※残念ながら閉業したようです。
今年の1月下旬に東根温泉の「ホテル来山荘」で日帰り入浴していまいりました。温泉街の中心部にある足湯から程近い大きな十字路の角に位置しており、当地を訪れると必ず目にしていたお宿なので、以前からどんなお風呂なのか気になっていたのでした。
帳場で日帰り入浴をお願いしますと、帳場の奥から杖をついた老嫗が現れ、体を引き摺るようにしながらお風呂へと案内してくださったのですが、帳場から浴室まで意外と距離があり、わずか数百円しか払っていないのに、大きな負担をお願いするのが心苦しくなったので、途中で「もうここで大丈夫ですよ」と申し上げ、館内掲示に従いながら自分で浴室へと向かいました。ちょうど小正月に近い時季だったためか、帳場の前は村山地方ならではの団子木飾りで彩られ、廊下の途中にしつらえられていた透かし窓も美しく、館内を綾なす和の趣きに心が和みます。
廊下に飾られたこけしにみちのく風情を感じつつ、館内の奥へ歩いて浴室へ。浴室の暖簾には山形名産のベニバナが描かれていました。そういえば、表の看板には「紅花大浴場」って書かれていましたっけ。
浴室は暖色系のタイルと大きな一枚窓のおかげで、照明が無くとも十分明るい環境です。タイルの色がベニバナをイメージしているのかな。室内には東根温泉独特の湯の香が湯気とともに充満していました。
洗い場は壁に沿って2手に分かれて配置されており、一方にはシャワー付きカランが4基、他方にはスパウトのみのカランが5基並んでいました。室内に漂う温泉のミストの影響を受け、水栓金具は黒く硫化しています。メンテナンスなさっているお宿にとっては喜ばしくないことかと思いますが、温泉に硫黄が含まれている明確な証ですので、硫黄のお湯が好きな一人の客としては、ビジュアル的に興奮させてくれる見逃せない現象であります。
洗い場の奥にはあるドアから屋外に出てみますと、期待を抱かせる日本庭園風のレイアウトとなっているのですが、飛び石を伝っていった先で待っていたのは、空っぽの露天風呂でした。ありゃ、残念。露天風呂は冬季には使われないのかな? あるいは通年で使用停止しているのかな? 仕方がないので内湯へ戻ります。
四角い浴槽はおおよそ4m×2.5mで、10人サイズといったところ。槽内のステップはタイル貼りですが、底面は大きさの異なる多様な化粧石が敷き詰められています。また縁に用いられている白い御影石には、黄土色の温泉成分が部分的に付着しており、湯船のお湯はその縁の上を絶え間なく溢れ出ていました。
シャワーを浴びて体を洗った後に、いざ湯船に入ろうとしたところ、えらく熱くて落ち着いて湯浴みできません。温度を測ってみますと、46.1℃という高温だったのでした。源泉温度が60℃以上もあって、そのお湯を加水することなく完全放流式で提供しており、また私が入室するまでは他客の利用も無かったために、入るのを躊躇うほど熱い状態となっていたのでしょう。
ついでに吐出口の温度を測ってみましたら59.4℃もありました。道理で熱いはずです。もちろん湯加減に対して無策であるはずもなく、供給されるお湯の全量を湯船に注ぐと熱すぎてしまうためか、樋でお湯の一部を逃していました。
ヘタに加水するとお湯は薄まっちゃうし、何もしなければ熱くて入れない。熱い温泉をいかに質を落とさないでお客さんに提供するか…。お宿ではいろいろと苦心なさっているのでしょうね。
このままでは入れないので、桶などで湯もみを試みたのですが、温度はなかなか下がりません。そこで加水をすべく窓の下に取り付けられていた蛇口を全開にしたのですが、それでも湯船の温度は一向に下がりません。どうしたものかと、ホースから出ているはずの水を触ったら、火傷しそうなほどの激アツで腰を抜かしそうになりました。水道じゃなくて温泉だったんですね。慌ててこの蛇口を閉め、別の蛇口から加水をしつつ、改めてしっかり掻き混ぜたところ、ようやく入浴できる程度にまで落ち着いてくれました。
湯船のお湯は暗い翠色掛かった山吹色を呈し、僅かに懸濁しているように見えます。湯中にはベージュや褐色を帯びた様々な大きさの湯の華が浮遊しており、上述のお湯を逃がす樋の内側でもこの湯の華が付着してユラユラ揺れていました。アツアツのお湯をふぅふぅ冷ましながらテイスティングしますと、ほのかな塩味と清涼感を伴うほろ苦みがあり、おおまかに表現するとアブラ臭にカテゴライズされるような匂い、具体的には樹脂的な臭いとモール臭を足して2で割ったような香りが漂ってきます。特に匂いはかなり明瞭に感じられ、東根温泉でも屈指の強さを放っているように思われます。ツルツルスベスベのとても滑らかな浴感は、後を引くほど気持ち良く、当初の熱さはむしろシャキッとした爽快感をもたらし、肌にもよく馴染んでくれます。しかも湯上がりの後は程よく粗熱が抜けて、温浴効果と爽快感が共存し、おかげで沖融とした時間とフィーリングを楽しむことができました。東根温泉の良さを十分に体感できる素敵なお風呂でした。
東根温泉協同組合13号泉源泉
含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉 66.2℃ pH8.0 溶存物質1280mg/kg 成分総計1284mg/kg
Na+:369.8mg(86.97mval%), Ca++:42.1mg(11.35mval%),
Cl-:412.8mg(63.23mval%), Br-:1.0mg, I-:0.2mg, HS-:1.6mg, S2O3--:1.0mg, SO4--:144.4mg(16.35mval%), HCO3-:204.4mg(18.20mval%),
H2SiO3:66.8mg, HBO2:20.5mg, H2S:0.2mg,
(平成17年3月14日)
館内では平成5年1月21日付の分析書が掲示されていましたが、それより新しいものを別の施設で見つけましたので、この記事では新しいデータを紹介させていただきます。
参考:平成5年1月21日付の分析書
東根温泉協同組合13号泉源泉
ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 69.7℃ pH8.1 蒸発残留物1277mg/kg
Na+:390.8mg, Ca++:48.8mg,
Cl-:469.5mg, Br-:1.1mg, I-:0.3mg, HS-:1.5mg, SO4--:172.0mg,
H2SiO3:78.6mg, HBO2:29.0mg, H2S:0.1mg,
JR奥羽本線・東根駅より徒歩18分(1.5km)
山形県東根市温泉町1-16-2 地図
0237-42-0018
※残念ながら閉業したようです。
日帰り入浴時間不明
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー見当たらず
私の好み:★★+0.5
今年の1月下旬に東根温泉の「ホテル来山荘」で日帰り入浴していまいりました。温泉街の中心部にある足湯から程近い大きな十字路の角に位置しており、当地を訪れると必ず目にしていたお宿なので、以前からどんなお風呂なのか気になっていたのでした。
帳場で日帰り入浴をお願いしますと、帳場の奥から杖をついた老嫗が現れ、体を引き摺るようにしながらお風呂へと案内してくださったのですが、帳場から浴室まで意外と距離があり、わずか数百円しか払っていないのに、大きな負担をお願いするのが心苦しくなったので、途中で「もうここで大丈夫ですよ」と申し上げ、館内掲示に従いながら自分で浴室へと向かいました。ちょうど小正月に近い時季だったためか、帳場の前は村山地方ならではの団子木飾りで彩られ、廊下の途中にしつらえられていた透かし窓も美しく、館内を綾なす和の趣きに心が和みます。
廊下に飾られたこけしにみちのく風情を感じつつ、館内の奥へ歩いて浴室へ。浴室の暖簾には山形名産のベニバナが描かれていました。そういえば、表の看板には「紅花大浴場」って書かれていましたっけ。
浴室は暖色系のタイルと大きな一枚窓のおかげで、照明が無くとも十分明るい環境です。タイルの色がベニバナをイメージしているのかな。室内には東根温泉独特の湯の香が湯気とともに充満していました。
洗い場は壁に沿って2手に分かれて配置されており、一方にはシャワー付きカランが4基、他方にはスパウトのみのカランが5基並んでいました。室内に漂う温泉のミストの影響を受け、水栓金具は黒く硫化しています。メンテナンスなさっているお宿にとっては喜ばしくないことかと思いますが、温泉に硫黄が含まれている明確な証ですので、硫黄のお湯が好きな一人の客としては、ビジュアル的に興奮させてくれる見逃せない現象であります。
洗い場の奥にはあるドアから屋外に出てみますと、期待を抱かせる日本庭園風のレイアウトとなっているのですが、飛び石を伝っていった先で待っていたのは、空っぽの露天風呂でした。ありゃ、残念。露天風呂は冬季には使われないのかな? あるいは通年で使用停止しているのかな? 仕方がないので内湯へ戻ります。
四角い浴槽はおおよそ4m×2.5mで、10人サイズといったところ。槽内のステップはタイル貼りですが、底面は大きさの異なる多様な化粧石が敷き詰められています。また縁に用いられている白い御影石には、黄土色の温泉成分が部分的に付着しており、湯船のお湯はその縁の上を絶え間なく溢れ出ていました。
シャワーを浴びて体を洗った後に、いざ湯船に入ろうとしたところ、えらく熱くて落ち着いて湯浴みできません。温度を測ってみますと、46.1℃という高温だったのでした。源泉温度が60℃以上もあって、そのお湯を加水することなく完全放流式で提供しており、また私が入室するまでは他客の利用も無かったために、入るのを躊躇うほど熱い状態となっていたのでしょう。
ついでに吐出口の温度を測ってみましたら59.4℃もありました。道理で熱いはずです。もちろん湯加減に対して無策であるはずもなく、供給されるお湯の全量を湯船に注ぐと熱すぎてしまうためか、樋でお湯の一部を逃していました。
ヘタに加水するとお湯は薄まっちゃうし、何もしなければ熱くて入れない。熱い温泉をいかに質を落とさないでお客さんに提供するか…。お宿ではいろいろと苦心なさっているのでしょうね。
このままでは入れないので、桶などで湯もみを試みたのですが、温度はなかなか下がりません。そこで加水をすべく窓の下に取り付けられていた蛇口を全開にしたのですが、それでも湯船の温度は一向に下がりません。どうしたものかと、ホースから出ているはずの水を触ったら、火傷しそうなほどの激アツで腰を抜かしそうになりました。水道じゃなくて温泉だったんですね。慌ててこの蛇口を閉め、別の蛇口から加水をしつつ、改めてしっかり掻き混ぜたところ、ようやく入浴できる程度にまで落ち着いてくれました。
湯船のお湯は暗い翠色掛かった山吹色を呈し、僅かに懸濁しているように見えます。湯中にはベージュや褐色を帯びた様々な大きさの湯の華が浮遊しており、上述のお湯を逃がす樋の内側でもこの湯の華が付着してユラユラ揺れていました。アツアツのお湯をふぅふぅ冷ましながらテイスティングしますと、ほのかな塩味と清涼感を伴うほろ苦みがあり、おおまかに表現するとアブラ臭にカテゴライズされるような匂い、具体的には樹脂的な臭いとモール臭を足して2で割ったような香りが漂ってきます。特に匂いはかなり明瞭に感じられ、東根温泉でも屈指の強さを放っているように思われます。ツルツルスベスベのとても滑らかな浴感は、後を引くほど気持ち良く、当初の熱さはむしろシャキッとした爽快感をもたらし、肌にもよく馴染んでくれます。しかも湯上がりの後は程よく粗熱が抜けて、温浴効果と爽快感が共存し、おかげで沖融とした時間とフィーリングを楽しむことができました。東根温泉の良さを十分に体感できる素敵なお風呂でした。
東根温泉協同組合13号泉源泉
含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉 66.2℃ pH8.0 溶存物質1280mg/kg 成分総計1284mg/kg
Na+:369.8mg(86.97mval%), Ca++:42.1mg(11.35mval%),
Cl-:412.8mg(63.23mval%), Br-:1.0mg, I-:0.2mg, HS-:1.6mg, S2O3--:1.0mg, SO4--:144.4mg(16.35mval%), HCO3-:204.4mg(18.20mval%),
H2SiO3:66.8mg, HBO2:20.5mg, H2S:0.2mg,
(平成17年3月14日)
館内では平成5年1月21日付の分析書が掲示されていましたが、それより新しいものを別の施設で見つけましたので、この記事では新しいデータを紹介させていただきます。
参考:平成5年1月21日付の分析書
東根温泉協同組合13号泉源泉
ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 69.7℃ pH8.1 蒸発残留物1277mg/kg
Na+:390.8mg, Ca++:48.8mg,
Cl-:469.5mg, Br-:1.1mg, I-:0.3mg, HS-:1.5mg, SO4--:172.0mg,
H2SiO3:78.6mg, HBO2:29.0mg, H2S:0.1mg,
JR奥羽本線・東根駅より徒歩18分(1.5km)
山形県東根市温泉町1-16-2 地図
0237-42-0018
※残念ながら閉業したようです。
日帰り入浴時間不明
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー見当たらず
私の好み:★★+0.5