ハンガリーはヨーロッパ屈指の温泉大国であり、至る所で温泉が湧いています。なかでも首都ブダペストは100を超す源泉と50近い浴場が存在している温泉都市であります。ハンガリーの温泉の歴史はとても古く、ブダペストが古代ローマ人に征服された約2000年前まで遡るそうです。その後16世紀になるとトルコ支配時代がやってきて、トルコ式の入浴スタイルが普及し、社交場として温泉が発展。1937年国際沿療学会議でブタペストは国際治療温泉地に認定され、第二次大戦後には更に源泉の開発が進み、ブダペスト市民に広く愛されるようになっています。
ペスト側の街の中心から北東にある市民公園には、温浴施設としてヨーロッパで最大規模を誇るセーチェニ温泉があります。地下鉄M1線Szechenyi furdo駅を出てすぐ目の前なので、迷うことはないでしょう。ローマの宮殿を模して建造されたという黄色い風格のある建物は、当地がまだオーストリア・ハンガリー二重帝国だった1913年(プール等は第一次大戦後の1923年)に建てられたそうです。
入口は何箇所かあって温泉入口とプール入口とに分かれているようなのですが、どこから入ってよいか迷った挙句、私は通りに面した正面入口から入ってみました。どうやらここはプール入口のようで、平日だというのに学生連れを中心に多くの人で賑わっていました。玄関ホールの左右には窓口があり、まずここで料金を支払い、カードを受け取ります。そしてゲートにあるタッチセンサーにカードをかざし(これにより入場時間を記録しているようです)、回転ゲートを回して中へと入ります。ゲートを通過してすぐ目の前にずらっとキャビン(個室の更衣室)が並んでいますが、私の料金にはキャビン使用料が含まれていないので、階段を下りて半地下のロッカールームへと向かいます。階段を下りて右が男、左が女となっていました。ロッカーは空いているところを自由に使えます。ロッカーに鍵をかける際は、受付で貰ったカードをロッカー扉の裏にある挿入口に差し込むと鍵が使える状態になります。
プール入口
温泉入口
着替えを済ませて、いざ温泉プールへ。プールは3つ。中央のものは長方形の大きなプールで、夏は26℃、冬は28℃に設定されており、みなさんクロールや平泳ぎで真剣に泳いでいらっしゃいます。また、それを挟むように左右両サイドには温かい温泉水がはられた半円形の槽があり、こちらでは老若男女を問わず多くの人が思いおもいに温泉と戯れています。表示によれば通年37~38℃に設定されているそうですが、実感としてはもうすこしぬるいかもしれません。でも長く浸かるにはちょうど良い湯加減で、広々とした温泉にじっくり身を沈めたら、旅の疲れも一瞬で吹っ飛んでしまいました。
中央にある長方形のプール
右側の温浴槽。打たせ湯が人気です。
プールサイドではチェスに興じるおじさんの姿も
入れる槽はこれだけかと思いきや、プールを挟んで入口と反対側に立つ建物をよく見ると、小さな出入口から水着姿の人が次々に出たり入ったりしています。マジャル語で何やら書いてありますが全く意味がわからないまま恐る恐る建物の中に入ってみると、内部にはいろんな浴槽があるではありませんか。それぞれ34℃から38℃の間で湯温が設定されており、ただ浸かるだけの槽もあれば、流水槽もあり、インストラクターに従ってお湯の中で運動をする槽もあり、またサウナもあり、実にバラエティーに富んでいます。特に中央の浴槽は優美な宮殿様式で、窓が広くとられてとても明るく、38℃設定の槽もあるので熱いお風呂を好む日本人でも満足できるかと思います。尚、文頭の方で入場口は温泉とプールに分かれていると書きましたが、このように内部でつながっているので、どちらから入っても問題ないようです。
内湯の中央にある浴槽で38℃。
こちらの半円形の浴槽は34℃。窓から日が差して明るく気持ちよい
インストラクターに従ってエクササイズをする槽もあります
36℃の浴槽。じっくり浸かれます。付近にはサウナも。
温泉水は薄っすら緑色を帯びた透明で、若干濁っているようにも見えます。シャワーから出てくるお湯も温泉だったので口に含んでみると、甘いような味が感じられ、また鉱物油のような微かな匂いも漂ってきました。いろんな湯温の槽を梯子して、それぞれの良さを楽しみました。
正直なところ、悲しいかな日本の熱いお湯に慣れ親しんでしまった私の体は38℃のお湯でさえも聊か物足りなさを感じてしまったのですが、日本のように42℃以上の湯温ですと、高い温度に体が耐え切れず長湯できにくい、あるいは長湯すると体の負担になってしまう傾向にあります。しかし38℃前後ならば副交感神経が働いて全身にリラックス効果がもたらされるだけでなく、じっくりと長湯できるので温泉の効能を受けることができるわけで、この温泉のように熱くても38℃に設定されているのは実に合理的といえそうです。
温泉・プールから出場する際は、出口の機械にカードを挿入すると返金レシートが印刷されて出てくるので、これを受け取って窓口に出すと、入場から2時間以内に出場していれば300フォリントが返金されます。
地下鉄の駅の目の前で交通の便がよく、しかも多くの人で賑わっていてとても入りやすいので、日本の温泉とは全く違う大規模で多様な異国の温泉を楽しむにはもってこいの施設かと思います。
温泉分析表です
地下鉄M1線Szechenyi furdo駅下車すぐ
所在地:Allatkerti krt. 11. 地図
TEL:(1)363-3210
温泉 月~金 6:00~19:00、土 6:00~13:00、日曜定休
プール 6:00~22:00
3000フォリント(2時間)
2時間以内の出場で300フォリントが返金
※ハンガリーは現在結構なペースでインフレが進んでいますので、必ずしもこの金額であるとは限りません
ロッカールームの廊下にドライヤーあり
水着着用・混浴
構内は広いので、ビーチサンダルを持参することをおすすめします
私の好み:★★★