た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

老人たちのゆくえ

2005年09月22日 | essay
 先日、久しぶりに背の曲がった老人をみた。胴体が地面とほとんど平行である。がに股の足をゆっくりと運びながらコンビニエンスストアに入り、煤けたように黒いビニル袋から小銭を取り出して何かを買っていった。

 そう言えば最近、背の曲がった老人をほとんど見ていない。その事実にふと思い当たった。そうだ。昔はもっといたはずだ。バス停にも、民家の軒先にも、スーパーのように人の集まる所にも。昔の年寄りは皆、トレードマークのように背が曲がり、それでも何の差し障りがないかのように大道を闊歩していた。

 それなのに今、なぜ。老人たちの腰が昔よりも丈夫になったのか? まさか。背筋力は年々低下していると新聞に書いてあったけど。それは小学生のことだっけ? だとすると現代の老人たちは文字通り「若い」のか。それは本当か? それとも。

 それとも、腰の曲がったじいさんばあさんは、現代でもいるにはいるが、別の場所に──たとえば老人ホームのような施設に──隔離されているのか。 ただそれだけなのか・・・。

 そう考えると、すこしぞっとした。もちろん、そういうことはないのだろう。
コメント
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