(2023年2月訪問)
まだまだ冷たい冬の北風がスギ花粉を伴って街を吹き抜け、私の鼻をムズムズさせることで、いよいよ春が近づいてきたことを感じさせた2023年2月の某日、大阪の福島駅前に屹立する「ホテル阪神大阪」で一晩を過ごしました。このホテルは「全客室のバスルームで自家源泉の温泉に入れるホテル」として温泉ファンには夙に有名ですから、いまさら拙ブログで取り上げることも無いような気がしますが、関西方面の記事がまだまだ弱いので、少しでも嵩増しを図るべく、その際の記録を今回記事に致します。お付き合いください。
当たり前ですが、まずはフロントでチェックイン。
アメニティ類はフロント前に用意されていますので、各自で必要なものを必要な分だけ手に取ってから客室へ向かうことになります。
こちらが私の泊まった客室。
独りで泊まるには十分な広さがあり、綺麗で且つ設備も整っていますので、とても快適に過ごせました。
時系列は前後しますが、上画像は客室からの眺望です。今回の客室は南に面していたため、「ほたるまち」など堂島川沿いに林立するビル群を一望できました。夜景も綺麗でしたよ。
さて、こちらが客室のバスルーム。
一見すると何の変哲もないごく普通のユニットバスなのですが・・・
バスタブの上に、普通のホテルでは見かけないコックと案内表示が取り付けられていますね。説明は不要かと思いますが、このコックは、ユニットバスのシャワーやカランから出るお湯を、一般的な水道の沸かし湯もしくは自家源泉の温泉に切り替えるものです。コックにぶら下げられているものは・・・
温泉の成分分析表ですね。やっぱり分析表が無いと本物の温泉っぽくないですよね。
これによれば、源泉名は「徳次郎の湯」で、泉質は単純温泉とのこと。各イオンの細かな数値もちゃんと表示されています。
それでは、コックを「温泉給湯」へ回して、バスタブに温泉を溜めましょう。
分析表に記載された源泉の湧出温度は34.4℃ですが、ホテルのような設備ではレジオネラ属菌の発生抑制などを目的として50~60℃近くまで加温しており、こちらのホテルも同様ですから、そのまま浴槽にお湯を張ったところですぐには入浴できません。かといって、水で薄めてしまうのはもったいない。熱いお湯のままバスタブに溜め、そのままお湯が適温まで冷めるのをひたすら待ちましょう。なおお湯が熱いので時間をかけて冷ました方が良いことは、フロントでもチェックインの際に教えて下さいます。
湯船にお湯が溜まり、丁度良い湯加減まで落ち着いたので、いざ入浴です。
お湯は麦茶を薄めたような色をしており、透明度は比較的高く、お湯からは僅かながらモール泉を思わせる香りが漂ってきます。お湯を口に含んでミスと薄くほろ苦さを感じ、同時に金気のような味覚も得られるのですが、金気に関しては源泉由来なのか設備由来(配管などの影響)なのかよくわかりません。なお分析表によれば総硫黄が1.8mgも含まれており、その数値の通りならばハッキリとした硫黄感が得られても不思議ではないのですが、カランから出てくるお湯に硫黄感を感じることはできませんでした。熱々に加温された上に給湯系統内でグルグル回っているため、その過程で硫黄感がすっかり抜けてしまうのでしょう。
この「徳次郎の湯」はこのホテルの自家源泉。地下から汲み上げて貯湯槽にストックし、熱々に加温した状態で給湯系統内を循環させていますが、客室のコックを開けて以降のお湯は使い捨てとなるため、実質的にかけ流しの湯使いです。
コックにぶら下がっている分析表によれば泉質は単純泉であり、溶存物質の量も484mg/kg程度なので、比較的成分が薄めの温泉と言えそうですが、その中でも炭酸水素ナトリウムが主成分となっており、また多くの河川が集まる大阪湾岸の河口域でもあるため、阪神間に多く見られるモール泉的な重曹泉に近い特徴を有しているものと思われます。とはいえ、いわゆるモール泉らしい芳醇な香りがはっきり感じられるわけでも、ツルスベの滑らかな浴感が強いわけでもなく、どの知覚的特徴も控えめであるため、温泉としての有難みを感じない人にとっては、ただの濁ったお湯に過ぎないかもしれません。一方で、私のような温泉ファンにとって、大阪のど真ん中で誰にも邪魔されずにかけ流しの温泉に入れるのはこの上なく幸せな環境です。私は1泊の中で、夜2回、朝1回、計3回お湯を張り替えながら、徳次郎の湯を存分に堪能させていただきました。
なおホテルの7階には「阪神サウナ」があり、宿泊客は別料金ながら割安の800円で利用できます。しかも手ぶらで大丈夫。フロントでロッカーキーを渡されますので、それを手にしてロッカールームに向かうと、ロッカー内には館内着と大小タオルが用意されているわけです。
内部はとても綺麗ですが、都市部のど真ん中ゆえかさほど広くはありません。サウナは1室のみで、お風呂も5〜6人サイズの主浴槽、ジャグジー、思いっきり塀で囲われた3人サイズの露天風呂、そして水風呂という構成です。洗い場のシャワーも9箇所ほどだったかと思います。主浴槽には客室と同じく「徳次郎の湯」が張られているのですが、こちらは加温加水循環ろ過消毒という湯使いであるため、客室のお風呂で得られた源泉の面影はほとんどありません。温泉目当てではなく、駅前の好立地でゆったりと寛げるサウナ兼お風呂という観点で利用なさると宜しいかと思います。この施設については公式サイトにて画像など詳しく紹介されていますので、そちらをご覧ください。
「阪神サウナ」内には「徳次郎の湯」という源泉名の由来について説明するプレートが掲示されていました。曰く、この地にはかつて徳次郎という者がおり、菅原道真公が大宰府に流される途中でこの地に立ち寄った際、徳次郎に厚くもてなされたため、そのお礼に菅原道真がこの地を「福島」と名付けたんだとか。その徳次郎とそのおもてなしの心にあやかって「徳次郎の湯」と名付けたそうです。ホテルに相応しいネーミングですね。
温泉とは関係ありませんが、こちらはホテルの朝食。洋定食と和定食から選択するスタイルだったので、私は洋食をチョイス。とても美味しく、ペロッと平らげちゃいました。温泉も良いですが朝食もおすすめです。
徳次郎の湯
単純温泉 34.4℃ pH表記無し 溶存物質484mg/kg 成分総計489mg/kg
Na+:105.4mg(91.77mval%),
HCO3-:305.1mg(95.84mval%), HS-:1.6mg,
H2SiO3:56.8mg, H2S:0.2mg,
(2019年4月17日)
大阪府大阪市福島区福島5-6-16
06-6344-1661
ホームページ
私の好み:★★+0.5
まだまだ冷たい冬の北風がスギ花粉を伴って街を吹き抜け、私の鼻をムズムズさせることで、いよいよ春が近づいてきたことを感じさせた2023年2月の某日、大阪の福島駅前に屹立する「ホテル阪神大阪」で一晩を過ごしました。このホテルは「全客室のバスルームで自家源泉の温泉に入れるホテル」として温泉ファンには夙に有名ですから、いまさら拙ブログで取り上げることも無いような気がしますが、関西方面の記事がまだまだ弱いので、少しでも嵩増しを図るべく、その際の記録を今回記事に致します。お付き合いください。
当たり前ですが、まずはフロントでチェックイン。
アメニティ類はフロント前に用意されていますので、各自で必要なものを必要な分だけ手に取ってから客室へ向かうことになります。
こちらが私の泊まった客室。
独りで泊まるには十分な広さがあり、綺麗で且つ設備も整っていますので、とても快適に過ごせました。
時系列は前後しますが、上画像は客室からの眺望です。今回の客室は南に面していたため、「ほたるまち」など堂島川沿いに林立するビル群を一望できました。夜景も綺麗でしたよ。
さて、こちらが客室のバスルーム。
一見すると何の変哲もないごく普通のユニットバスなのですが・・・
バスタブの上に、普通のホテルでは見かけないコックと案内表示が取り付けられていますね。説明は不要かと思いますが、このコックは、ユニットバスのシャワーやカランから出るお湯を、一般的な水道の沸かし湯もしくは自家源泉の温泉に切り替えるものです。コックにぶら下げられているものは・・・
温泉の成分分析表ですね。やっぱり分析表が無いと本物の温泉っぽくないですよね。
これによれば、源泉名は「徳次郎の湯」で、泉質は単純温泉とのこと。各イオンの細かな数値もちゃんと表示されています。
それでは、コックを「温泉給湯」へ回して、バスタブに温泉を溜めましょう。
分析表に記載された源泉の湧出温度は34.4℃ですが、ホテルのような設備ではレジオネラ属菌の発生抑制などを目的として50~60℃近くまで加温しており、こちらのホテルも同様ですから、そのまま浴槽にお湯を張ったところですぐには入浴できません。かといって、水で薄めてしまうのはもったいない。熱いお湯のままバスタブに溜め、そのままお湯が適温まで冷めるのをひたすら待ちましょう。なおお湯が熱いので時間をかけて冷ました方が良いことは、フロントでもチェックインの際に教えて下さいます。
湯船にお湯が溜まり、丁度良い湯加減まで落ち着いたので、いざ入浴です。
お湯は麦茶を薄めたような色をしており、透明度は比較的高く、お湯からは僅かながらモール泉を思わせる香りが漂ってきます。お湯を口に含んでミスと薄くほろ苦さを感じ、同時に金気のような味覚も得られるのですが、金気に関しては源泉由来なのか設備由来(配管などの影響)なのかよくわかりません。なお分析表によれば総硫黄が1.8mgも含まれており、その数値の通りならばハッキリとした硫黄感が得られても不思議ではないのですが、カランから出てくるお湯に硫黄感を感じることはできませんでした。熱々に加温された上に給湯系統内でグルグル回っているため、その過程で硫黄感がすっかり抜けてしまうのでしょう。
この「徳次郎の湯」はこのホテルの自家源泉。地下から汲み上げて貯湯槽にストックし、熱々に加温した状態で給湯系統内を循環させていますが、客室のコックを開けて以降のお湯は使い捨てとなるため、実質的にかけ流しの湯使いです。
コックにぶら下がっている分析表によれば泉質は単純泉であり、溶存物質の量も484mg/kg程度なので、比較的成分が薄めの温泉と言えそうですが、その中でも炭酸水素ナトリウムが主成分となっており、また多くの河川が集まる大阪湾岸の河口域でもあるため、阪神間に多く見られるモール泉的な重曹泉に近い特徴を有しているものと思われます。とはいえ、いわゆるモール泉らしい芳醇な香りがはっきり感じられるわけでも、ツルスベの滑らかな浴感が強いわけでもなく、どの知覚的特徴も控えめであるため、温泉としての有難みを感じない人にとっては、ただの濁ったお湯に過ぎないかもしれません。一方で、私のような温泉ファンにとって、大阪のど真ん中で誰にも邪魔されずにかけ流しの温泉に入れるのはこの上なく幸せな環境です。私は1泊の中で、夜2回、朝1回、計3回お湯を張り替えながら、徳次郎の湯を存分に堪能させていただきました。
なおホテルの7階には「阪神サウナ」があり、宿泊客は別料金ながら割安の800円で利用できます。しかも手ぶらで大丈夫。フロントでロッカーキーを渡されますので、それを手にしてロッカールームに向かうと、ロッカー内には館内着と大小タオルが用意されているわけです。
内部はとても綺麗ですが、都市部のど真ん中ゆえかさほど広くはありません。サウナは1室のみで、お風呂も5〜6人サイズの主浴槽、ジャグジー、思いっきり塀で囲われた3人サイズの露天風呂、そして水風呂という構成です。洗い場のシャワーも9箇所ほどだったかと思います。主浴槽には客室と同じく「徳次郎の湯」が張られているのですが、こちらは加温加水循環ろ過消毒という湯使いであるため、客室のお風呂で得られた源泉の面影はほとんどありません。温泉目当てではなく、駅前の好立地でゆったりと寛げるサウナ兼お風呂という観点で利用なさると宜しいかと思います。この施設については公式サイトにて画像など詳しく紹介されていますので、そちらをご覧ください。
「阪神サウナ」内には「徳次郎の湯」という源泉名の由来について説明するプレートが掲示されていました。曰く、この地にはかつて徳次郎という者がおり、菅原道真公が大宰府に流される途中でこの地に立ち寄った際、徳次郎に厚くもてなされたため、そのお礼に菅原道真がこの地を「福島」と名付けたんだとか。その徳次郎とそのおもてなしの心にあやかって「徳次郎の湯」と名付けたそうです。ホテルに相応しいネーミングですね。
温泉とは関係ありませんが、こちらはホテルの朝食。洋定食と和定食から選択するスタイルだったので、私は洋食をチョイス。とても美味しく、ペロッと平らげちゃいました。温泉も良いですが朝食もおすすめです。
徳次郎の湯
単純温泉 34.4℃ pH表記無し 溶存物質484mg/kg 成分総計489mg/kg
Na+:105.4mg(91.77mval%),
HCO3-:305.1mg(95.84mval%), HS-:1.6mg,
H2SiO3:56.8mg, H2S:0.2mg,
(2019年4月17日)
大阪府大阪市福島区福島5-6-16
06-6344-1661
ホームページ
私の好み:★★+0.5