温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

網代温泉 大成館

2023年05月28日 | 静岡県

(2022年6月訪問)
熱海エリアに数ある温泉郷の中でも、網代は私が大好きな場所にひとつであり、拙ブログでも既に何ヶ所かご紹介しています。今回取り上げる「大成館」も良いお湯に入れるお宿の一つ。2022年6月某日に日帰り入浴で利用させていただきました。
海岸に沿って伊豆半島を南北に貫く国道135号の沿道に位置しており、風格ある玄関廻りや綺麗に維持された館内など、非日常を感じさせてくれる造りは、さすが立派な旅館だと思わせてくれます。帳場で日帰り入浴をお願いすると快く応じてくださいました。


館内にはお風呂が4室あり、うち2つは貸切風呂です。公式サイトの目立つ位置に紹介されているオーシャンビューのお風呂はこの2つの貸切風呂で、日帰り入浴客は利用できません。一方、いわゆる大浴場は2室あり、この日私が案内されたのは、内湯「潮」とそこに併設された露天風呂「渚」です。
脱衣室はコンパクトですが清掃が行き届いており、エアコンや扇風機が設置されていて、アメニティの備え付けもあり、快適に利用することができました。


蔵造りの建物を思わせる内湯「潮」は、モノトーンを基調にしたシックな佇まい。
入って左側にシャワーが4つ、右側に2つ並び、それぞれにはDHCのアメニティが備え付けられています。


浴槽は幅が3.5メートル程なのですが、奥行が短くて横に細長い形状です。また一般的な浴槽よりも若干浅い造りになっています。お宿側の説明によれば、小さなお子様やお年寄りの方に配慮して、このような造りになっているそうです。


内湯には自家源泉の濁り湯が張られています。湯口から注がれる投入量こそ多くないのですが、私が湯船に入ると、お湯が縁からしっかりオーバーフローしていきました。 


海側に設えられた露天風呂「渚」はコンパクトな造り。交通量の多い国道の路傍に位置しているため、日中は喧騒が入りがちですが、日が沈んで交通量が減れば、おそらく潮騒を耳にしながら心地よく湯あみができるかと思います。露天は所謂岩風呂で、内湯同様にこちらも浅く、しかも2人でちょうど良いサイズ(詰めれば3人入れるかも)。ゴツゴツした溶岩質の湯口からお湯が投入されており、外気冷却の影響を考慮してか、投入量は内湯より多くなっています。


お湯は敷地内の庭から湧出している自家源泉で、湯船ではモスグリーンに濁っています。湯口から出てくるお湯をテイスティングしてみますと、はじめは苦味が強く感じられ、その後はっきりとした塩味が口の中に広がりました。なお匂いは特に嗅ぎ取れませんでした。湯中ではキシキシと引っかかる浴感が得られ、いかにも濃い食塩泉らしくパワフルに火照ります。


火照るお湯なので水分補給は欠かせません。ありがたいことに、館内には冷たい麦茶のサービスが用意されていましたので、私もお風呂上がりにこの水で喉を潤しました。
雰囲気もお湯も良く気に入りました。帰り際に女将さんがご丁寧にご挨拶下さったことも好印象でした。次回は宿泊して、海を眺める貸切風呂も利用してみたいものです。


かもめ湯(下9号泉)
カルシウム・ナトリウム-塩化物温泉 57.0℃ pH7.3 成分総計14.72g/kg
Na+:2837.0mg, Ca++:2497.0mg,
Cl-:8315.0mg, SO4--:855.9mg,
H2SiO3:61.9mg,
平成27年5月1日
加水あり(温度調整のため)
加温循環なし

静岡県熱海市下多賀141
0557-68-2221
ホームページ

日帰り入浴14:00~20:00
1100円
シャンプー類・ドライヤーあり
(日帰り入浴は大浴場のみ。貸切風呂は利用不可)

私の好み:★★★
コメント (2)
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上山田温泉 国楽館 戸倉ホテル

2023年05月21日 | 長野県

(2022年5月訪問)
温泉巡りを趣味にしている方ならお分かりいただけるかと思うのですが、日帰り入浴に比較的寛容な温泉地であっても、なぜか訪ねた旅館の全てで入浴を悉く断られてしまうことってありますよね。私も2022年5月某日に信州の上山田温泉でこのような経験をしてしまい、温泉街の真ん中で途方に暮れていたのですが、そんな私を救ってくれたのがこちらのお宿でした。お宿の名前には「ホテル」とカタカナが含まれていますが、実際には純然たる和風の温泉旅館です。周囲の旅館群に埋もれるかの如くひっそりとたたずんでおり、うっかりすると通り過ぎてしまうかもしれません。


見るからに古そうな外観のお宿。破風を頂く玄関の下には「源泉掛け流し」と書かれた札が立っており、それを目にしながら、ほのかな期待と投げやりな諦観がごちゃ混ぜになった心境で「ごめんください」と声を掛けると・・・


居間と思しきお部屋からおばあちゃんが現れ、日帰り入浴を快く受け入れてくださいました。
館内は昭和40年代から時が止まったかのような雰囲気。館内のあらゆるものが昭和のままなのですが、特に骨董品クラスのブラウン管テレビや、懐メロばかりが入っているジュークボックスが私の目を惹きました。


お風呂は玄関から右手の奥へ進んでいった突き当たりにあります。
昭和の面影が強く残る外観や館内とは打って変わって、男女別のお風呂はこぢんまりとしているものの、極めて一般的と言いますか、昭和ではなく平成の雰囲気を強く感じさせる造りです。おそらくお風呂だけ改修したのでしょうね。男湯の場合は左側にシャワーが4個並び、右側に浴槽が1つ据えられています。


内湯の浴槽はタイル張り。無色透明のお湯が張られています。掛け流しの湯使いですが、訪問時には浴槽から洗い場へお湯が溢れ出るようなことは無く、どうしたものかと浴槽内を調べてみたら、お湯は後述する露天風呂へ流下する造りになっていたのでした。


像が飾られていた湯口から温泉がチョロチョロと投入されています。このお湯を口に含んでみますと、薄いながらもはっきりとしたタマゴ味を感じました。湯中では弱いツルスベ浴感が得られます。なお源泉温度が低いので加温した上でかけ流されているようです。


露天の岩風呂は2人しか入れないような可愛いらしい造り。池で錦鯉が泳ぐお庭に面しています。上述したように内湯の下流に当たるためか、ぬるめの湯加減で、この露天風呂からお湯が排出されていました。個人的には上流に当たる内湯のお湯が良いので、訪問時は内湯ばかりに入っていたのですが、でも露天ではしっかりクールダウンできるので、悠々と泳ぐ鯉をみつめながら、内湯で火照った体を露天で冷ましていました。

お蔭様でこの日は無事、上山田温泉のお湯に入浴することができました。
戸倉ホテルさん、ありがとうございます。
造られたレトロではなく本物の昭和を体感できる貴重なひと時でした。


戸倉温泉源泉開発協同組合新5号源泉と上山田温泉株式会社3号源泉の混合泉
アルカリ性単純温泉 47.5℃ pH8.9 溶存物質360.5mg/kg 成分総計360.5mg/kg
Na+:84.7mg(79.11mval%),
Cl-:67.8mg(41.10mval%), HS-:0.9mg, S2O3--:0.2mg, SO4--:61.0mg(27.33mval%), HCO3-:73.9mg(26.03mval%),
H2SiO3:43.5mg, HBO2:2.2mg, H2S:0.01mg,
(平成31年3月15日)
加温あり(入浴に適した温度を保つため)
加水循環消毒なし

長野県千曲市大字戸倉温泉3055
026-275-2019

日帰り入浴時間不明
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー無し

私の好み:★★+0.5
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新戸倉温泉 湯のさと ちくま 白鳥園

2023年05月16日 | 長野県

(2022年5月訪問)
私は戸倉上山田温泉が大好きなのですが、特に千曲川右岸の戸倉温泉(新戸倉温泉)には私好みの温泉浴場が点在しているため、これまで幾度も訪問しては当地のお湯を堪能してきました。しかし、なぜか1ヶ所だけ行きそびれていた施設があり、その施設が最近リニューアルしたとの情報を得ていたため、信州へ出かけた某日、その施設へ立ち寄ってみることにしました。まずは戸倉駅からコミュニティバスに乗車します。


一般的な路線バスと違って、役場や各種公共施設を次々に立ち寄ってゆくのがコミュニティバス。直線距離では大したことないのに、妙にあちこちグルグル回ってかなり遠回りしつつ、ようやく目的地の目の前にあるバス停へたどり着きました。下手すりゃ駅から歩いても所要時間は変わらなかったかも。


その目的地とは「白鳥園」です。千曲川右岸の土手下に建つコンクリ打ちっぱなしの真新しい現代的な建物で、館内には温泉浴場の他、福祉関係やスポーツ設備など各種の市民サービスが入っている公営の複合施設です。

以前は「ホテル白鳥園」でしたが、ホテル廃業後は建物をそのまま活かして公営の入浴施設「戸倉メリーランド白鳥園」として生まれ変わり、昭和の面影たっぷりな館内が一部のマニアから指示を受けていたようです。当時の建物や館内の「マンモス浴場」をご記憶の方もたくさんいらっしゃることでしょう。でもその独特な空気感や循環という湯使いのため私は訪問することが無く、2014年に一旦閉館されて昭和の建物は解体されました。
その後全面的に建て直されて、2015年10月に現在の形でリニューアルオープン。ネット情報によれば湯使いも良くなったらしいので、信州へ出かけた際に立ち寄ってみることにしました。

正面玄関から中に入って券売機で料金を支払い、受付の人に券を渡して2階へ上がります。なお下駄箱と脱衣室のロッカーでそれぞれ100円玉を使うので(リターン式)、予め100円玉を2枚用意しておくとよいでしょう。
            

2階には広々としたラウンジがあり、そこに浴場入口が面しています。暖簾の先に広がる脱衣室はとても綺麗で明るく、空調完備で、ロッカー(100円リターン式)もたくさん備え付けられており、洗面台も複数ありますから、使い勝手が大変良好です。


外観と同様に浴場内もコンクリ打ちっぱなしで、天井が高く採光も十分です。洗い場には計23個のシャワー付き混合水栓が取り付けられており、それぞれにミラーがあり、ボディーソープなどが備え付けられています。
内湯の浴槽は窓に面た明るい場所にあり、木材が採用されている手前側の縁は優しい曲線を描いています。ただ滑りやすいためか、訪問時には滑り止めのマットが被せられていました。

この主浴槽にお湯を注ぐ木の湯口からは当然ながら温泉が出ているのですが、チョロチョロ出たりしっかり出たりと、お湯の出具合に強弱があるのです。また熱い時やぬるい時など、温度も上下を繰り返しているのです。分析表によれば源泉の湧出温度は約35℃ですから、おそらく加温と非加温を交互に出しているのでしょう。非加温のぬるいお湯が出る時にはヌルヌル感を伴ながらほろ苦味とタマゴ風味を感じさせてくれるいかにも戸倉のお湯らしい特徴が出ているのですが、加温された熱いお湯の時には源泉が持つ本来の硫黄感は失われ、砂消しゴムみたいな劣化した薄い硫黄感になってしまうのが残念なところです。
ちなみに浴槽のお湯は窓側へ溢れ出ていますが、浴槽内で吸引が行われており、また湯口のみならず浴槽内でも熱いお湯が投入されていますから、かけ流しと循環の併用ではないかと思われます。


内湯の近くには掛け湯があります。こちらにも温泉のお湯が注がれており、やはり熱くなったりぬるくなったりを繰り返して、ぬるい時は源泉そのままの特徴がよく現れ、加温湯の時にはその特徴が飛んでしまっていました。
なお、内湯にはこれらの他にサウナや水風呂もありますので、温泉ファンのみならずサウナファンの方も満足できるでしょう。


内湯からつながる千曲川を望むテラスには露天風呂の浴槽が据えられています。コンクリ打ちっぱなしという設えなのせ少々無機質なのですが、川越しに対岸の上山田温泉や周囲の景色を眺めることができ、露天らしい広々とした開放感が楽しめました。
この露天風呂には丸い主浴槽の他、壺湯が3つ設けられています。主浴槽も3つの壺湯も、内湯の各浴槽と同じく熱くなったりぬるくなったりを繰り返しており、湯温に応じてお湯の特徴が変わるのも同様です。主浴槽は内湯同様にかけ流しと循環を併用した湯使いかと思われます(湯口の反対側に排水口があります)。一方、壺湯に関しては側面直下に排水溝があって、通常はそこへオーバーフローしているのですが、湯船に人が入って湯嵩が増えると、直下の排水溝だけでは排水が追い付かず、周囲の床にもお湯が流れ出ていました。

各浴槽ともかけ流しと循環を併用している他、おそらく塩素消毒も実施されているかと思います。とはいえ、そこそこのツルスベ浴感はあり、また非加温のお湯が出る時には戸倉らしい硫黄感が得られるので、お湯の質にこだわらなければ、明るく綺麗なお風呂で湯浴みを楽しむことができる利便性が高い施設ではないかと思います。


2階の奥には食堂がありますので、お風呂上がりにご当地名物の「おしぼりうどん」をいただきました。
うどん自体は業務用の冷凍のような気がしますが・・・


すりおろしの辛い大根や信州みそは本物でした。なかなかの美味でしたよ。

            
新戸倉温泉16号 白鳥園第一号源泉
アルカリ性単純温泉 34.9℃ pH8.8 湧出量表記無し(掘削動力揚湯)
Na+:110.4mg(87.75mval%), Ca++:11.2mg, 溶存物質0.422g/kg 成分総計0.422g/kg
Cl-:73.7mg(37.55mval%), OH-:0.1mg, HS-:0.9mg, SO44-:72.4mg, HCO3-:76.3mg(22.56mval%), CO3--:18.0mg,
H2SiO3:50.9mg,
(平成27年9月27日)
    
長野県千曲市大字戸倉2254
026-275-0400  
ホームページ

9:30〜21:00 休館日は公式サイトでご確認ください
600円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          
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裾花峡温泉 うるおい館 

2023年05月09日 | 長野県

(2022年5月訪問)
今回から信州の温泉を取り上げます。
温泉天国である信州には、県庁の裏手にもかけ流しの温泉浴場がありますので、所用で長野市街へ出かけた際、ついでに立ち寄ってみることにしました。まずは長野駅から路線バスに乗って「長野県庁」バス停で下車します。


バス停から目的地へ向かう途中、温泉関係と思しき設備を発見。温泉マニアとしては、浴槽へ供給される前の温泉に関わる設備を目にすると、なぜか興奮してしまいます。

画像に写っている看板にも書かれていますが、後述する本館の裏手には足湯があり、傍を流れる川や緑豊かな山の景色を眺めながら足湯を楽しむことができます。できればその足湯の写真も撮っておきたかったのですが、実際に足湯で寛いでいらっしゃる方が数名いらっしゃったので、撮影は控えさせていただきました。


バス停から歩くこと数分で今回の目的地である「裾花峡温泉 うるおい館」に到着しました。
長野県庁や善光寺など長野の市街地からさほど離れておらず、周辺には住宅が広がっていますが、裾花峡という名前の通り、建物の向こう側には切り立った絶壁がそそり立っており、緑豊かな周辺景色を含め、たしかに峡谷みたいな風情が広がっているのです。県庁所在地の市街と山の景色が共存しているこの光景は、山岳県である信州を象徴しているのかもしれません。


さて、玄関から館内へお邪魔しましょう。
こちらの温泉旅館では日帰り入浴も積極的に受け入れていますので、今回は日帰り入浴で利用させていただきました。私が訪問した時にも次々に入浴客が訪れており、人気の高さが窺えました。


大浴場には「白岩の湯」と「流泉の湯」の2部屋があり、以前は日によって暖簾を替えていたようですが、2022年4月から「白岩の湯」は男湯、「流泉の湯」は女湯として固定されるようになったそうです。

ここから先のお風呂の画像はございませんので、文章のみで説明させていただきます。
広い内湯にはたくさんの浴槽があり、浴槽によって2つの源泉が使い分けられています。窓側に据えられた大きな主浴槽や、腰くらいの深さで底に足ツボを刺激する石が埋め込まれている足ツボ浴槽などには濁り湯の「裾花峡温泉」源泉が注がれている一方、バイブラ槽やジェットバスには無色透明の「保玉・湯乃花温泉」源泉が用いられているようです。

浴場の川側には露天風呂が設けられ、こちらには濁り湯の「裾花峡温泉」源泉が張られています。川に沿って長い造りの岩風呂で、十数人は同時に入れそうなキャパを有しています。川の方へ向かって岩風呂に入ると、ちょうど目線の先に、裾花峡の崖や山の緑の景色が広がり、あたかも山奥の秘湯にいるかのような気分を味わるのですが、繰り返し申し上げますように、ここは長野県庁のすぐそばという市街地。その意外性が実に面白いところです。なお私の訪問時は、露天風呂へ入る人より、その周りでクールダウンしているお客さんの方がはるかに多かったのですが、その理由は後程。

メインで使われている「裾花峡温泉」源泉はやや緑色を帯びた黄土色に濁っており、海から遠く離れた信州なのにお湯を口に含むとしょっぱい味がします。しかも土類系のお湯なのに引っかかる感覚が弱く、むしろツルスベの滑らかな浴感が得られるのが興味深い点です。分析表によれば炭酸イオンが30mgも含まれているので、これが滑らかな浴感の要因ではないかと推測されます。この源泉は湯量が豊富で、なんと毎分1500Lも湧出しており、その豊かな湯量を活かし各浴槽でかけ流しの湯使いとなっています。特に露天風呂では湯尻の他、縁石の隙間からも大量にオーバーフローしており、惜しげもなく掛け流されるお湯を眺めていると贅沢な気分に浸れます。各浴槽とも入浴しやすい湯加減に維持されているのですが、にもかかわらずパワフルに温まるため、気づけば体がかなり火照ってしまい、心臓がたちまち激しく鼓動してしまいました。露天風呂のまわりで多くのお客さんがクールダウンしていたのは、こうしたお湯の力強さが影響しているのでしょう。

一方、内湯の一部に使われている「保玉湯乃華温泉」源泉は冷鉱泉を加温循環させたもので、分析表によれば源泉では硫化水素イオンが20.8mgも含まれているのですが、加温や循環などの影響で、浴槽では硫黄感はすっかり失われており、塩素臭以外の匂いや味は特に感じられません。その代わり滑らかなツルスベ感(とろみ)を湯中でしっかり実感することができました。102mgも含まれている炭酸イオンがその滑らかさをもたらしているのかと思われますが、それにしてもこの102mgという含有量には驚かされます。
ところで、この「保玉湯乃華温泉」は旅館からちょっと離れた犀川の小田切ダム付近で湧出したものをローリー輸送しているのですが、野湯などの変わり種温泉が好きな方ならご存じの塩生乙温泉こそ、この「保玉湯乃華温泉」源泉なのです。


塩生乙温泉として知られる小田切ダム湖畔のポリバスがある場所からちょっと坂を上がった場所を、Googleストリートビューで見てみたら、なんと源泉施設からトラックの荷台に積んであるタンクへ鉱泉を注水している光景が写っていました。おそらくこのトラックによって「うるおい館」へ運搬されているのでしょうね。源泉が有していたはずの硫黄感の喪失は、加温や循環の他、輸送やそれに伴う時間の経過も大きく影響しているものと思われます。


さて話をこの旅館の自家源泉「裾花峡温泉」に戻しましょう。
2階の食堂「湯あがり亭」には・・・


飲泉できるコーナーがあり、冷えた温泉水を無料で飲むことができます。


ピッチャーに入れられた冷えた温泉を実際に飲んでみますと・・・しょっぱさの他、金気味や石灰味が口の中に広がりました。飲泉は茶碗1杯までとのことですが、決して美味しいものではないためゴクゴク飲めるわけではなく、正直なところ茶碗1杯以上は飲みたくないかも、といった感じの味です。でもこの不味さこそ体には良いのかもしれません。健康オタクは妙にマゾ気質がありますけど、それに倣って不味さをありがたく思い、茶碗に注いだ冷たい温泉をしっかり飲み干しました。


裾花峡温泉
ナトリウム-塩化物温泉 44.3℃ pH7.2 1500L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質8625mg/kg 成分総計8739mg/kg
Na+:2715mg(81.90mval%), Ca++:302.7mg(10.47mval%), Fe++:4.1mg,
Cl-:4071mg(85.67mval%), Br-:12.0mg, I-:5.4mg, HCO3-:1092mg(13.36mval%), CO3--:30.0mg,
HBO2:67.4mg, H2SiO3:137.6mg, CO2:114.4mg,
(平成27年5月11日)

保玉湯乃華温泉
含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩冷鉱泉 14.2℃ pH9.18 湧出量不明 溶存物質1304.1mg/kg 成分総計1304.1mg/kg
Na+:331.3mg,(95.43mval%),
Cl-:86.0mg(12.99mval%), HCO3-:659.0mg(57.72mval%), CO3--:102.0mg(18.17mval%), HS-:20.8mg,
(平成24年2月27日)

長野県長野市妻科98
026-237-4126
ホームページ

日帰り入浴10:00~23:00(朝風呂営業6:00~9:00)
平日800円・土日祝850円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

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広田温泉 家族風呂

2023年05月04日 | 青森県

(2022年4月訪問)
これまで私が何度も利用しているのに、なぜかブログの記事にしてこなかった温泉がいくつかあり、五所川原市の「広田温泉」もその中のひとつ。特に他意は無いのですが、長年にわたって紹介できないままでしたので、満を持して今回取り上げます。と言っても、既にネット上では広田温泉を紹介する記事が多く存在するため、へそ曲がりな拙ブログでは家族風呂に限定して取り上げます。


こちらは大衆浴場の建物です。家族風呂を利用の際は、まず大衆浴場の券売機で所定の料金を支払い、番台で受付を済ませます。


駐車場の片隅にある源泉施設を一瞥しながら・・・


駐車場の奥に建つ家族風呂棟へと向かいます。
なかなか立派な建物ですよね。


家族風呂棟の広いロビーには誰もおらず、ガランと静まり返っていました。
このロビーに各浴室の出入口扉が面して並んでいます。


今回案内された個室は1号室です。上画像をご覧になるとわかりますが、1号室の入口扉は隣接するトイレと接するような不思議な造りになっています。更に言うと、1号室の室内側にもトイレと行き来できるドアが設けられており、もっと言えば更に右側の2号室の室内からもトイレに行けます。つまり2つの浴室の間にトイレを設けることで、両方の部屋からトイレへ直行できるようにしたわけですね。
せっかくトイレへ直行できる構造にしてくださっているので、訪問時の私は下半身に力を入れて無理矢理尿意を催し、1号室の室内側からトイレを使わせていただきました。


更衣室はこのような感じ。洗面台と鏡、ドライヤー、長椅子が用意されているだけで、他の貸切風呂にあるようなテレビやソファーなどはありませんが、短時間でお風呂に入るだけですから、必要にして十分な設備ではないでしょうか。


浴室は木材を多用した造り。家族風呂にしては室内空間に余裕があり、複数人数でもストレスなく湯浴みできそうです。


洗い場には、青森県の温泉銭湯でおなじみの押しバネ式カランと壁直付けのシャワーが2セット設けられており・・・


シャワーやカランから出てくるのお湯は温泉です。なおカランに石鹸類は無いので、予め用意して持参しておくか、番台で購入しましょう。


湯船も木材で縁取られた立派な造り。私ひとりでは持て余すサイズです。この浴槽に、温泉ファンが太鼓判を押す温泉のお湯が大量に注がれており、惜しげもなくオーバーフローしています。
広田温泉のお湯はうっすら黄緑色を帯びていて、出汁味を伴いつつ塩辛く、ほのかなアブラ臭と磯の香に似た匂いが湯面から漂い、湯中ではツルツルスベスベの滑らかな浴感を楽しめます。ちょっと熱めですが、大変気持ち良いお湯なので心身シャキッとすること間違いなし。極上のお湯です。


広田温泉2号泉
ナトリウム-塩化物温泉 46.6℃ pH7.8 湧出量測定不可(掘削動力揚湯) 溶存物質6.477g/kg 成分総計6.496g/kg
Na+:2332mg(94.14mval%),
Cl-:3097mg(93.12mval%), Br-:10.0mg, I-:0.6mg, HCO3-:375.7mg,
H2SiO3:115.7mg, HBO2:37.4mg, CO2:18.4mg,
(平成27年11月2日)
加温循環消毒なし
加水あり(泉温が高いため井戸水を約5%加水)

青森県五所川原市広田字下り松111-1
0173-34-6385

6:00~22:00
大衆浴場330円、家族風呂1300円

私の好み:★★★
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