温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

氷見岩井戸温泉 潮の香亭

2013年12月06日 | 富山県
 
氷見の海岸沿いを北上すると、日帰り入浴ができる掛け流し温泉の露天風呂があると聞き、どんなところか実際に行ってみることにしました。その露天風呂は「くつろぎの宿うみあかり」(旧氷見グランドホテルマイアミ)の別館として営業しており、まずは「うみあかり」の正面エントランスから脇の道に入って、奥に伸びる坂を上がっていきます。


 
坂を登り切ると駐車場が広がっており、手前へちょっと戻ったところに今回の目的地である別館「潮の香亭」がありました。要塞のような鉄筋造の「うみあかり」本館とは対照的に、まるで茶屋のような、平屋木造の大人しくて落ち着いた佇まいですね。なお、この施設は本館の宿泊客も利用できるため、上述の坂を浴衣姿で登ってくるお客さんもチラホラ見受けられました。



駐車場の一番奥には源泉と思しき施設があり、その一角は火気使用禁止となっていました。


 
上がり框に設置されている券売機で料金を支払い、フロントで券を提出し、浴室がある館内の奥へと進みます。



浴室へ伸びる廊下には、東北の鄙びた温泉旅館みたいに、おばちゃん向けの地味な洋服が販売されていました。


 
浴室の手前には休憩スペースがあって、その脇を通過していきます。奥にはお座敷も用意されています。おばちゃん向けの服といい、この休憩室の雰囲気といい、北陸というよりも東北の片田舎にいるような錯覚に陥る空気感が漂っていました。


 
ウッディーな内装の脱衣室には、左右の壁に無料ロッカーが設置されており、洗面台2台や扇風機2台など、ひと通りの備品類が用意されています。エアコンも取り付けられているのですが、この日は稼働していませんでした。なおドライヤーは受付貸出のため、室内には備え付けがありません。
準備を済ませて浴室への扉を開けようとした時、扉の右側に貼り付けられている札に目を奪われました。「メザラの上でタオルを絞らないで下さい」と書かれています。メザラって排水目皿のこと? でも足元にはスノコしか見当たりません。まさかスノコのことを当地の方言で「メザラ」と表現するのでしょうか。



入浴ゾーンには池のように大きな露天風呂がデンと据えられ、その手前に洗い場が並んでいます。床も浴槽内も鉄平石が敷かれており、浴槽の周りは大きな岩が囲っています。
このお風呂は平成23年にリニューアルされて、上屋を総檜造りにしたんだそうですが、露天とはいえ全てをその上屋と壁で覆われていますので、半露天と表現した方が実態にマッチしているかと思います。ホテルの付随施設ですから保守的な構造の浴場を想像していたのですが、浴槽はこの大きな岩風呂のみですし、洗い場が半露天状態にあったり、内湯が無かったりと、予想に反して大胆且つワイルドな造りに、初見の私はビックリしてしまいました。



海を臨む小高い崖の上に位置していますので、一番奥の窓からは富山湾が望めますが、すぐ左側の視界には繁みが入り込み、また前方から右にかけては「うみあかり」の本館棟や擁壁が立ちはだかっているため、雄大な海原が視界いっぱいに広がっているわけではなく、繁みや「うみあかり」の間からちょこっと見える海を覗き見るような感じでした。それでも高い位置からの眺めというものは人の心を掴む性質があるようで、この窓際にある岩の上では常にお客さんが腰を掛けて眺望を楽しんでいらっしゃいました。



女湯との境界にも大きな岩が組まれているのですが、ところどころに隙間があって、お湯自体は女湯と男湯でつながっているようでした。またその岩の一部はテーブル状になっていて、その上からぬるいお湯が湯船へ向かって流れていたのですが、このお湯って何なのでしょう…。


 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が、入口の左右に分かれて計8基取り付けられています。


 
浴槽の左縁にある湯口からは直接触れるのが躊躇われるほど熱いお湯は注がれており(画像左or上)、洗い場側にある切り欠けからは投入量に見合った量のお湯が排水されていました(画像右or下)。湯使いとしてはれっきとした放流式であり、館内表示によれば気温の高い時期(5~10月)には加水されますが、適温になれば非加水となるんだそうです。湯口では熱かったお湯も、表面積の広い湯船では適度に熱が奪われ、とても心地の良い湯加減に落ち着いていました。

お湯は弱い貝汁濁りで心なしか僅かに黄色を帯びているようにも見えます。また湯中では黄土色の浮遊物がチラホラ舞っています。湯口周りや浴槽の湯面ラインなど、お湯と空気が同時に触れやすいところでは、温泉成分の酸化によって橙色に染まっています。お湯を口に含んでみますと、しっかりとした塩味と共に、ほんのりとしたアブラ臭とヨード臭、そして臭素臭が感じられました。なお県の条例に従い塩素系薬剤を使用しているそうですが、実際にはそれらしき刺激臭はあまり感じられませんでした。
入浴中には食塩泉らしいツルスベ浴感が肌に伝わりました。半露天とはいえ海から吹く風が入り込んできますので、その風が火照りかける体を程よく冷ましてくれ、丁度良い湯加減も相俟って、実に爽快です。とはいえ塩分が濃いお湯ですから、いくら湯加減が良くても長湯は禁物。迂闊に長時間浸かっていると体力が奪われてヘロヘロになること必至です。実際に私も湯船から上がった直後は意識が軽く遠退いたので、シャワーで頭から冷水を浴びて意識を取り戻しました。また湯上り後はしばらく汗が引かず、熱が体内に篭り続きました。
観光客でも利用しやすい施設でありながら、実力派のお湯に浸かることができますので、どなたにでも勧めることができる素敵なお風呂と言えるでしょう。


岩井戸温泉(2号井)
ナトリウム-塩化物温泉 56.8℃ pH8.22 毎分220L/min(掘削動力揚湯・引湯120m) 溶存物質8.03g/kg 成分総計8.03g/kg
Na+:2721mg, NH4+:7.9m, Ca++:290mg,
Cl-:4863mg, Br-:14.0mg, I-:2.1mg, HCO3-:31.0mg,
H2SiO3:42.5mg, HBO2:21.7mg,
加水あり(気温の高い期間のみ)、塩素系薬剤を使用(県条例の基準を満たすため)
加温・循環ろ過なし

高岡駅前から加越能バスの脇行もしくは女良小学校行で「岩井戸温泉」下車
富山県氷見市宇波10-1  地図
0766-74-6100

7:00~22:00(受付21:30まで)
500円(時間制限なし)
ロッカー・シャンプー類あり、ドライヤーは受付貸出

私の好み:★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

神代温泉

2013年12月05日 | 富山県
 
温泉ファンからフューチャーされている温泉施設は、わかりにくい立地だったり、寂しく鄙びた風情だったり、陋屋然とした建物だったりと、一般的な観光客が志向するラグジュアリや瀟洒な佇まいとは逆ベクトルの施設が多い傾向にありますが、今回訪れた氷見市郊外の「神代温泉」もその典型例でして、カーナビをセットして辿り着いたその目的地は、集落から離れて山の方へどんどん進んでいった谷戸の谷頭、昔話でタヌキかキツネが化かし合いを繰り広げていそうな、昼なお暗き辺鄙な里山の中であり、薄気味悪い茂みの手前に、風雪に耐えること幾星霜、草臥れまくった旅館と思しき建物が1軒ぽつんと佇んでいました。車寄せの前の池はすっかり干上がっており、本来水が張ってあるべきところには、タイルの破片が散乱していました。その怪しげな雰囲気に不安を抱いて腰が引けてしまったのですが、玄関には「営業中」の札が掛かっていたので、ホゾを固めて戸に手をかけました。


 
訪問者を不安に陥れる外観とは裏腹に、この温泉を訪れたファンが異口同音で各自のサイトにて紹介しているように、受付のおばちゃんはとても明るくおしゃべり好きで、私が戸を開けて挨拶しますと、お湯について立て板に水で説明してくださいました。曰く、お湯は湧いたまんまの状態であり、湧いた直後は無色透明だけれども、鉄分が参加して強く濁ってしまうんですよ、とのこと。必要最小限の照明しか点けていない薄暗い館内にはひょうたんがたくさんぶら下げられていたのですが、これが何を意味するのか、初見の私にはわかりません。こちらはかつて旅館業を営んでいたんだそうですが、現在は日帰り入浴のみの営業に限定しているんだとか。


 
昭和レトロという使い古された表現では片付けられない、トワイライトゾーンのような得も言われぬ空気感の中、トイレ(ぼっとん)の前を左に曲がり、緩やかなスロープを下って脱衣室へ向かいます。脱衣室は棚と籠が用意されているだけの至ってシンプルなものですが、扇風機が一台置かれており、後述する個性的なお湯に浸かった後には、この扇風機が大活躍しれます。


 
お風呂は男女別の内湯が一室ずつで、浴槽傍に置かれた石灯籠やV字をクロスさせた壁の模様などが目を惹く浴室からは、全体的に暗い色で覆われており、長い歴史の面影が深く沁み込んでいることが如実に伝わってきます。洗い場にはシャワー付き混合水栓が2基設置されていますが、お湯・水ともに吐出圧力は弱めでした。


 

まわりを岩で飾っている浴槽は、一見すると5~6人入れそうな容量がありますが、手前半分が浅くなっているので、全身浴できるのはせいぜい2~3人といったところ。受付でおばちゃんが教えてくれたようにお湯は鉄分の存在を主張するような黄土色に強く濁っており、透明度は殆どありませんから、浴槽内のどこで深くなるのか目視できず、足の裏で探りを入れながら浅深の境界を見つけることになります。

お湯はバルブ付きの黒い塩ビ管からドボドボ注がれており、湯船ではやや緑色と赤みを帯びた黄土色に強く濁り、完全掛け流しのお湯が溢れ出てゆく浴槽の縁は、温泉成分によって恰も漆器のように美しい色合いにコーティングされていました。湯口のお湯を口にしてみますと、とっても塩辛くて金気味、特に鉄分が強く、一度お湯を口に含んだら、水でちゃんと濯がないと、濃い塩気と金気で口腔内が窄まってしまいそうです。嗅覚面では金気臭や臭素臭、そしてアンモニア臭が漂ってきました。
こんな濃いお湯ですから当然ながら体への負担も強く、入浴してから2~3分で心臓がバクバクと激しく拍動しはじめ、決して長湯できず、2~3分浸かっているだけでも一旦湯船から出ないと、体がヘトヘトになってしまいます。圧倒的な豪腕でボディを攻めてくるパワフルなお湯ですから、お湯と真っ向から対峙しながら湯船に入ったり出たりを繰り返しましたが、それでも私は30分が限界でした。またこの時は私以外にも、富山県内や愛知県からのお客さんがいらっしゃいましたが、皆さんもお湯の濃さに音を上げて短時間で上がっていきました。だからこそ、湯上がりには脱衣室の扇風機が非常に役に立つのであります。
鉄分が多い強塩泉は青森から富山までの日本海沿岸に点在していますが、神代温泉はその典型例ですね。鄙びた風情からは想像できない非常に力強いお湯であり、温泉が持つ驚異的なパワーを体感させてくれました。あたりが雪に覆われる冬に入れば、きっとその頼もしい温浴効果が本領を発揮してくれることでしょう。


ナトリウム-塩化物強塩泉 45.4℃ pH7.14 33L/min(掘削自噴) 溶存物質20.325g/kg 成分総計20.344g/kg
Na+:7086mg(86.73mval%), NH4+:6.89mg, Mg++:126mg(2.92mval%), Ca++:679mg(9.53mval%), Sr++:33.4mg, Fe++:3.20mg,
Cl-:11863mg(98.95mval%), Br-:109mg, I-:8.46mg, HCO3-:116mg,
H2SiO3:50.2mg, HBO2:176mg, CO2:19.6mg,

富山県氷見市神代3021  地図
0766-91-1210

10:00~21:00
500円
備品類なし

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

氷見有磯温泉 さっさきの湯

2013年12月04日 | 富山県
※残念ながら閉館しました。

 
ネット上で温泉ファンからの評判の良い氷見郊外の公衆浴場「さっさきの湯」へ行ってまいりました。「さっさき」を漢字で書くと「指崎」と表記するんですね。カーナビに導かれて着いたところは、集落からちょっと離れた周囲に何もない寂しい場所で、すぐそばを能越自動車道の高架橋が横切り、目の前を阿尾川の堤防が左右に伸びており、建物の名前を確認するまで本当にここに浴場があるのか不安になってしまいました。集落の方にはお宿があるようですが、この浴場は入浴と休憩のみでして、2棟ならんだ平屋の右側は有料の休憩所、左側が浴場となっているようです。



すぐそばの堤防手前に源泉施設と思しきポンプ小屋とタンクを発見。


 
玄関を入りますと、中は昔ながらの銭湯スタイルでして、下足場に開かれている窓口から番台のおばちゃんに料金を支払い、脱衣室へと上がります。銭湯らしく室内にはテレビや牛乳の自販機が置かれていました。



右奥には4畳半くらいの空間もあり、棚は無いのですが籠が積まれており、スペースが限られている棚を避けて広々としたこの小部屋で着替えているお客さんもいらっしゃいました。



浴室は全面タイル貼りで実用本位です。室内の左に浴槽がひとつ据えられ、右側には洗い場が一列に並んでいます。長方形の浴槽は12~3人は同時に入れそうな容量があります。


 
洗い場にはお湯と水の押しばね式カランが5組、そして出入口のすぐ左側にシャワーがひとつ設けられています。



カランから出てくるお湯はごく普通の沸かし湯なのですが、水は妙にヌルヌルツルツルしており、口に含んでみるとアルカリ性泉のような味が感じられたので、水道水ではなく、アルカリ性に傾いた鉱泉水なのかもしれません。


 
左奥の湯口からお湯が湯船へ投入されており、浴槽縁からはしっかりオーバーフローしていました。温泉成分の影響なのか、湯口付近の底タイルは黒く染まっています。
画像に写っている水色の湯口からは35~6℃のお湯が吐出されており、その直下の槽内からは熱めのお湯も同時に供給されていました。館内表示によれば、加温のために一部循環されているそうですが、槽内で吐出されている熱いお湯がその循環されたものであり、上から出ているぬるいお湯は生の源泉ではないかと思われます。



お湯は暗めの山吹色を帯びたささ濁りで、湯中では黒い湯の華がちらほら舞っており、湯口からお湯を手桶に汲んでもその湯の華がキャッチできます。明瞭な塩味・磯の風味・出汁味・金気味・何かが焦げたような苦味、そしてアブラっぽい匂いと薄い金気臭が感じられました。
加温は程々に抑えられていたため、湯船に浸かっても決して熱くは無かったのですが、塩分パワーがしっかり発揮されるため、呑気に長湯しているとみるみるうちに体力が奪われ、気づけばグッタリしてしまいました。夏ですと湯上がり後も汗がなかなか引きそうにありませんが、寒い冬には湯冷め知らずでいつまでもホコホコ状態が続くことでしょう。雪深い北陸の冬の心強い味方ですね。


ナトリウム-塩化物温泉 36.5℃ 溶存物質3014.9mg/kg 成分総計3018mg/kg
Na+:1006mg, Ca++:38.7mg,
Cl-:1467mg, Br-:3.0mg, SO4--:106mg, HCO3-:282mg,
H2SiO3:61.5mg, HBO2:20.1mg,
加温あり(源泉温度が低いため)、一部循環あり(加温のため)、塩素系消毒剤使用(衛生管理のため)
加水なし

富山県氷見市指崎2164  地図
0766-74-4722

※残念ながら閉館しました。
9:00~21:00 第2・4水曜定休
370円
ドライヤー番台貸出、石鹸・タオル等番台で販売有り

私の好み:★★

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新湊温泉 天然温泉 海王

2013年12月03日 | 富山県
 
富山県の国道8号「富山高岡バイパス」を車で走っていたら、新湊の「道の駅」付近で「海王」という規模の大きな温泉施設(スーパー銭湯)を見つけたので、何らの事前情報も持たずに突撃してみることにしました。比較的新しい施設のようでして、訪問したのは土曜日の午前中でしたが、広い駐車場にはたくさんの車が止まっており、人気の高さが窺えます。


 
屋外には無料で利用できる足湯が設けられていました。浴室と同じお湯が用いられており、やや緑色を帯びた黄土色に強く濁る、いかにも濃厚そうなお湯であります。



足湯の傍には「日本屈指の強塩泉」と印刷されたポスターが貼られていました。どんなお湯なのでしょうか。

いつもならこの先も画像を交えながら館内やお湯の様子を紹介してゆくのですが、この日はポイント5倍デーであったためか大変混雑しており、また館内撮影も禁止されていましたので、今回は文章のみでレポートさせていただきます。ご了承下さい。

●受付および館内
玄関に入り、下足場の券売機にて料金を支払います。受付では下足箱のキー(100円リターン式)と引き換えに脱衣室のロッカーキーを受け取ります。受付から浴室入口や食堂にかけての非入浴ゾーンでは、賑やかな飾り付けやポスターとともにおもちゃや駄菓子などが所狭しと大量に陳列された物販コーナーが目を惹きます。なんでもこちらの施設では昭和の縁日をイメージした、ノスタルジーと賑わいに溢れる店舗づくりを目指しているんだそうでして、確かに「新横浜ラーメン博物館」のような「つくられたレトロ」の雰囲気によって統一されていました。

縁日気分の廊下から一歩脱衣室に入ると、いきなり実用的な空間となり、ロッカーの前でひしめき合うように、多くのお客さんが更衣していました。細長い空間にロッカーを置いており、混雑時には相当狭く感じます。さすがにまだ開業してから然程年月が経っていないので、利用客が多くても室内はそこそこ綺麗ですが、洗面台が1台しかないのはちょっと残念なところです。
この脱衣室では、まるで冷房が無かった頃の国電の通勤電車並に扇風機が何台も設置されて、ブンブン羽根を回しているのですが、この扇風機の多さは温泉の泉質を非常によく示しているのです。どういう意味なのか、その謎解きは後述にて。


●内湯
入浴ゾーンは内湯と露天があり、多数の洗い場と多様な浴槽が設けられている、典型的なスーパー銭湯です。
浴室入口には沸かし湯(真湯)の上がり湯があり、その左側には洗い場が設けられていて、シャワー付き混合水栓が壁際と中央の島に分かれて計33基取り付けられています。なおこの洗い場にはボディーソープとリンスインシャンプーが備え付けられています。
一方、入口の右手には立って使うシャワーが用意されており、更に右手に向かって日替わり風呂(この日はぬるめのジャグジーでした)・水風呂・サウナの順に各設備が並んでいます。

入口から見て左前方、洗い場の奥に据えられているのが温泉主浴槽でして、ガラス窓に面して16~7人サイズの湯船が横長に広がっているのですが、その真ん中あたりに立つ柱付近にステンレスの手すりが渡されており、これによって湯船は実質的に左右2:3の割合で二分割されています。右側の方にはお湯の投入口があり、お湯の鮮度が良いためか、あるいは湯口から落ちるお湯を打たせ湯の代わりにしたいのか、主浴槽に入ろうとするお客さんの多くはこの小さな右側に集中していました。尤も源泉投入口はこの右側のみならず、浴槽を分割する柱に這わせた配管や左端奥の槽内からも供給されていて、この3ヶ所からの源泉投入によって、大きな湯船の湯加減を均衡させていました。お湯は浴槽の縁からしっかりオーバーフローしており、館内表示の通り、加温加水の無い完全掛け流しの湯使いとなっているようです。


●露天風呂
露天風呂はまわりを塀で囲まれているので景色を楽しむことはできませんが、その囲いは竹垣を模したエクステリアの上に瓦を載せて、落ち着きのある和風な雰囲気を醸し出そうとしています。
この露天では大きな浴槽が一つ据えられており、一見すると10人以上は同時に入れそうな容量がありそうなのですが、お湯の濁り方が強くて透明度が殆ど無く、底どころかステップすら見えませんから、そんな状況を考慮して(安全面を考慮して)槽内のステップが広く確保されています。このステップが幅を取っているために湯船の表面積のわりには全身浴できる部分が少なく、せいぜい5~6人サイズといったところでしょう。
木組みの湯口からお湯が注がれており、そのお湯が落とされる箇所の湯面は泡立っていました。浴槽周りのタイル床はオーバーフローのお湯によって赤茶色に染まっています。


●お湯に関して
青森県から富山県にかけての日本海沿岸では、強烈にしょっぱい個性的な温泉が散見されますが、この温泉もその典型例であり、やや緑色を帯びた黄土色に強く濁ったお湯は、海水並みにとても塩辛く、金気(鉄分)味の他、ヨード臭・臭素臭・アンモニア臭といった刺激のある臭いも放たれています。特に塩分の濃さは全国屈指であり、塩化物イオンは海水のそれに匹敵するそうです。なお湯中では黄土色や薄茶色の細かな湯の華がたくさん浮遊していました。

実際に入浴してみますと、食塩泉らしいツルスベ浴感が肌に載り、またどの浴槽も41℃くらいに設定されているので、ついつい長湯したくなるのですが、数分浸かっているだけで心臓の鼓動が激しくなり、とてもじゃないけど長湯できません。このため湯加減の割にはどの浴槽も回転が早く、たまに長湯する方もいらっしゃいましたが、大抵はその後水風呂へ直行していました。湯上がりはガンガン火照り、汗も引かず、かなりベタつきますので、お風呂からあがる前にはしっかり真湯で上がり湯を掛けた方がよろしいかと思います。

このように濃厚な塩分がスピーディー且つパワフルに効いてくる恐ろしく凶暴なお湯ですから、浴室のあちこちには「温泉に入っている時間は3~5分 それ以上は休憩しながら…」と書かれた注意書きが貼り出されていますし、また室内にスポーツジムのプールにあるようなアルミのベンチが数台置かれているのも、お湯でグッタリしちゃうお客さんがすぐに休んでもらうための配慮なのでしょう。上述で脱衣室にたくさんの扇風機が回っているというのも、もちろんこうした理由によるものです。

館内には「加温・加水一切なし!! 正真正銘源泉たれ流し100%」と誇らしげに記されたポスターが貼り出されていまして、夏の暑い日には加水することもあるようですが、通常は非加水であり、純然たる完全掛け流しの湯使いなんだそうです。それだからこそ、濃厚なお湯の凶暴さを実感できるわけですね。スーパー銭湯だからといって侮るなかれ、体力を奪われてヘロヘロになりたいドMな御仁にはおすすめの、無慈悲なSの女王様にこてんぱんに虐められる喜びを思う存分堪能できるお湯であります。


ナトリウム-塩化物強塩泉 50.3℃ pH7.0 320L/min(動力揚湯) 溶存物質30.72g/kg 成分総計31.03g/kg
Na+:10460mg(86.56mval%), NH4+:3.4mg, Mg++:314.8mg(4.93mval%), Ca++:615.5mg(5.84mval%), Fe++:5.9mg
Cl-:18340mg(99.12mval%), Br-:78.1mg, HCO3-:127.1mg,
H2SiO3:143.8mg, HBO2:27.8mg, CO2:307.5mg,

射水市コミュニティバスの「鏡宮北」バス停下車すぐ(利用可能路線は、JR小杉駅より新湊・小杉線、JR越中大門駅より新湊・大門線、万葉線・中新湊駅より新湊庁舎・本江線および新湊・小杉線)
富山県射水市鏡宮361  地図
0766-82-7777
ホームページ

10:00~23:00 月曜定休(祝日の場合は翌日)
600円
(上記営時間の他、早朝風呂や深夜風呂の営業設定もあり。詳しくは公式HPをご参照ください)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

湯上野温泉 つるぎふれあい館 アルプスの湯

2013年11月26日 | 富山県
 
前回まで取り上げていた「高天原温泉」からの下山後、山でかいた汗を洗い流すべく訪れたのが、上市町の中心部にある「アルプスの湯」です。こちらは町営の「上市町保健福祉総合センター」(愛称「つるぎふれあい館」)という立派な建物内部に併設されている日帰り温泉施設であり、この手の公営大規模施設に対して普段の私はあまり触手が伸びないのですが、綺麗且つ衛生的なお風呂で下山後の体をしっかり洗って帰り支度を整えたかった上、こちらではちょっと特徴的なお湯が湧いているという情報も得ましたので、今回訪問したわけです。日没の頃に現地へ到着したのですが、駐車場にはたくさんの車が止まっており、お風呂道具を小脇に抱えた人が次々に入口へと吸い込まれていました。人気の高さが窺えます。



エントランスホールは偉く立派な吹き抜けとなっていて、こんな施設に浴場があるのか疑わしくなったのですが・・・


 
辺りを見回すと、館内には入浴料金を支払う券売機が2台並んでいました。券売機の奥が浴場の入口です。
受付では入浴券および下足場のロッカーキーと引き換えに、脱衣室のロッカーキーを受け取ります。


 
脱衣室はスポーツクラブのように広々としており、明るく綺麗で清潔感があって、余裕のあるつくりなので使用時はストレスを感じません。公営施設らしく室内にはベビーベッドも用意されています。



ゆとりのあるスペースを活かして館内には様々な種類の浴槽が設けられており、内湯サイドには全身浴(主浴槽)・圧注浴・寝湯・香湯・歩行浴・水風呂・サウナが、露天サイドには源泉かけ流し槽と人工炭酸浴泉が用意されています。なお露天は浴室を挟んで前後2つに分かれており、手前側には源泉かけ流し槽が、奥側には人工炭酸浴泉が配置されています。

洗い場には広い浴室の手前右側に位置しており、コの字型の壁に沿う形で18基、その間の島に10基、計28基のシャワー付き混合水栓が取り付けられています。またこの他立って使うシャワーや、上がり湯用のステンレス槽なども設けられています。

上画像は全身浴(主浴槽)や圧注浴・寝湯の様子です。主浴槽は非常に大きく、浴槽ではなくプールかと見紛うほどです。上述のように館内には多様な浴槽があるのですが、温泉が用いられているのは露天の源泉かけ流し槽の他、内湯の全身浴・寝湯・圧注浴の計4種であり、他の浴槽では真湯が使用されています。また手前側の露天風呂では敢えて「源泉かけ流し」と称していることからも推測できるように、温泉を使っているその他の浴槽、つまり内湯の全身浴・寝湯・圧注浴では源泉を除鉄した上、加水加温循環ろ過消毒という徹底した管理が施されたお湯が供給されていまして、実際に私が入浴してみたところ、お湯は温泉の原型をほとんど留めておらず、真湯とあまり区別がつきませんでした。

何しろプールのような大きなお風呂ですので、利用客が多くてもあまり混雑しているようには感じられないのですが、とはいえお客さんの人気が集まる浴槽には偏りがあり、たとえば主浴槽や歩行浴は常時ガラガラである一方、サウナや圧注浴、そして屋外の人工炭酸風呂では、お客さんが集中しているようでした。



たくさん浴槽があるのに、私はこの手前側の露天風呂ばかり入り、他の浴槽はどんなものかを探る程度しか利用しませんでした。お風呂自体は8~10人サイズの石風呂で、頭上は東屋が覆い、周囲は壁で囲まれているため、屋外らしい開放感は全く無く、完全なる坪庭状態なのですが、この浴槽のみ上述のように「源泉かけ流し」を謳っており、事実、他の浴槽とはまったく個性を有するお湯が張られているのであります。


 
石積みの投入口から落とされるお湯は典型的な黒湯でして、浴槽内のステップに踏み込んだだけで自分の足が見えなくなってしまうほどコーヒーのような濃い色を呈しており、投入口付近では湯面が泡立っていました。放流式の湯使いを証明するかのように、湯口とは対称の位置にある排水口へ絶え間なくお湯が流下していました。

お湯を桶で汲んでみたところ、まるでお醤油を汲んだかのような感じとなり、その中央では湯の華も集まっていました。分析表を見る限りではかなり濃厚なお湯であり、特に鉄分や食塩が相当多く含まれているはずなのですが、実際に湯口のお湯を口に含んでみたところ、鉄分は殆ど感じられず、塩気もマイルドで甘塩味程度でしたが、見た目から予想できる通りにモール的な味や重曹味は明瞭に確認でき、そして砂消しゴム的な硫黄感も若干含まれているようでした。またツルスベ浴感がとても心地よく、食塩泉というより重曹泉に近いフィーリングを感じ取りました。
館内表示によれば循環ろ過は行っていない放流式の湯使いだそうですが、加温や加水は実施されているそうですから、あの塩味の薄さから想像するに、相当量の加水がなされているのではないかと思われます。なお状況に応じて塩素系薬剤も投入されるとのことが、今回はそれらしき臭いは感じられませんでした。このように分析表と実際の知覚ではかなりの開きがあるのですが、これは湯使いによるものかもしれませんし、あるいは分析後に泉質が変わっちゃったのかもしれません。
いずれにせよ濃いお湯であることに間違いはありませんから、もう少し源泉が持つ個性を活かした湯使いができれば面白いのですが…。しかしながら湯使いに関する館内表示は実に細かいので、利用者に対してきちんと情報を開示しようとする施設側の誠意はちゃんと伝わってきました。各設備のメンテナンスは良く、使い勝手も良好ですので、お湯のクオリティはともかく、気持ちよく入浴したい方にはもってこいな施設かと思われます。

上市町湯上野温泉(2号井)
ナトリウム-塩化物温泉 49.1℃ 溶存物質15299mg/kg 成分総計15365mg/kg
Na+:4936mg, NH4+:28.5mg, Mg++:59.4mg, Ca++:627.4mg, Mn++:1.6mg, Fe++:12.5mg,
Cl-:9050mg, Br-:32.6mg, I-:1.7mg, HCO3-:224.4mg,
H2SiO3:114.4mg, HBO2:80.5mg, CO2:66.0mg,
※ガスセパレーター通過後、除鉄・除マンガン処理し、次亜塩素酸を注入した後の数値
Na+:4950mg, NH4+:9.3mg, Mg++:58.9mg, Ca++:618.3mg, Mn++:0.1mg未満, Fe++:0.1未満mg,
Cl-:9050mg, Br-:31.8mg, I-:1.2mg, HCO3-:159.4mg,
H2SiO3:112.1mg, HBO2:72.8mg, CO2:98.8mg,
【温泉仕様状況】
露天風呂:供給量不足を補うため加水、入浴に適した温度に保つため加温、循環濾過使用せず、塩素系薬剤を使用する場合あり
全身浴・寝湯・圧注浴:源泉を除鉄した後に使用、供給量不足を補うため加水、入浴に適した温度に保つため加温、循環ろ過装置使用、塩素系薬剤を使用
人工炭酸風呂:源泉を除鉄した後に使用、供給量不足を補うため加水、入浴に適した温度に保つため加温、循環ろ過装置使用、塩素系薬剤を使用、炭酸ガスを高濃度溶かしこんでいる
香湯・歩行浴・打たせ湯・水風呂は温泉を使用していない

富山地方鉄道・上市駅より徒歩15分
富山県中新川郡上市町湯上野8  地図
076-473-9333
上市町公式ウェブサイト内の紹介ページ

10:00~21:00(入館20:30まで) 月曜定休(祝日の場合は翌日)
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする