合、埼玉県側ですと熊谷駅から「葛和田」行路線バスに乗って終点で下車します。一方、群馬県側は館林駅から路線バス「館林・千代田線」に乗り、やはり終点の「赤岩渡船」で下車します。地図で位置を確認しますと、ちょうど熊谷と館林を直線で結んだ中間地点に赤岩渡船が位置していますね。先程航路が県道(主要地方道)に指定されていると申しましたが、その県道の名前は「埼玉県道・群馬県道83号熊谷館林線」。まさに両都市を結んでいるのです。


よく晴れた2021年11月初旬。私は熊谷駅に降り立ち、北口ロータリーから「葛和田」行路線バスに乗りこみました。


路線バスは真っ平らな関東平野を北上し、最終的には利根川の土手を乗り越えて堤防内に乗り入れ、約30分強で終点の「葛和田」に到着しました。バスは河原に立つ小さなプレハブ小屋の前で停まります。


「赤岩渡船」とは群馬県側の呼称であり、埼玉県側では渡船場が位置する地名を取って「葛和田の渡し」と呼んでいるようです。路線バスは数分で折り返して堤防を乗り越え、熊谷駅へと戻っていきました。
それにしても広い河原だこと。小さな頃から今に至るまで、私の生活圏の最寄りにある大きな川といえば多摩川なのですが、こんなに広い河原はありません。さすが日本屈指の大河だけありますね。


さて「葛和田」バス停前に立つこの小さな無人プレハブ小屋は、渡船を待つために設置されたもので、小屋の中には・・・


渡船の利用方法が説明されています。
これによれば、運航時間は4月1日~9月30日が8:30~17:00、10月1日~3月31日が8:30~16:30となっているのですが、特筆すべきは運賃。なんと無料なのです。赤岩渡船は県道に指定されているわけですが、一般的に県道を歩いたり車に乗ったり、あるいは県道に指定されている橋を渡る場合は、当たり前ですが誰でも無料ですよね。これと同じ感覚で、水上県道であるこの渡船も無料なのでしょう。

でも船を運航する以上はどうしても経費がかかります。この経費は県道の管理者である群馬県が負担しており、その運営を千代田町に委託しているんだそうです。このため、船頭さんは群馬県側におり、埼玉県側は常に無人です。群馬県側から客(というか通行者)を乗せた船は、渡し終えるとすぐに群馬県側へ帰ってしまいます。埼玉県側で船は待機していません。
埼玉県側から船に乗る場合、どうしたら良いのか・・・


小屋の前に黄色い旗が下りていますが・・・


掲揚ロープを引っ張って、このように黄色い旗を揚げるのです。そして、この場から対岸をひたすら注視し続けます。対岸の船頭さんがこの黄色い旗に気づくと、おもむろに船に乗り込んでこちらへ出発してくれますので、それを確認できたら、次の人のために旗を降ろします。


私が揚げた旗に気づいてくれたようなので、旗をおろして船着き場へ向かいました。遠くに赤城山がそびえ、上空をグライダーが気持ち良さそうに飛んでいます。この葛和田の乗り場一帯はグライダーの滑空場になっており、かなりの頻度で飛んでいました。後述しますが、どうやらこのグライダーの存在が渡船の存続と関係しているようです。


さて、100メートルほど歩いて船着き場に到着です。


渡し船がやってきました。


下船する人を優先し、下船が終わったら乗り込みます。そしてケースに納められている救命胴衣を自分で取り出して身に着けます。なお船に屋根はありません。




さようなら、葛和田渡船場。


気持ち良い船旅です。


ちょっとわかりにくいのですが、船から見える川底が非常に浅く、頑張れば歩けそうなほどでした。この浅さで操舵するのは、結構大変なのではないでしょうか。


離岸から4~5分で、あっという間に群馬県側の赤岩へ到着しました。


私を対岸へ渡してくれた「新千代田丸」。川舟らしいコンパクトでかわいらしい船体ですね。
なおこの船には自転車や原付バイクも載せることができるそうです。


逆光になっちゃいましたが、上画像の左側に写っているのが船頭さんの待機小屋です。群馬県側から乗船する場合は、旗など上げず、この小屋で船頭さんへ声を掛けるだけでOKです。


赤岩の船着場から目の前の階段を上がってすぐのところに、館林駅行きのバス停があります。本来でしたら、ここから路線バスで館林へ抜けたいところですが、便数がとても少なく、しかも私が訪ねた休日は更に減るため、事前に乗り継ぎ時刻を調べておかないと待ち惚けを食らうことになります。私もこの時は行き当たりばったりで出かけたため、次のバスまで1時間以上待つ必要がありました。どうしよう・・・


埼玉県側は「葛和田渡船場」という標識がちょこんと立っているだけでしたが、群馬県側の赤岩には灯篭のような飾りが立っていたり・・・


昭和30~50年頃の商店街を示した地図が掲示されていました。江戸時代の赤岩には既に100軒の商店があり、その後鉄道の開通によって河岸としての機能が低下しますが、戦後再び盛り返して、昭和40年代後半には約130軒の商店が甍を競ったそうです。でも現在残っている商店はわずか10軒ほど。


赤岩は歴史ある河岸として、かつては大いに栄えていたのでしょうね。しかし今ではそんなことが全く感じられないほど、農家が静かに軒を連ねるごくごく普通の集落です。


県道83号を歩いて千代田町役場方面へ向かってみることに。先程も申し上げましたが、「赤岩渡船」はこの県道83号の水上部分に当たるわけです。



赤岩の集落や県道83号線の沿道には、新しい架橋を求める看板や幟が立っていました。ここから一番近い橋は、上流側だと6〜7km先に架かる刀水橋、下流側だと4〜5km先の武蔵大橋まで橋が無いのですから、地元の方々は渡船ではなく、車で自由に行き来できる橋を求めるのはとても自然なことだと思います。

でも、そもそも架橋するほどの需要があるのか、どの自治体も財政難の今にあって莫大な建設費を要する架橋が認められるのか、などなど架橋には多くの問題が立ちはだかっているのでしょう。そして、上述したようにグライダー滑空場の存在も大きいのだとか。というのも、滑空場を他に移設できる見込みが無い現状で赤岩に橋を架けると、代替措置が無いまま滑空場を単純に閉鎖することになるためです。このような状況のため、架橋される見込みは立っていないそうです。


そんなことをスマホで調べながら歩いているうちに、千代田町の役場までたどり着いてしまいました。役場近くまで来たら、別のバス路線があるのではないかと予測していたのですが、ここまで来ても鉄道駅まで行けるバス路線は渡船場と同じであり、結局1時間待たなければならないため、面倒くさくなった私はタクシーを呼んで館林駅まで向かったのでした。


せっかくここまで来たのですから、近くの温泉で体を温めていきたいもの。
そこで館林駅から東武電車に乗った私は、羽生駅で途中下車し、羽生温泉「華のゆ」で掛け流しの良質な温泉を楽しませていただきました。ここを利用するのは5度目かな。いずれ拙ブログで取り上げたいと思っています。

<<参考>>
「赤岩渡船」(千代田町公式サイト内)

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ポパイ温泉 家族風呂

2021年11月09日 | 青森県

青森県津軽の浪岡地区は、コーヒーのような色をしたモール泉が湧出するところとして一部の温泉マニアには夙に知られています。今回取り上げる「ポパイ温泉」もその一つ。以前拙者ブログでは当施設の大浴場をご紹介しましたが(以前の記事はこちら)、今回取り上げるのは家族風呂です。
国道7号の旧道に当たる県道285号線を走っていると、奇抜な濃いピンクの屋根が否応なく目に入ってくるかと思います。ちょうど温泉施設の目の前にこども園があるため、一見すると派手な建物はこども園の園舎なのかと勘違いしてしまいますが、こども園は決して奇抜な塗装ではなく、楳図かずおのまことちゃんハウスでもなければ、場末の連れ込み旅館でもありません。れっきとした温泉入浴施設なのであります。


公衆浴場の入口と家族風呂の入口は分かれており、家族風呂を利用する際には公衆浴場入口の右側にある勝手口のようなところから入ります。上画像に写っている玄関の様子を目にするだけでも「あれ、入って大丈夫?」と不安になりませんか。


玄関のみならずその先も、ご家族、特にお子さんのものと思しき小物が所狭しと置かれており、他所者が足を踏み入れて良いのか躊躇してしまうほど雑然としているのですが、ま、これも和やかなアットホーム感と申しましょうか。お子さんの微笑ましい成長の記録を目にしながら恒久的な世界平和を祈念しつつ、家族風呂専用の番台で利用したい旨を申し出ますと、お部屋の名前が書かれた札を手渡されました。


家族風呂は全6室。それぞれの部屋には、各地の有名温泉地の名前が付けられています。


今回私が指定されたお部屋は「別府温泉」。


ドアの奥の空間は、畳敷きの休憩スペースと浴室という2室構成です。


都心の廉価なビジネスホテルより広く、素泊まりできそうなこの畳部屋にはテレビが用意されており、湯上り後にのんびり過ごせそうな感じですが、でも1時間という制限があるため、入浴時間を考えますと、テレビを見ながら居眠りというわけにはいきません。なお室内にエアコンはありませんので、夏は結構暑いかも。


さて畳部屋で着替えたらお風呂へと向かいましょう。トイレも備え付けられていますよ。


お風呂はタイル張りで、2~3人同時利用でもストレスなく利用できるスペースが確保されています。入室時は湯船から立ち上る湯気が室内に籠ってムンムンしていたため、窓を開けて換気させていただきました。なお北国らしく窓は二重窓です。


カランから出てくるお湯は、ツルツルスベスベ感が強い源泉のお湯です。思う存分シャワーから温泉を浴びちゃいましょう。


湯船は2人が窮屈な思いをすることなく、ちゃんと入れる大きさを有しており、湯口から常時温泉が注がれています。私が湯船に入ると洗い場は軽く洪水状態になるほど大量にオーバーフローしたのですが、私が入る前から常時溢れ出ており、その贅沢な湯使いに感心してしまいます。


石によって少々飾られてる湯口から絶え間なく、しかも惜しげもなく注がれる琥珀色のお湯。このお湯は浪岡エリアでよく見られる典型的モール泉であり、浴槽のタイルがワイン色に染まっているので、余計にお湯の色合いが濃く見えました。お湯を口に含むと重曹泉らしい清涼感を伴う苦味が感じられるとともに、いわゆるモール臭も確認できましたが、匂いに関してはさほど強いものではなかったように記憶しています。。
湯船に浸かると全身が滑らかなツルツルスベスベ浴感に包まれ、たちどころに美人肌になったかのような錯覚に陥りました。成分表によれば炭酸イオンを70.6mgも含んでいるため、この影響によって滑らかな浴感がもたらされるのでしょう。

贅沢に掛け流されるモール泉を独り占めできるポパイ温泉の家族風呂。
モール泉などツルスベ浴感の強い温泉がお好きな方にはおすすめしたい施設です。


下十川温泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 51.2℃ pH8.8 湧出量測定不能(掘削動力揚湯) 溶存物質1.099g/kg 成分総計1.099g/kg
Na+:321.1mg(96.81mval%),
Cl-:245.7mg(51.87mval%), Br-:1.0mg, I-:0.3mg, HCO3-:213.8mg, CO3--:70.6mg
H2SiO3:210.6mg,
(2020年8月5日)
加水加温循環消毒なし

青森市浪岡大字下十川字扇田189-1
0172-62-7515

6:00~22:00
公衆浴場380円
家族風呂1200円/1時間

私の好み:★★★
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健康温泉桃太郎 家族風呂

2021年11月02日 | 青森県
(2020年11月訪問)

青森県津軽地方の弘前と黒石を結ぶ国道102号線沿道には、複数の温泉施設が営業していますが、その中でも今回は「健康温泉桃太郎」の家族風呂を訪ねます。以前、こちらの大浴場を利用したことがあったのですが、何故かあまり印象に残らなかったため、ブログの記事にするには至りませんでした。しかしそれから数年経ち、すっかり当時の記憶が消えてしまったため、今度は家族風呂を利用し、どんなお湯だったか思い出してみることにしたのです。
国道から路地に入り、おとぎ話の登場人物(動物)達が描かれた大きなゲートをくぐると・・・


広い駐車場と大きな建物がお出迎え。訪問した週末のお昼前には既に多くの車が止められていたので、もしかしたら家族風呂は満室なのではないかと不安を抱きつつ、受付へと向かいます。


受付で家族風呂を利用したいと申し出ると、担当のおばちゃんが笑顔で「大丈夫ですよ」と対応してくださいました。料金の支払いと引き換えに、個室の鍵、そして家族風呂を8回利用すると1回分無料で使える券を渡されます。
上画像は受付の前に広がる大広間の様子。家族風呂はこの右手です。


今回宛がわれた個室の名前は「祝」。実におめでたい!
さっそく鍵を開けて中に入りましょう。


脱衣室は広く、室内には洗面台やベンチ、扇風機など、入浴前後に使える設備・備品が揃っていて便利です。また脱衣室と浴室を隔てる壁には大きなガラス窓が設置されており、双方が見通せるので、明るい上に実面積以上の広さも感じることができるでしょう。


浴室も一般的な家族風呂に比べるとかなり広く、まさに夫婦と子供という構成の家族が一遍に入浴できるゆとりを有しています。こんな広いお風呂を一人で使ってしまう私。なんだか恐縮しちゃいます。


洗い場にはシャワーが2つ用意されていますから、複数人数で寒い日に利用した場合でも、シャワーの待ち時間が少なくて済みますね。なおシャンプー類の備え付けは無いので、予め持参しましょう。


洗い場の隣にあるイスが一脚置かれた謎のスペース。どうやら以前はスチームサウナだったようですが、今では使われておらず、単に奥へ引っ込んだイス置場と化しています。


タイル張りの浴槽は2人サイズ。半分は浅い造りになっているので、大人と子供が一緒に入ることを想定しているのかもしれません。


浴槽の浅い方と反対側にある石組の湯口には、温泉と冷水の蛇口があり、入室時には既にその蛇口から温泉が注がれて浴槽からザブザブとオーバーフローしていました。ただ、個人的にはややお湯が多くて熱かったため、湯船へ浸かる前に加水させてもらいました。
お湯は無色透明無味無臭の至って癖が無いタイプで、良く言えばあっさりしていて入りやすく、その逆の言い方をすれば掴みどころのない個性に乏しいお湯と表現したら皆様に伝わりますでしょうか。色がついていたり、しょっぱかったりするお湯が苦手な方には相応しい、サラスベ浴感の肌に優しいお湯です。癖が無いとはいえ、家庭のお風呂よりはるかにパワフルに温まるところは、さすが本物の温泉。しかも完全かけ流しですからお湯の鮮度も抜群です。

なお大浴場には人工炭酸泉だのブラックシリカだのといった、怪しい健康装置(なのかな?)がある上に、お湯も塩素消毒されていたかと思いますが(間違っていたらごめんなさい)、家族風呂にはそうしたものが一切ないので、余計な加工が気に入らない方がこちらのお風呂に入る場合は、断然家族風呂をおすすめします。


下樋田源泉
アルカリ性単純温泉 47.3℃ pH8.6 湧出量測定不可(掘削動力揚湯) 溶存物質0.523g/kg 成分総計0.523g/kg
Na+:121.1mg(92.95mval%),
Cl-:99.4mg(55.12m,val%), HCO3-:123.4mg(39.76mval%), CO3--:6.0mg,
H2SiO3:159.7mg,
(平成26年10月22日)
家族風呂は加水加温循環消毒なし

青森県弘前市大字新里字下樋田66-1
0172-28-3211
ホームページ

6:00~22:00
大浴場350円、家族風呂1000円

私の好み:★★+0.5
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