(2023年5月訪問)
四国の山間部はどこも道が狭く険しい…。四国の僻地を運転していると、そのことを否応なく実感させられます。
今回目指す安芸市の「こまどり温泉」も狭隘な山道をひたすら進んでいった先にあり、そこそこ車幅の大きな自分の愛車(SUV)で訪ねた私は、途中で不安に陥りながら目的地を目指したのでした。
公式サイトによればアクセス方法は2つあり、初めて当地を訪ねる私は「比較的道路が広く、運転しやすい経路」と表現されている「伊尾木川側の県道208号から」向かうルートを選択しました。たしかに私の車でも通行できるのですが、それでも離合に苦労するような狭い区間が長く続き、しかも途中に集落が複数あるため行き違う車も少なくなく、往復共にバックしたり、ギリギリのところで擦れ違ったり…を繰り返しました。
集落を抜けて山を登り、車1台しか通れない上画像のトンネルを抜け・・・
突き当たりを道しるべに従って左折。坂を下ると集落に入り・・・
今回の目的地「こまどり温泉」に到着です。山の緑に囲まれ、また集落を囲うように山の斜面には畑が切り拓かれ、空では小鳥がさえずり、大変長閑で麗しい場所です。この施設がある東川地域は約200の人口を擁しているんだとか。たしかに景色は素晴らしいのですが、都会に生まれて育った私にとってはいろんな意味で想像を超越する環境です。
安芸駅からコニュニティーバスが施設の目の前まで来るのですが、1日たった2本。観光ではちょっと使いにくいかも。
この施設は農水省によるウルグアイラウンドの対策事業として建てられたようです。90年代のニュースでよく聞いた言葉ですね。農業分野に関してはコメの輸入を認め、ミニマムアクセスとして少しずつ輸入することになったんでしたっけ。もちろん農業関係者は大反対だったでしょうから、当時の細川内閣は事業費6兆100億円、国費2兆6,700億円という巨額の補助金を全国にばらまいたわけですね。その補助金で作られた施設のひとつが「こまどり温泉」というわけか…。
建物右側のスロープを下った先の建物裏手が駐車場です。車を停めていざ施設へ。
玄関の引き戸を開けるとすぐに受付カウンター。スタッフの方に湯銭500円を支払って中へ進みます。
浴室は受付の右手です。なお反対側の左手の奥には食堂や休憩室があり、館内での食事利用も可能なんだとか。
暖簾を潜った先の更衣室は至ってシンプルで余計なものはありませんが、ロッカーにはカギがあり、ドライヤーも用意され、扇風機・エアコンも完備されていますので、使い勝手に問題なし。
浴室のドアには「源泉かけ流し」と書かれた紙が貼られていますね。これは楽しみだぞ。
浴室も質実剛健と申しましょうか、飾り気の無いシンプルな構造です。タイル張りの浴室内では、窓下に浴槽が据えられ、反対側の壁側にはシャワーが4つ並んでいます。
窓の外には山の美しい景色が広がり、心地よい風が入ってきます。うん、気持ち良い!
浴槽もタイル張りですが縁のみ御影石が用いられています。詰めれば4人入れそうですが、3人がベストでしょうか。
浴槽のお湯は常時注がれているわけではなく、非加温の冷鉱泉と加温された鉱泉という2つの水栓があって、適宜開閉して湯加減を調整しています。所謂貯め湯式の湯使いであり、循環こそしていませんが、果たして源泉かけ流しと言い切って良いものか、ちょっと躊躇するところです。とはいえ各自で好みの湯加減にして良いのですからありがたいですね。ちなみに私がお風呂から出ようとしたタイミングで入ってきた常連さんと思しきお客さんは、浴室へ入るや否や加温湯と冷鉱泉を同時にジャンジャン出して、実質的なかけ流し状態にしていました。私にとっては初めて利用する施設ですので、出し続けることに躊躇いがあり、適度な湯加減にしたらすぐに栓を締めちゃったのですが、なるほど出しっぱなしなら確かに掛け流せますね。なんだぁ、出しっぱなしにして良かったのかぁ。
非加温の冷鉱泉は12℃という冷たさですから、注ぎ過ぎちゃうと湯船はすぐにぬるくなっちゃいますが、できるだけ湧出時の姿に近い状態の源泉を知りたい私は、お言葉に甘えて他のお客さんにご迷惑が及ばない程度に非加温の水栓を開けて浴槽へ注いでみました。
分析表によれば総硫黄の量(チオ硫酸・硫化水素イオン)がそこそこ多いので、冷鉱泉からタマゴ臭的なものを期待したのですが、私の訪問時は冷鉱泉からは硫黄感が感じられず、しばらく出し続けたのですが状況は一向に変わりませんでした。なお加温された鉱泉からも硫黄感は得られません。日によって状況は変化するもかもしれませんが、おそらく鉱泉をストックしているうちに硫黄感が飛んでしまったのかもしれませんね。期待した硫黄感が得られずちょっと残念です。なお浴感もごく普通で、特に印象的な引っ掛かり感もツルスベ感もあるわけではなかったように記憶しています。
お湯自体は取り立てて面白いものではありませんが、循環装置を使っておらずかけ流しに近い状態で入浴できる鉱泉浴場は高知県では珍しく、また秘境然としたこの長閑な山村にポツンと佇む静かな共同浴場でのんびりとした環境や風情を味わうだけでも十分に価値がありますから、なんだかんだで訪問して良かったと思っています。
受付前にある大きな冷凍ストッカーにはご当地高知県の有名食品メーカーである久保田食品のアイス各種が入っていたので、湯上りにそれを購入して食べました。久保田食品のアイスは素材感が存分に活きていて本当に美味。東京でもクイーンズ伊勢丹やビオセボンなどオーガニック食材を扱う店舗で見かけますが、この久保田のアイスを食べると他のメーカーの商品が食べられなくなっちゃいます。
アルカリ性単純硫黄冷鉱泉 12.1℃ pH8.6 湧出量測定不能(掘削動力揚湯) 溶存物質0.432g/kg 成分総計0.433g/kg
Na+:95.2mg(86.07mval%),
HCO3-:261.7mg(86.32mval%), HS-:3.4mg, S2O3--:1.2mg,
H2SiO3:28.1mg,
(2020年2月21日)
高知県安芸市黒瀬550
0887-36-2260
ホームページ
11:00~19:00(11月~2月は18:30まで)(受付は30前で終了) 毎週水曜及び年末年始定休
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★+0.5