温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

安芸市 こまどり温泉

2024年08月30日 | 四国(香川・徳島・愛媛・高知)

(2023年5月訪問)
四国の山間部はどこも道が狭く険しい…。四国の僻地を運転していると、そのことを否応なく実感させられます。
今回目指す安芸市の「こまどり温泉」も狭隘な山道をひたすら進んでいった先にあり、そこそこ車幅の大きな自分の愛車(SUV)で訪ねた私は、途中で不安に陥りながら目的地を目指したのでした。
公式サイトによればアクセス方法は2つあり、初めて当地を訪ねる私は「比較的道路が広く、運転しやすい経路」と表現されている「伊尾木川側の県道208号から」向かうルートを選択しました。たしかに私の車でも通行できるのですが、それでも離合に苦労するような狭い区間が長く続き、しかも途中に集落が複数あるため行き違う車も少なくなく、往復共にバックしたり、ギリギリのところで擦れ違ったり…を繰り返しました。
集落を抜けて山を登り、車1台しか通れない上画像のトンネルを抜け・・・


突き当たりを道しるべに従って左折。坂を下ると集落に入り・・・


今回の目的地「こまどり温泉」に到着です。山の緑に囲まれ、また集落を囲うように山の斜面には畑が切り拓かれ、空では小鳥がさえずり、大変長閑で麗しい場所です。この施設がある東川地域は約200の人口を擁しているんだとか。たしかに景色は素晴らしいのですが、都会に生まれて育った私にとってはいろんな意味で想像を超越する環境です。


安芸駅からコニュニティーバスが施設の目の前まで来るのですが、1日たった2本。観光ではちょっと使いにくいかも。


この施設は農水省によるウルグアイラウンドの対策事業として建てられたようです。90年代のニュースでよく聞いた言葉ですね。農業分野に関してはコメの輸入を認め、ミニマムアクセスとして少しずつ輸入することになったんでしたっけ。もちろん農業関係者は大反対だったでしょうから、当時の細川内閣は事業費6兆100億円、国費2兆6,700億円という巨額の補助金を全国にばらまいたわけですね。その補助金で作られた施設のひとつが「こまどり温泉」というわけか…。


建物右側のスロープを下った先の建物裏手が駐車場です。車を停めていざ施設へ。
玄関の引き戸を開けるとすぐに受付カウンター。スタッフの方に湯銭500円を支払って中へ進みます。
浴室は受付の右手です。なお反対側の左手の奥には食堂や休憩室があり、館内での食事利用も可能なんだとか。


暖簾を潜った先の更衣室は至ってシンプルで余計なものはありませんが、ロッカーにはカギがあり、ドライヤーも用意され、扇風機・エアコンも完備されていますので、使い勝手に問題なし。
浴室のドアには「源泉かけ流し」と書かれた紙が貼られていますね。これは楽しみだぞ。


浴室も質実剛健と申しましょうか、飾り気の無いシンプルな構造です。タイル張りの浴室内では、窓下に浴槽が据えられ、反対側の壁側にはシャワーが4つ並んでいます。


窓の外には山の美しい景色が広がり、心地よい風が入ってきます。うん、気持ち良い!


浴槽もタイル張りですが縁のみ御影石が用いられています。詰めれば4人入れそうですが、3人がベストでしょうか。


浴槽のお湯は常時注がれているわけではなく、非加温の冷鉱泉と加温された鉱泉という2つの水栓があって、適宜開閉して湯加減を調整しています。所謂貯め湯式の湯使いであり、循環こそしていませんが、果たして源泉かけ流しと言い切って良いものか、ちょっと躊躇するところです。とはいえ各自で好みの湯加減にして良いのですからありがたいですね。ちなみに私がお風呂から出ようとしたタイミングで入ってきた常連さんと思しきお客さんは、浴室へ入るや否や加温湯と冷鉱泉を同時にジャンジャン出して、実質的なかけ流し状態にしていました。私にとっては初めて利用する施設ですので、出し続けることに躊躇いがあり、適度な湯加減にしたらすぐに栓を締めちゃったのですが、なるほど出しっぱなしなら確かに掛け流せますね。なんだぁ、出しっぱなしにして良かったのかぁ。

非加温の冷鉱泉は12℃という冷たさですから、注ぎ過ぎちゃうと湯船はすぐにぬるくなっちゃいますが、できるだけ湧出時の姿に近い状態の源泉を知りたい私は、お言葉に甘えて他のお客さんにご迷惑が及ばない程度に非加温の水栓を開けて浴槽へ注いでみました。
分析表によれば総硫黄の量(チオ硫酸・硫化水素イオン)がそこそこ多いので、冷鉱泉からタマゴ臭的なものを期待したのですが、私の訪問時は冷鉱泉からは硫黄感が感じられず、しばらく出し続けたのですが状況は一向に変わりませんでした。なお加温された鉱泉からも硫黄感は得られません。日によって状況は変化するもかもしれませんが、おそらく鉱泉をストックしているうちに硫黄感が飛んでしまったのかもしれませんね。期待した硫黄感が得られずちょっと残念です。なお浴感もごく普通で、特に印象的な引っ掛かり感もツルスベ感もあるわけではなかったように記憶しています。

お湯自体は取り立てて面白いものではありませんが、循環装置を使っておらずかけ流しに近い状態で入浴できる鉱泉浴場は高知県では珍しく、また秘境然としたこの長閑な山村にポツンと佇む静かな共同浴場でのんびりとした環境や風情を味わうだけでも十分に価値がありますから、なんだかんだで訪問して良かったと思っています。


受付前にある大きな冷凍ストッカーにはご当地高知県の有名食品メーカーである久保田食品のアイス各種が入っていたので、湯上りにそれを購入して食べました。久保田食品のアイスは素材感が存分に活きていて本当に美味。東京でもクイーンズ伊勢丹やビオセボンなどオーガニック食材を扱う店舗で見かけますが、この久保田のアイスを食べると他のメーカーの商品が食べられなくなっちゃいます。


アルカリ性単純硫黄冷鉱泉 12.1℃ pH8.6 湧出量測定不能(掘削動力揚湯) 溶存物質0.432g/kg 成分総計0.433g/kg
Na+:95.2mg(86.07mval%),
HCO3-:261.7mg(86.32mval%), HS-:3.4mg, S2O3--:1.2mg,
H2SiO3:28.1mg,
(2020年2月21日)

高知県安芸市黒瀬550
0887-36-2260
ホームページ

11:00~19:00(11月~2月は18:30まで)(受付は30前で終了) 毎週水曜及び年末年始定休
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

コメント (2)
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香美市 温泉cafe湖畔遊

2024年08月21日 | 四国(香川・徳島・愛媛・高知)
(2023年5月訪問)

拙ブログでは初めての登場となる高知県の温泉・鉱泉を取り上げます。今回訪ねる「温泉cafe湖畔遊」は、物部川のダム湖畔に位置するcafeレストラン併設の温泉宿泊施設です。日帰り入浴も受け付けているため、今回は入浴のみの利用です。このエリアはダム湖の対岸側にアンパンマンミュージアムがあったり、また国道195号線沿いには小洒落たカフェやレストランが点在していたりと、美しい自然環境を活かした観光業が盛んなエリアと言えましょう。なお「温泉cafe湖畔遊」は国道沿いではなく、途中から狭い道を入って進んだ集落の中にあり、そこそこ対向車も来るため、運転にはちょっと気を遣いました。

目的地へ到達すると、道の左右両側に「湖畔遊」のものと思しき建物や看板が見え、初見の私はどちらへ行けばよいのか迷ってしまったのですが、看板などをよく見たところ、宿泊客だったら湖側の舗装路面を下った先にある駐車場を利用できるのですが、私のような日帰り入浴やレストランのみ利用の場合は、山側の狭い砂利敷き駐車場を使うことになることがわかりました。そこで愛車のSUVを砂利の駐車場に入れ、何度か切り返しながらなんとか駐車スペースに車を収め、道路を渡って、反対側(湖側)の建物へと向かったのでした。
ちなみに施設の看板には音符のフラットが描かれているのですが、これって前進を続ける毎日の生活からひとつ戻してリラックスしよう、という意味なのかしら。あるいは自然に帰るということなのかしら。とにかくそんな感じの意味合いが含まれていそう(勘違いだったらごめんなさい)。


坂を下った先の湖畔に建つ施設群はそれぞれ緑の木々に囲まれており、木々に隠れ周囲の自然に溶け込むかのように佇んでいます。また建物自体も黒く塗装されて目立たないようになっています。


入浴利用の際は、湖畔を臨むレストランのレジで受付を行います。料金は先払いで、入浴料の他、ロッカーキーのデポジットとして更に100円を納め、それと引き換えに更衣室のロッカーキーが手渡されるのですが、この100円は退館時にカギを返却すれば戻されますのでご安心を。


一旦レストラン棟を出て、右隣の建物(浴舎)へ移ります。この浴舎は僻地集落の共同浴場をひと回り大きくした程度の規模で、思いのほか小さな建物です。なお偶数日と奇数日で男女の暖簾を替えており、私は訪問した偶数日は右側が男湯の暖簾が掛かって、ロッカーキーのバンドの色は赤でした。なお左右のお風呂はどのように異なるのか、その違いにはついては不明です。
スペースの関係なのか、靴は出入口に置かずロッカーの中に収めます(ロッカー内は2段式になっていて、下段に靴を入れます)。このためスニーカーのような低い靴でないと入りません(ブーツの場合はどうするんだろう…)。
更衣室内にはエアコンと扇風機が用意されているので、季節を問わず快適に利用できます。


外観から想像できるようにお風呂はコンパクトな造りですが、落ち着いた大人な雰囲気がなかなか良く、大きな窓からはダム湖を臨み、しかも露骨な展望ではなく、梢や木々の緑の間から湖面を眺めるような構造になっている点に品の良さを感じます。なお洗い場に設けられているシャワーは計5か所。シャンプー・リンス・ボディソープが備え付けられ、シャワーの吐水圧力も問題ありません。


浴槽はいわゆる岩風呂で、6〜7人は入れそうなサイズを有しており、上述のように木々の梢越しに湖を眺めながら入浴できます。
壁に「掛け流し」と書かれており、たしかに窓側の縁からオーバーフローしているのですが、その量は決して多くなく、また湯口もよくわからなかったので、純然たるかけ流しなのかあるいは循環併用なのか、その辺りは判断できませんでした。なお「掛け流し」と書かれた扁額の下に金属のパイプが立ち上がっていて、そこからチョロチョロと冷鉱泉が出ています。この冷鉱泉といってもそんなに冷たくなく20℃はありそうなので、おそらくこれは生源泉かと思われます。このチョロチョロ源泉のほかに加温されたお湯が浴槽内で出ているのでしょう。

湯船のお湯は若干モスグリーンを帯びた山吹色に濁っており、その透明度は底面がかすかに見える程度です(室内の薄暗さが透過性を低めている可能性あり)。化石海水由来の温泉によく見られるような色や濁りであり、実際にチョロチョロ落ちる鉱泉を口にしてみますとかなり塩辛く、とても山の中にいるとは思えません。内陸部にもかかわらず塩辛い温泉といえば東北地方のグリーンタフ型温泉はその一例ですが、分析表によればグリーンタフ型温泉と異なり硫酸塩はほとんど含まれておらず、食塩や重曹イオンが主成分となっています。また金気も少々感じられます。更には青森県八甲田の「みちのく深沢温泉」みたいな、癖のある独特の匂いも嗅ぎ取れました。
湯船に浸かると食塩泉的な弱いツルスベの滑らかな浴感が得られる一方、この手の温泉によくあるキシキシと引っかかるような感触はありません。多く含まれる炭酸イオンが滑らかな浴感をもたらしている一因かもしれません。金気の影響なのか、チョロチョロと冷鉱泉が落ちるところは焼け爛れたような色に染まっており、浴槽の岩も赤黒く、また浴室の内装も黒く塗装されているため、結果的にお風呂はダークカラーで統一されているような印象を受けます。その色合いが落ち着いた雰囲気をもたらすのですね。


露天エリアにはコンクリの四角い浴槽があるのですが、これはお湯ではなく水風呂です。この露天エリアには腰掛けが4つ用意されており、お湯で火照った体をクールダウンできます。樹々越しに湖面を眺められますが、その環境ゆえ、夏は虫が多いのではないかとちょっと心配です。

私がお風呂から出てレストランへ鍵を返却しに行くと、ちょうどランチタイムを迎えたレストランはお客さんで満席になっており、空席待ちのお客さんがいらっしゃるような状況でした。レストランも湖面を臨む心地よい立地ですし、きっと料理も美味しいのでしょう。環境や雰囲気、そして高知県では非常に貴重な「掛け流し」という点にどれだけ価値を見出せるのか、その価値に納得できるのならば、利用価値のある施設ではないかと思います。


ナトリウム-塩化物冷鉱泉 21.5℃ pH8.4 41L/min(掘削動力揚湯)
Na+:3039mg(93.25mval%), Ca++:117.9mg, Fe++:1.7mg,
Cl-:4765mg(93.12mval%), Br-:24.4mg, I-:9.4mg, HCO3-:525.7mg, CO3--:22.4mg,
H2SiO3:15.1mg,
(2021年5月20日)

高知県香美市香北町有瀬100
0887-59-4777
ホームページ

日帰り入浴11:00~16:00
1000円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤあり

私の好み:★★+0.5
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新横浜フジビューホテル 日帰り入浴

2024年08月09日 | 神奈川県

(2023年4月訪問)
2023年3月に東急と相鉄の新横浜線が開通し、神奈川県東部の鉄道旅客の流れに変化がもたらされました。相鉄沿線と東急がつながることで、県央部から都心へのアクセスが飛躍的に向上するとともに、県内各部のみならず渋谷や目黒など東急沿線などから新横浜へのアクセスが良くなったため、状況によっては品川より新横浜から東海道新幹線へ乗り継いだ方が便利になるような状況も生まれています。

私も一介の鉄ちゃんとして、開業フィーバーが落ち着き始めた1ヶ月後の4月に現地へ向かい、開通したばかりの駅や路線、旅客の状況を確認してまいりました。個人的な感想としては、開業して間もないのに結構利用客が多く、早くも県民の足として定着していることに驚きました。
さて、東急新横浜駅の駅窓口で東急「のるるん」と相鉄「そうにゃん」のツーショットを撮ってから・・・


私は新横浜でひとっ風呂浴びることにしました。駅至近にある「新横浜フジビューホテル」は温泉の自家源泉を所有しており、その温泉に日帰り入浴利用することが可能です。こちらは駅前の通りに面したホテルの正面ですが・・・


温泉浴場の入口は角を曲がって路地に入った先の西館にあります。


なお路地を入ってすぐのところにあるホテル駐車場には、この直下から温泉を汲み上げていることをアピールする看板が立っています。


西館に入り、エレベーターもしくは階段で地下へ下るとすぐに温泉浴場です。
券売機で料金を支払って券を受け取り、下足箱の鍵と入浴券を受付に差し出しますと、引き換えに大小の各タオルとロッカーキーを受け取ります。つまり手ぶらで利用が可能なのです。実に便利ですね。

脱衣室はそんなに広くないものの頻繁に清掃が入るため清潔に保たれ、気持ち良く利用できます。また室内にお水のサービスが用意されていますので入浴前後の水分補給も万全。


浴場入った途端、ふんわりとアブラ臭が鼻孔をくすぐってきたのでビックリ。まさか新横浜の駅前でアブラ臭のお湯に出会えるとは。温泉のアブラ臭といってもいろんなタイプがありますが、こちらの香りは日本海側の富山や新潟あたり、もしくは山形県などで湧くグリーンタフ型温泉によくある石油的な匂いです。
なお受付で「滑りやすいので気をつけて」と注意を受け、聞いた時にはありきたりの注意喚起かと高を括っていたのですが、実際に浴場に踏み入れてみると、床が本当に滑りやすくてこれまたビックリ。おそらく温泉成分の影響でしょうけど、匂いといい滑りといい、なかなか面白い温泉のようです。なお、浴場入口付近に温泉のかけ湯がありますので、入室直後に頭からお湯を被ってアブラ臭を満喫するのも良いかと思いますよ。


中華圏の建物を連想させる丸い飾りを潜った先に洗い場があり、8ヶ所のシャワーが設けられています。


洗い場の隣にはサウナと水風呂が並び、さらにその奥には1階地上(屋外)と吹き抜けになっているスペースがあって、ベンチに腰掛けてクールダウンすることができます。私が利用した時には、広くてゆったりとした温泉浴槽よりも、サウナと水風呂やこのクールダウンゾーンを行き来するお客さんが多かったようです。自家源泉が自慢のお風呂ですが、実は温泉よりもサウナ目当ての利用客の方が多いのかもしれませんね。


入浴槽は2つに分かれており、広いジャグジー槽と、その6割程度の大きさの普通の温泉浴槽で、いずれも鼈甲色(飴色)且つ笹濁りのお湯が張られています。私が訪問した時には後者の普通温泉浴槽の方が若干熱めの湯加減でした。広いジャグジー槽では、成分が濃い温泉にありがちな、泡がなかなか消えずに湯面に残る現象が起きており、ビジュアル的にもお湯の濃さを実感できました。加水は無く加温・循環・消毒は行われていますが、消毒に関してはあまりに気になりませんでした。

なお両浴槽の間にあるS字形の湯口からチョロチョロとぬるい温泉が出ているのですが、、おそらくこれは生源泉ではないかと思われます(間違っていたらごめんなさい)。化石海水型の温泉なので非常に塩辛く、アブラ臭を有し、ツルスベな浴感ながら強烈に火照ります。分析表によれば炭酸イオンを多く含んでおり、その数値だけ見ると滑らかな感触が強そうに想像したくなるのですが、実際には他のイオンも多いため炭酸イオンの存在感が埋もれてしまい、数値の割りにツルスベ感は控えめです(それでも一般的な温泉よりはしっかりツルスベ感があります)。また化石海水にもかかわらずヨウ素が少ないのも特徴的と言えるでしょう。なおアンモニアや臭素はしっかり多く、それゆえお湯から漂う匂いも強いのでしょう。
都市部の駅前にもかかわらず意外な良泉に出会える温泉浴場でした。


新横浜温泉
ナトリウム-塩化物温泉 33.2℃ pH7.73 蒸発残留物14800mg/kg 成分総計15751mg/kg
Na+:5210mg, NH4+:42.3mg, Mg++:65.5mg, Ca++:251mg, Fe:2.54mg,
Cl-:9030mg, Br-:39.3mg, HCO3-:654mg, CO3--:24.0mg,
H2SiO3:139mg, HBO2:24.7mg, CO2:24.1mg,
(平成27年11月12日)
加水無し
加温・循環・消毒あり

神奈川県横浜市港北区新横浜2-3-1
045-473-0021
ホームページ

14:00~23:30 (最終受付22:30) 最終月曜定休
1500円(温泉のみの場合) 貸タオル付
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5



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世継のかなぼう 

2024年08月02日 | 京都府・大阪府・滋賀県
(2023年5月訪問)
全国的に地獄釜のような猛暑が続いておりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。
暑い日に熱い風呂へ入るのも乙ですが、やはりこんな陽気が続けば清涼感が欲しくなるもの。そこで今回は滋賀県米原市の世継地区に湧く「かなぼう」と称される鉱泉群を取り上げます。米原市の琵琶湖沿岸に位置する世継地区には、随所で金気を含んだ冷鉱泉が湧出しており、各湧出ポイントには水場が設けられ、古くから地域の方々が野菜や農機具を洗う水として古くから使われています。「かなぼう」はあくまで農業や生活の水場として使われる鉱泉であり、入浴するためのものではありませんが、その清涼感や独特の知覚的特徴に惹かれたマニアがしばしば訪ねて、地域の生活に密着した鉱泉が湧く景色に心を潤しています。
そこで私も世継の「かなぼう」を巡ることで、都会の生活に疲れて枯れ切ったメンタルに少しでも潤いをもたらすことにしました。


世継地区を訪ねる場合、JR北陸本線の坂田駅前にある駐車場か、あるいは県道2号(さざなみ街道)に面した「道の駅 近江母の郷」で車を停めて、歩いて現地へ向かうのが一般的かもしれませんが、私はJR米原駅東口にある観光案内所で借りたレンタサイクルを利用して、各鉱泉を巡りました。
世継の集落に入ると、上画像のようなイラストマップが大きな看板となって立っています。現地へ行かれた方はまずこのマップの看板を見つけてスマホで撮ることをおすすめします。


私のように米原駅前の観光案内所へ立ち寄れば、同じマップを入手できます。しかも裏面には・・・


イラストマップではなく、一般的な地図に「かなぼう」の各水場がマッピングされていますから、実際に当地を巡るのであればこちらの単色刷りの地図が見やすいかと思います。

話を一旦イラストマップに戻します。
世継集落には七夕伝説があるらしく、マップ上ではその言い伝えや伝説ゆかりの地がイラスト等とともに紹介されているのですが・・・


我々鉱泉マニアとしては、マップの左下に注目。
そこには通し番号とともに「世継のかなぼう」の各水場が図示されており、地図上にその番号が付せられているのです。これは便利ですね。ということで、早速1番目から巡ってみましょう。

(1)

集落の中央、十字路の角にある「かなぼう」です。1番とナンバリングするだけあって、たしかに見つけやすい立地です。


別の角度から撮ってみました、道路の角に面しているので、内輪差を考えずにハンドルを切ったら脱輪してこの水槽に落ちちゃいそう。


鉱泉は円筒形の投入口から四角い枠へ落とされ、更に地面を掘って作った水槽へ注がれています。
水槽はかなり大きく、人によっては入ってしまいそうな感じですが、私はそんな度胸も無く、そもそも集落の方々の目がありますから、ただ見学して鉱泉に触れただけで済ませました。


鉱泉の温度は17.5℃。水温は年間を通じて大体この前後数度で安定しているようです。夏はひんやり、冬はあったか、といったところでしょうか。この鉱泉を口に含んでみますとたしかに金気がしっかり主張するほか、カルシウム感も含まれており、触れた感じは少々キシキシしていて、やや重めの鉱泉といったところ。金気が多いので飲泉には適さないでしょう(飲めるでしょうけど美味しくない)。なお「かなぼう」の鉱泉は当地の南東に聳える霊仙山を源としているんだとか。


(2)

こちらは集落の中、イラストマップではタバコ屋の横とされています。たしかに商店らしき建物が目の前にありますが、いまでもご商売やっていらっしゃるのかしら。


コンクリの桝は金気の影響で全体的に黄色いですね。縁に置かれたタワシが、この鉱泉の用途を物語っています。


角度を変えて撮ってみました。湧出量はかなり多く、ドバドバと湧出しては捨てられています。


こちらの「かなぼう」には、このような説明プレートが設置されています。


水温は18.2℃でした。場所によって多少異なるのですね。


(3)

こちらは(2)の「かなぼう」の脇を東へ伸びる路地に入り、道なりに左へ曲がった先にあります。


逆側から撮ってみました。デッキブラシが数本立て掛けられていますね。


注ぎ口の様子。


水温は(1)と同じく17.5℃でした。


(4)

こちらは(1)~(3)からはちょっと南へ離れた民家の軒先です。5月に訪ねたので、周囲の菖蒲が綺麗でした。


ひとつひとつの桝が他より大きく、水槽も比較的大きいのですが、洗い場の水場は(1)より浅い造りです。
注ぎ口の蓋の上には柄杓が置かれていました。


水温は18.2℃でした。


(5)

さて、集落から外れた耕作地の中へとやってまいりました。5番の「かなぼう」です。彼方に聳える山は伊吹山かしら。


こちらの「かなぼう」も場所柄、農機具の洗浄に使われているようです。


よく見ると、お芋がいくつか転がっていますね。ここでサツマイモを泥を落としたのかな。


水温は(1)や(3)と同じ17.5℃。冬でもこの水温ならば水仕事も苦なくできますね。


(番外1)

さてここからは、イラストマップで案内されていない「かなぼう」です。
「道の駅 近江母の郷」内にもこのような「かなぼう」があります。道の駅の内部にあるためか、オブジェのような形状をしており農村の生活感が全くないのですが、たらいやデッキブラシが置かれていることから、この「かなぼう」も何かの洗浄に使われているものと思われます。


斜め後ろから撮ってみました。ご覧の通り見通しの良い場所にあり、道の駅に立ち寄った方なら、大抵の場合は目に入るのではないでしょうか。


真上から見た様子。中央の穴から鉱泉が噴き上がっています。もちろん自噴(だと思います)。


こちらは集落の「かなぼう」より若干高めの19.0℃でした。


(番外2)

さて、最後です。
「道の駅 近江母の郷」から世継の集落へ戻った田園風景の中にある「天の川沿岸土地改良区揚水機場」付近。
一見するとただの畑に見える上画像の景色にも「かなぼう」があるのです。


雨水桝が隆起して出っ張ったようなこのコンクリの躯体からも「かなぼう」の鉱泉がコンコンと湧出しています。


蓋で閉じられているので気づきにくいのですが、よく見ると内部は他の水場と同じように黄色く染まっていました。


水温は17.5℃。(1)(3)(5)の各水場と同じ水温です。金気を多く含む鉱泉の特徴も他と同じでした。

今回紹介した世継の「かなぼう」はいずれも入浴できない冷鉱泉ですが、ひとつの集落に集中して湧出しており、古くから地域の生活に密着して使われてきたのみならず、どの湧出点においても湧出温度や知覚的特徴がみな共通しているという、様々な特徴を兼ね備えた実に興味深い鉱泉群でした。
温泉ファンでしたら一見の価値ありです。

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