温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

屏風山温泉 2022年5月宿泊

2022年12月27日 | 青森県

(2022年5月訪問)
2022年最後の温泉レポートは、私にとって第二の故郷である青森県津軽地方の温泉を取り上げることにします。
2022年5月に私は青森県つがる市の屛風山温泉で一泊お世話になりました。この温泉は拙ブログでも以前に取り上げており(初回記事はこちら、2回目の記事はこちら)、大好きな温泉なのでこれまで何度か公衆浴場を利用しておりますが、今回は宿泊して家族風呂を利用しました。青森県の温泉施設でよく見られる営業形態ですが、公衆浴場に付帯している家族風呂でリーズナブルに宿泊することができるのです。


温泉の目の前に広がるだだっ広い田んぼの向こうには、津軽富士(岩木山)が綺麗に聳えています。市町村合併により現在この地域はつがる市となっていますが、以前は西津軽郡木造(きづくり)町でした。太宰治は『津軽』でこの木造から見た岩木山について「津軽平野の金木、五所川原、木造あたりから眺めた岩木山の端正で華奢な姿も忘れられなかつた」「華奢で頗る美人である」と述べており、書かれてから80年近く経った今日でもその美しさに変わりはありません。


チェックインは公衆浴場の番台で行い、ひと通り説明を受けた後、お部屋へ向かいます。
公衆浴場部からお部屋がある家族風呂棟へ向かう途中の廊下には、このようにドリンクサービスや電子レンジがあったり・・・


浴衣をチョイスできる棚があったりします。基本的には素泊まり且つセルフサービスのお宿ですので、欲しいものは各自で取りに行くか、あるいは予め用意しておきましょう。


妙に天井が高い家族風呂棟の廊下。
各個室にはプラム・トマト・リンゴなど農産物の名前が付けられています。今回私が泊まったお部屋は「さくらんぼ」でした。


お部屋には既に布団が敷かれていました。家族風呂利用の場合には当然布団は無いかと思いますが、宿泊利用時にはお布団が用意されるわけです。お部屋は8畳ほどあって、エアコンやWifiが完備されています。また広縁には選択ハンガーがさがっているので、衣類を洗濯して干すことも可能です。


室内には洗面台やトイレがあるほか、冷蔵庫も設けられていますから、事前に付近のコンビニやスーパーでお弁当等を買っておき、冷蔵庫に保管して、翌朝電子レンジで温めて朝ごはんにしても良いですね。


歯ブラシやスリッパなどは、出入口のドアの内側にまとめられていました。


さて、お部屋に付帯しているお風呂に入りましょう。
ドアを開けた途端、屛風山温泉ならではのアブラ臭がブワッと香り、お風呂どころか客室中に充満したのでした。アブラ臭中毒者の私にとっては天国のような状態。まるでどこかで油が漏れているのではないかと勘違いしてしまうほどアブラ臭が強く放たれており、私は中毒患者のようにクンクンと鼻を鳴らしながらひたすらこの匂いを嗅ぎ続けて興奮状態になってしまったのでした。


入室時には既にお湯がザバザバ溢れていたので、そのオーバーフローによって匂いが小さな室内に充満していたのでしょう。公衆浴場のお湯もしっかりと香りますが、こちらの風呂はその比ではありません。私のようなアブラ臭マニアには天国のような環境ですが、鉱物油の匂いが苦手な方は、匂いの強さで頭痛など引き起こしてしまうかもしれませんので、入浴前に換気をおすすめします。


なおシャワーのお湯も温泉です。しょっぱくてアブラ臭が漂うお湯を頭から浴びることができるんですから、マニア的にはこの上ない多幸感を享受できます。


お湯はやや濃いめ食塩泉で、淡い琥珀色を呈しており、味わってみるとしょっぱさと出汁味が一体となって口の中に広がります。湯中ではつるつるすべすべの滑らかな浴感が大変気持ち良く、あまりの滑らかさに興奮して自分の肌を何度もさすってしまいました。そしてこの小さなお風呂で特徴的なのが、上述しているような強烈なアブラ臭です。こんな個性的なお湯をひたすら独占できるのですから、マニア的にはこの上ない天国のような環境です。
なお、22:00から翌朝5:00までは、温泉配管を清掃するため、お部屋の温泉が止まります(シャワーを含む)。このため、夜中にお風呂へ入りたい方は、22:00までにお湯を湯船へ貯めておく必要があります。


翌朝は公衆浴場の一番風呂に入ってみました。宿泊客は滞在中に公衆浴場を何度も利用できます(22:00~5:00以外)。誰も入ってこないお部屋のお風呂で濃厚な湯の香に包まれるのも良いのですが、誰もいない早朝の大きなお風呂で体を思いっきり伸ばしてかけ流しの温泉に入る醍醐味も捨てがたいですね。宿泊したからこそできるこの貴重な体験。朝からめちゃくちゃ幸せです。


湯口から湯の香を放ちつつしっかり温泉が投入されていました。
このお湯は今日も地元の多くのお客さんを癒してくれることでしょう。

あくまで個人的な経験則に基づいてお話しますが、五所川原を中心とする津軽西北五地域は、観光の繁忙期になるとホテルのネット予約が難しくなる傾向にあるようです。宿泊施設の数はそこそこあるので、おそらくネット予約に対応している施設が少ないのでしょう。逆に考えれば、ネット予約できない宿は、繁忙期であっても意外と空いている、と言えます。屛風山温泉もその一つですので、温泉のアブラ臭が大好きなマニアの方がもちろん、もしこのエリアで宿探しに困った場合は電話で問い合わせてみてはいかがでしょうか。


ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 温度・pH・溶存物質・成分総計記載なし
Na+:2703mg(94.16mval%),
Cl-:3381mg(75.66mval%), Br-:8.2mg, I-:1.5mg, HCO3-:1739mg(22.61mval%), CO3--:60.0mg,
(平成元年10月18日)

青森県つがる市木造浦船58-2 
0173-42-1697

公衆浴場8:00~21:00 第四月曜定休
390円
ドライヤー10円/3分、ロッカー100円有料、その他販売
家族風呂1000円/1時間、宿泊税込4,400円(素泊まり)

私の好み:★★★

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さて、ブログ「温泉逍遥」の2022年の記事は今回までとさせていただきます。
本年もお付き合いくださり誠にありがとうございました。
今年は昨年よりも行動できるようになったものの、日々の仕事が忙しくて時間が確保できず、またコロナ禍の影響で何事も億劫に思うようになり、温泉巡りを含む外出に対してあまり積極的になれないまま、不完全燃焼な感じでとうとう年末を迎えてしまいました。
年明けは3年ぶりにパスポートを使った弾丸旅行に出かけてまいりますが、その後のお出かけはどうなることやら・・・。
コロナ禍をきっかけに始めたインスタグラムも最近はちっとも捗らず、一か月近く放置したままになっていますが、こちらも何とか再び投稿しなければ・・・。
何事も不透明なことが多いのですが、悲観したって仕方がない、ケセラセラで新年を迎えます。
皆様もよいお年をお迎えください。
来年も引き続きよろしくお願い申し上げます。

K-I
.
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古奈(伊豆長岡)温泉 コナステイ伊豆長岡 後編(お風呂)

2022年12月21日 | 静岡県
前回記事の続編です。

さて温泉のお風呂に入って旅の疲れを癒しましょう。
お宿のお風呂には大浴場と小浴場の2種類があって、いずれも1階に位置しており、男女で使い分け、日付が変わると暖簾を替えています。私がチェックインした日は小浴場が男湯となっていましたので、まずが小浴場からご紹介します。
(なお大観荘時代には露天風呂もありましたが、現在は使われていないようです)

●小浴場

2階へ上がる階段の袂に暖簾が掛かっています。このお風呂の出入口は存在感が控えめなので、うっかりすると見落とすかもしれません。なお訪問時はコロナ感染対策のため、入口に利用人数をカウントする札があり、入室時に客が自分で札を1枚めくることにより(退室時には1枚戻す)、室内に何人の利用客がいるのか、混雑の目安がわかるようになっていました。でもお風呂上がりで浴場を出る時は、気持ちがすっかり緩んで注意力が散漫になっていますから、ついつい札を戻し忘れてしまい、階段を上りかけたところで「あっ」と気づいて札の数を1つ減らしました。私はまだ途中で気づいたから良かったものの、気づかないままお部屋へ帰っちゃうお客さんもいるんでしょうね。

小浴場というだけあって、脱衣室は決して広くないものの、綺麗に整備されており、混雑さえしていなければ気持ち良く使えます。


「小」とはいうものの、浴室内はまずまずの広さが確保されていて且つ明るく、のびのびとした環境で湯浴みできます。また床などに伊豆青石を多用しており、見た目の美しさのみならず触れた時の感触も優しく、非日常の感覚を享受することができました。


壁に沿ってL字状にシャワー付きカランが7台ならんでいます。洗い場に備え付けのアメニティは質が良そうなものだったので、貧乏性な私はここぞとばかりにたっぷり使ってささやかなセレブ気分を楽しませてもらいました。


浴槽は台形で、その寸法は(目測で)上底1.5m、下底3m、高さ3mといったところでしょうか。算数が得意な小学生ならこの数値を見てすぐに面積を算出しちゃうかな。お風呂の造り自体は少々古いのか、最近多い浅めの浴槽ではなく、私好みの肩までしっかり浸かれる少々深めの入りごたえがある浴槽です。


温泉は壁の上から落とされており、加水した上で掛け流されています。
湯口における湯温は約55℃で、それをちょろちょろ落とすことにより、あまり加水することなく湯加減を調整しているのでしょうね。お湯は浴槽の縁からしっかりオーバーフローしていました。実に気持ち良いお風呂です。

●大浴場

暖簾替え後の翌朝は大浴場へ。
「大」と名乗るだけあって脱衣室が広く(奥に長く)、立派な旅館だった昔日の面影をリニューアル後の今に伝えているようでした。


浴室も脱衣室と同じように奥行が長く、手前側の左右に洗い場が配置され、最奥の窓下に浴槽が設けられています。洗い場に設けられているシャワーは8ヶ所です。なお窓の外には竹が植わっていますが、その向こうは壁なので、景色を楽しむような環境ではないようです。


木材の縁で囲まれた浴槽は(目測で)約2.5m四方。浴槽内部にはツルツルした黒い御影石が採用されており、見た目は美しいのですが、結構滑りやすいので注意を要するでしょう。実際に注意力散漫な私はバランスを崩して滑りそうになってしまいました。


湯口から注がれるお湯は上述の小浴槽と同じお湯で、湯船は心地よい湯加減(41℃くらい)に調整されていました。こちらのお風呂でも湯使いはかけ流しで、浴槽のお湯は縁からしっかりオーバーフローしています。

古奈エリアを含む伊豆長岡温泉では以前から組合による集中管理によって温泉を各施設へ供給しており、こちらの施設でも組合管理のお湯の供給を受けています。湯口から落とされるお湯は無色透明無味無臭で、少々のツルツル感を有し、湯中では肌に優しくしっとり馴染んで心地良いフィーリングを得られます。また湯上がりにはサラサラとしたさっぱり感ももたらしてくれます。とはいえ、分析表によれば炭酸イオンが18.0mgも含まれているはずですが、この数値ほどツルツル感は実感できませんでした。これは伊豆長岡温泉の他の施設で入浴しても同様なので、集中管理の過程で炭酸イオンの持ち味が失われてしまうのかもしれません。でもかけ流しのお湯はさすがに気持ちよく、宿泊中は全身がふやけるほど何度も入ってお湯を楽しませていただきました。


第一貯湯槽
アルカリ性単純温泉 59.6℃ pH9.1 溶存物質0.615g/kg 成分総計0.615g/kg
Na+:162.1mg(88.24mval%), Ca++:17.6mg,
Cl-:120.8mg(40.89mval%), SO4--:193.0mg(48.20mval%), HCO3-:18.6mg, CO3--:18.0mg, OH-:0.2mg,
H2SiO3:76.8mg,
(平成26年12月2日)

静岡県伊豆の国市古奈307
055-948-0055
ホームページ

日帰り入浴12:00~17:00
1000円(フェイスタオル付)

私の好み:★★★
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古奈(伊豆長岡)温泉 コナステイ伊豆長岡 前編(客室他)

2022年12月14日 | 静岡県

(2022年3月訪問)
伊豆は東京に比べると春が一足早くやって来るので、春が待ち遠しくなった2022年3月某日に伊豆半島へ出かけ、伊豆長岡温泉のお宿「コナステイ伊豆長岡」で一晩お世話になりました。

伊豆長岡と表現すると地理的な文言に厳しい方から怒られてしまうかもしれません。伊豆長岡温泉の定義には広義と狭義があり、源氏山という山を挟んだ西側の「長岡地区」と東側の「古奈地区」を2地区を合わせて表現する場合は広義、それぞれを分けて西側のみをさす場合は狭義ということになります。もっとも現在ではあまり両者を分けることはなく一括りにまとめて伊豆長岡温泉と称するのが一般的かと思いますが、敢えて狭義で表現しますと、今回取り上げる「コナステイ伊豆長岡」は古奈地区の古奈温泉に所在していることになります。

古奈交差点の角という好立地にあるこちらのお宿は旧「大観荘」をリノベーションしたもので、外観こそ日本旅館らしさを保っていますが・・・


エントランスホールは日本旅館だったと思えないほどスタイリッシュなホテルとして、すっかり様相を変えており、外観とのあまりの相違に私はちょっとびっくりしてしまいました。リニューアルオープンに際してこちらのお宿では自転車に特化したコンセプトを打ち出しており、サイクリストに優しい設備やサービスが充実しています。


館内には値が張るような自転車がたくさん。
宿泊客は自転車を安くレンタルでき、宿が主催する自転車のツアーも実施しています。また自転車ツーリングで旅しながらこの宿を利用するサイクリストのため、整備や保管などの各種設備も用意されています。
もっとも、私はこちらのお宿を自分の車で訪問しており、今回の利用では全く自転車に関与しなかったのですが、当然ながら私のように自転車と微塵も関係しないお客さんでも利用可能です。


スナック菓子やドリンクの他、オリジナルグッズやご当地の物産品は館内の自販機で販売されていました。合理的です。


フロント前にはラウンジがあり、宿泊客なら自由に飲めるフリーのソフトドリンクバーが用意されています。私も宿泊中に何度か利用させていただきました。


中庭では「焚き火バー」と称するファイヤーピットがあって、夜になると炎を眺めながらお酒とおつまみを楽しむことができるようですが、あいにく私の訪問日は雨が降っていたために中止になってしまい、屋内でバーサービスが提供されていました。


今回はこのバー利用券がセットになったプランを予約したため、バーテンさんへ利用券を差し出してカクテルを作ってもらいました。とても良い雰囲気です。


客室はドミトリーと一般客室があり、廊下の一部には部屋の前まで自転車を持って来られるようにスタンドが設置されていました。高価な自転車は盗難や悪戯などの心配がありますから、できるだけ自分の傍に置いておきたいという心理に配慮しているんだろうと思います。


一角にはこのようなトレーニングマシンも設置。
伊豆には有名なサイクルスポーツセンターがありますし、実際にツーリングしているサイクリストをよく見かけますから、自転車愛好家の方々にとってはフレンドリーなエリアなのかもしれませんね。


ドミトリーエリアを抜けると、旧「大観荘」時代を思わせる日本旅館的な造りと、現代的な内装意匠が折衷された、一般客室が並ぶゾーンへと入ってまいりました。


今回私が利用した客室は、和室にベッドを入れた和洋折衷なお部屋です。照明は日本旅館にありがちな直接的なものではなく、ダウンライトや間接照明に変更されており、隅々まで綺麗で、wifiもしっかり飛んでいましたから、大変快適に過ごせました。また客室ドアのカギは暗証番号式となっているため、わざわざ持ち歩く必要がないばかりか、例えば夫婦やカップルで館内のお風呂を利用した場合、鍵が一つしかないと、お風呂から上がってお部屋へ戻る際にどちらが鍵を持つべきかで面倒になりますが、暗証番号式ならばその心配がないため、心置きなく長湯することもできますね。


お部屋には大きなシャワーブースが付いており、またこのシャワーブースを含む水回り関係の内装はグレーに統一されていて、あたかも海外のホテルを利用しているかのよう。以前日本旅館だったとは信じられません。


今回予約したプランでは上述のバー利用券の他、プリンのサービスもついており、お部屋の冷蔵庫を開けると、中には「修善寺プリン」が入っていました。お風呂上がりに美味しくいただきましたよ。


ベーシックな宿泊プランでは、素泊まりかもしくは朝食付きとなっており、夕食はオプションで付けられるようです。今回私は朝食付きプランを利用し、夕食は伊豆長岡の温泉街へ繰り出して美味しいお寿司をいただきました。
朝食は上画像の会場でいただきます。いわゆるバッフェスタイルで、お宿ご自慢のクラムチャウダーなどのスープ類、クロワッサンなどのパン類、サラダなどが並んでいました。特にクラムチャウダーが美味しく、おかわりしてしまいました。

さて次回記事では温泉のお風呂を取り上げます。

次回記事につづく
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川治温泉 リブマックスリゾート川治

2022年12月08日 | 栃木県

(2022年1月訪問)
前回記事の中塩原温泉から再び路線バス「ゆ~バス」に乗車し、塩原温泉郷を抜けて野岩鉄道の上三依塩原温泉口駅まで来ました。山を越えて西へ進むと積雪量が一気に増えて、まさに一面銀世界、雪国の景色そのものです。所在地としては栃木県ですが、ちょっと北へ行けばすぐ福島県会津地方ですから、土地の雰囲気としては下野というより会津に近いものがあるように思います。


ざて、上三依塩原温泉口駅から野岩鉄道の上り電車に乗車。やってきたこの電車は特急「リバティ」浅草行ですが、野岩鉄道線内は各駅に停車し、乗車券のみ(特急券不要)で利用可能でなんですね。


20分弱の乗車を経て川治湯元駅で下車し、川治温泉で日帰り入浴を試みます。
どこのお風呂に入ろうかしら、と足取り軽く温泉街へ向かったのですが、コロナ禍の影響により市営「薬師の湯」は残念ながら休業中。温泉街の旅館数軒を訪ねたのですが、やはり日帰り入浴を断られてしまい、万事休すかと諦めかけていたとき、受け入れてくれたのが・・・


「リブマックスリゾート川治」でした。
看板に躍る「源泉かけ流し」の文字が頼もしいですね。


駐車場の片隅には足湯が設けられていましたが、訪問時は閉鎖中でした。
おそらく閉鎖は冬期のみではないでしょうか。


フロントで日帰り入浴をお願いしますと、快く入れ入れてくださいました。
以前こちらの宿は「蘭綾(らんりょう)」という名称の旅館でしたが、2017年5月に閉館。それをリブマックスが買い取ってリノベーションし、同年6月に再オープンしました。現在の運営となってからはまだ5年程度ですが、建物自体は相当の年月が経過しており、再オープンに際しては館内の随所に対し濃い色を多用して改装したようです。なおフロントは2階にあり、浴場は1階とB1階に分かれていて、時間帯により男女の暖簾を掛け替えています。
上画像はフロント斜め前にあるラウンジです。


私が訪問した時、1階浴場は夜まで男湯で、翌朝は女湯という設定でした。無論もう一方のB1階浴場はその逆になります。当然ながら私は1階のお風呂を利用することになります。廊下を進んだ突き当たりに暖簾が掛かっていました。


暖簾の先にある脱衣室には俳優渡辺文雄氏直筆の額が掲示されていました。平成生まれの方にはピンとこないかと思いますが、渡辺文雄氏といえば若い頃は東映の映画でよくインテリヤクザを演じた名俳優であり、その後は『くいしん坊!万才』の初代MCとなり、日テレ系の『遠くへ行きたい』では日本全国を旅して廻った有名人ですね。私は個人的に「いつも津々浦々を旅しているメガネをかけたインテリおじさん」というイメージがあり、永六輔氏や美坂哲男氏とともに、子供の頃の私にとって憧れの人でした(なんて年寄り臭いガキなんでしょう…)。渡辺文雄氏は2004年に亡くなっており、一方でリブマックスが当地へ進出したのは2017年ですから、当然この額は「蘭陵」時代のものでしょうね。

なおこの額が掲示されている脱衣室は広くて明るく、パウダールームもしっかりあって使い勝手は良好です。なお温泉街を見下ろすガラス窓の向こうには後述する露天風呂が丸見えです。国内のエロいホテルや海外のホテルで、たまにベッドルームからシャワールームが丸見えになっている造りの部屋に遭遇しますが、着替えや入浴というちょっとした羞恥心を伴う行為が行われる場所を敢えて可視化する意図って一体何なのでしょうか。


内湯も広々としており、天井が高くて明るい構造です。全体的に白色基調であるため、余計に広さと明るさが際立って感じられます。なお床は全て白い大理石という豪華な造り。旧「蘭綾」はお金をかけて建設されたんですね。この明るい浴場の左右両再度(壁側)に洗い場が配置され、計11個のシャワー付きカランが並んでいます。また手前側にはサウナと水風呂も設けられています。
主浴槽はかなり大きく、目測でおおよそ3mx6mはあるでしょうか。浴槽にも大理石のような建材が用いられていますが、本物かイミテーションかは不明。これに関連するかと思いますが、浴槽の隅には白い粉がたくさん沈殿していました。おそらく湯の花ではなく浴槽に用いられている材質が剥がれ落ちたのではないかと想像されます。 


主浴槽の右側にも浴槽が広がっていますが、こちらはやや浅い造りです。その中央にはトラバーチンで出来たような湯口ような構造物が立っており、湯船よりやや熱いお湯が下から噴き上がっているが、でもこのお湯が浴槽に注がれているような感じはなく、これは一体何なのか、よくわかりません。温泉のモニュメントかしら。なお浴槽のお湯は浴槽内側面に複数ある金属製湯口より投入されていました。投入量はかなり多く、浴槽の縁からしっかり溢れ出ていました。


脱衣室からガラス窓越しに丸見えの露天風呂。
浴槽の形状はオーバルで、槽内はベージュの石板タイル張りです。湯口から落とされたお湯は、楕円の浴槽を満たした後、丸いタイルの縁の隙間からオーバーフローしています。


1階とはいえ、建物自体が小高い場所に建てられているため、露天風呂からは温泉街を見下ろすような感じで一望することができ、温泉街のみならず周囲の山々を含めて川治の景色を楽しみながら湯あみを堪能しました。

さて、肝心のお湯についてですが、無色透明無味無臭で癖など全くないサラサラ且つあっさりとした優しいお湯です。館内表示によれば湧出温度40.5℃なので入浴に適した温度へ加温されていますが、それ以外の加水や循環などは行われておらず、かけ流しの湯使いを実践しているとのこと。ただ、内湯はともかく、露天のお湯からは消毒臭のようなものを感じ取ったのですが、気のせいでしょうか。
なお客室の一部にもかけ流しの露天風呂が付帯しているそうですから、次回訪問時は宿泊で利用してみたいものです。


お風呂上りは、再び歩いて川治湯元駅まで戻り、普通列車で東京方面へ。上画像に写っている電車は野岩鉄道所有6050系の普通下今市行きです。この時の私は知らなかったのですが、この数か月後に東武や野岩鉄道などでダイヤ改正が行われ、私が乗車したこの野岩鉄道6050系はほぼ自社線内運用に限定され、東武線下今市へ乗り入れなくなっちゃったんですね。
コロナ禍を経て各地の鉄道は徐々に収縮・萎縮する傾向にあるため、鉄道旅行を趣味とする私は年々寂しい思いをしております。


川治1号・2号混合泉
40.5℃ pH7.8 560.0L/min 溶存物質0.399g/kg 成分総計0.413g/kg
単純温泉 Na+:94.8mg(81.10mval%), Ca++:16.5mg(16.14mval%),
Cl-:60.0mg(34.84mval%), SO4--:74.1mg(31.75mval%), HCO3-:89.8mg(30.31mval%),
H2SiO3:49.4mg, CO2:14.1mg,
(平成29年5月24日)
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
加水・循環・消毒なし

栃木県日光市川治温泉川治11
0288-78-0011
ホームページ

日帰り入浴:土曜日以外の毎日15:00~20:00(受付19:00まで)
1000円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5


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塩原・中塩原温泉 赤沢温泉旅館

2022年12月01日 | 栃木県

(2022年1月訪問)
前回記事で取り上げた塩原の古町温泉から上三依方面へ向かう路線バスに乗り、「木の葉化石館入口」バス停で下車。
県道266号線に入って橋を渡り、箒川の対岸へ歩きます。


橋を渡ってすぐのところに、目的地の大きな看板が立っていますので、それに従う形で川沿いの路地を川下へ向かって数百メートル歩いてゆくと・・・


路地のどん詰まりにある今回の目的地「赤沢温泉旅館」にたどり着きました。玄関の前では守衛のワンちゃんが侍っており、不審人物と思われたのか、私が玄関へ近づくと軽く威嚇されてしまったのですが、日頃培った社畜根性をここでもフルに駆使しながらワンちゃんたちに下卑た愛想を目いっぱい振りまくことで、どうにかこうにか館内へお邪魔することができました。
なお本館の左右には白い大きなドームが左右にひとつずつ設けられていたのですが、あれって何なのでしょう。


今回は日帰り入浴での利用でお邪魔しました。予め電話で利用したい旨を伝えていましたので、フロントではスムーズにご対応くださいました。なおフロントではアジア系の方が働いていらっしゃいました。昨今はコロナ禍で海外旅行に行けないため、アジア系の方とお話できるとちょっぴりですが嬉しくなります。
なお玄関前ではワンちゃんが元気に警備活動をしていましたが、ぬくもりある館内ではニャンコ2匹が自由に動き回っていました。こちらのお宿ではフリーダムな雰囲気が横溢しているようです。いい感じですね。


こちらのお宿には、山側と川側の両浴場、そして貸切風呂があり、今回は山側の浴場を利用させていただきました。脱衣室は綺麗に整備されており、室内には東南アジアっぽい小物が飾られていたのですが、これはスタッフさんのご趣味でしょうか。


大きな窓から外光が程よく差し込む内湯。その窓の下には浴槽が据えられ、湯の香を漂わせながら綺麗なお湯を湛えています。窓と反対側にある洗い場にはシャワーつきカランが5個並んでいます。


湯船は総木造。湯船に体を沈めたとき、肌から伝わる木の優しい感触が何とも言えません。湯口から注がれるお湯はかけ流しの自家源泉で、実に心地よい湯加減が保たれていました。なお浴槽内のステップも木造なのですが、木材ゆえに浮力が働いてしまうため、重石としてレールが置かれていました。鉄ちゃんの私としては、こんなところで鉄道関係グッズに出会えたことに嬉しくなり、その場で小躍りしてしまいました。


露天風呂は庭園風で、池と露天の浴槽が一体化しているかのような設えになっています。この露天風呂に入れば錦鯉の気持ちがちょっとわかるかもしれません。露天風呂の浴槽には途中に仕切りがあり、仕切りの奥はぬるく、手前は温かいという設定なのですが、冬は手前側もぬるめでした。源泉温度が44℃なので、冬季はどうしても温度が下がってしまうのですが、とはいえじっくり長湯できますので、周囲の景色を眺めながらのんびり長湯すれば、きっと体に芯まで温まるでしょう。


自家源泉のお湯は無色透明で清らかに澄み切っています。お湯を口にすると淡い塩味とほろ苦みが感じられたほか、分析表には硫黄が含まれていないのに、なぜか湯口から硫黄臭がほんのり香ってくるのが不思議です。湯船ではトロトロとしており、肌に乗るとツルスベ感のほかに少々引っ掛かりが混在しながら全身を包んでくれます。明らかに福渡や古町など塩原温泉郷に多い塩化土類泉とは毛色が違う、この源泉独特の特徴を有していますので、わざわざここへ来て湯あみする価値は大いにあるでしょう。しかも完全かけながしで長湯したくなる絶妙な湯加減ですから最高です。私はあまりの気持ち良さに湯船でつい微睡んでしまいました。おすすめ。


赤沢源泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 43.9℃ pH6.6 85.6L/min(掘削自噴) 溶存物質1.841g/kg 成分総計1.884g/kg
Na+:402.1mg(63.40mval%), Ca++:180.8mg(32.70mval%),
Cl-:781.8mg(80.30mval%), SO4--:175.4mg(13.30mval%), HCO3-:104.1mg(6.21mval%),
H2SiO3:101.1mg, HBO2:62.1mg, CO2:43.9mg,
(2021年7月26日)

栃木県那須塩原市塩原1149
0287-46-5700
ホームページ

日帰り入浴可能(時間は直接施設へお問い合わせください)
700円
シャンプー類・ドライヤーあり。ロッカーなし。

私の好み:★★★
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