(2022年5月訪問)
2022年最後の温泉レポートは、私にとって第二の故郷である青森県津軽地方の温泉を取り上げることにします。
2022年5月に私は青森県つがる市の屛風山温泉で一泊お世話になりました。この温泉は拙ブログでも以前に取り上げており(初回記事はこちら、2回目の記事はこちら)、大好きな温泉なのでこれまで何度か公衆浴場を利用しておりますが、今回は宿泊して家族風呂を利用しました。青森県の温泉施設でよく見られる営業形態ですが、公衆浴場に付帯している家族風呂でリーズナブルに宿泊することができるのです。
温泉の目の前に広がるだだっ広い田んぼの向こうには、津軽富士(岩木山)が綺麗に聳えています。市町村合併により現在この地域はつがる市となっていますが、以前は西津軽郡木造(きづくり)町でした。太宰治は『津軽』でこの木造から見た岩木山について「津軽平野の金木、五所川原、木造あたりから眺めた岩木山の端正で華奢な姿も忘れられなかつた」「華奢で頗る美人である」と述べており、書かれてから80年近く経った今日でもその美しさに変わりはありません。
チェックインは公衆浴場の番台で行い、ひと通り説明を受けた後、お部屋へ向かいます。
公衆浴場部からお部屋がある家族風呂棟へ向かう途中の廊下には、このようにドリンクサービスや電子レンジがあったり・・・
浴衣をチョイスできる棚があったりします。基本的には素泊まり且つセルフサービスのお宿ですので、欲しいものは各自で取りに行くか、あるいは予め用意しておきましょう。
妙に天井が高い家族風呂棟の廊下。
各個室にはプラム・トマト・リンゴなど農産物の名前が付けられています。今回私が泊まったお部屋は「さくらんぼ」でした。
お部屋には既に布団が敷かれていました。家族風呂利用の場合には当然布団は無いかと思いますが、宿泊利用時にはお布団が用意されるわけです。お部屋は8畳ほどあって、エアコンやWifiが完備されています。また広縁には選択ハンガーがさがっているので、衣類を洗濯して干すことも可能です。
室内には洗面台やトイレがあるほか、冷蔵庫も設けられていますから、事前に付近のコンビニやスーパーでお弁当等を買っておき、冷蔵庫に保管して、翌朝電子レンジで温めて朝ごはんにしても良いですね。
歯ブラシやスリッパなどは、出入口のドアの内側にまとめられていました。
さて、お部屋に付帯しているお風呂に入りましょう。
ドアを開けた途端、屛風山温泉ならではのアブラ臭がブワッと香り、お風呂どころか客室中に充満したのでした。アブラ臭中毒者の私にとっては天国のような状態。まるでどこかで油が漏れているのではないかと勘違いしてしまうほどアブラ臭が強く放たれており、私は中毒患者のようにクンクンと鼻を鳴らしながらひたすらこの匂いを嗅ぎ続けて興奮状態になってしまったのでした。
入室時には既にお湯がザバザバ溢れていたので、そのオーバーフローによって匂いが小さな室内に充満していたのでしょう。公衆浴場のお湯もしっかりと香りますが、こちらの風呂はその比ではありません。私のようなアブラ臭マニアには天国のような環境ですが、鉱物油の匂いが苦手な方は、匂いの強さで頭痛など引き起こしてしまうかもしれませんので、入浴前に換気をおすすめします。
なおシャワーのお湯も温泉です。しょっぱくてアブラ臭が漂うお湯を頭から浴びることができるんですから、マニア的にはこの上ない多幸感を享受できます。
お湯はやや濃いめ食塩泉で、淡い琥珀色を呈しており、味わってみるとしょっぱさと出汁味が一体となって口の中に広がります。湯中ではつるつるすべすべの滑らかな浴感が大変気持ち良く、あまりの滑らかさに興奮して自分の肌を何度もさすってしまいました。そしてこの小さなお風呂で特徴的なのが、上述しているような強烈なアブラ臭です。こんな個性的なお湯をひたすら独占できるのですから、マニア的にはこの上ない天国のような環境です。
なお、22:00から翌朝5:00までは、温泉配管を清掃するため、お部屋の温泉が止まります(シャワーを含む)。このため、夜中にお風呂へ入りたい方は、22:00までにお湯を湯船へ貯めておく必要があります。
翌朝は公衆浴場の一番風呂に入ってみました。宿泊客は滞在中に公衆浴場を何度も利用できます(22:00~5:00以外)。誰も入ってこないお部屋のお風呂で濃厚な湯の香に包まれるのも良いのですが、誰もいない早朝の大きなお風呂で体を思いっきり伸ばしてかけ流しの温泉に入る醍醐味も捨てがたいですね。宿泊したからこそできるこの貴重な体験。朝からめちゃくちゃ幸せです。
湯口から湯の香を放ちつつしっかり温泉が投入されていました。
このお湯は今日も地元の多くのお客さんを癒してくれることでしょう。
あくまで個人的な経験則に基づいてお話しますが、五所川原を中心とする津軽西北五地域は、観光の繁忙期になるとホテルのネット予約が難しくなる傾向にあるようです。宿泊施設の数はそこそこあるので、おそらくネット予約に対応している施設が少ないのでしょう。逆に考えれば、ネット予約できない宿は、繁忙期であっても意外と空いている、と言えます。屛風山温泉もその一つですので、温泉のアブラ臭が大好きなマニアの方がもちろん、もしこのエリアで宿探しに困った場合は電話で問い合わせてみてはいかがでしょうか。
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 温度・pH・溶存物質・成分総計記載なし
Na+:2703mg(94.16mval%),
Cl-:3381mg(75.66mval%), Br-:8.2mg, I-:1.5mg, HCO3-:1739mg(22.61mval%), CO3--:60.0mg,
(平成元年10月18日)
青森県つがる市木造浦船58-2
0173-42-1697
公衆浴場8:00~21:00 第四月曜定休
390円
ドライヤー10円/3分、ロッカー100円有料、その他販売
家族風呂1000円/1時間、宿泊税込4,400円(素泊まり)
私の好み:★★★
-----------------------------------------
さて、ブログ「温泉逍遥」の2022年の記事は今回までとさせていただきます。
本年もお付き合いくださり誠にありがとうございました。
今年は昨年よりも行動できるようになったものの、日々の仕事が忙しくて時間が確保できず、またコロナ禍の影響で何事も億劫に思うようになり、温泉巡りを含む外出に対してあまり積極的になれないまま、不完全燃焼な感じでとうとう年末を迎えてしまいました。
年明けは3年ぶりにパスポートを使った弾丸旅行に出かけてまいりますが、その後のお出かけはどうなることやら・・・。
コロナ禍をきっかけに始めたインスタグラムも最近はちっとも捗らず、一か月近く放置したままになっていますが、こちらも何とか再び投稿しなければ・・・。
何事も不透明なことが多いのですが、悲観したって仕方がない、ケセラセラで新年を迎えます。
皆様もよいお年をお迎えください。
来年も引き続きよろしくお願い申し上げます。
K-I
.