箱を集め続けている男と出会った。
「私はね、箱を見ているだけで安心するんですよ」
「どんな箱でもいいんです。箱でありさえすれば───でも蓋がなくちゃいけません。蓋が閉じて中が見えなくなって初めて、私の望む箱なんです。とても安心するんです。自分の隠れ家を見つけたときの喜びと申しましょうか。箱にほんとに隠れるわけにはいきません。そんな大きな箱はいりません。小さくていいんです。手の平サイズでも十分です。外から見えない空間が中にある。その暗闇を想像するだけで安心するんです。心が落ち着くんです。そういう箱の外側を手で撫でるとね、とても幸せな気分になるんです。ほら、こんな風に撫でるんです」
「私はね、箱を見ているだけで安心するんですよ」
「どんな箱でもいいんです。箱でありさえすれば───でも蓋がなくちゃいけません。蓋が閉じて中が見えなくなって初めて、私の望む箱なんです。とても安心するんです。自分の隠れ家を見つけたときの喜びと申しましょうか。箱にほんとに隠れるわけにはいきません。そんな大きな箱はいりません。小さくていいんです。手の平サイズでも十分です。外から見えない空間が中にある。その暗闇を想像するだけで安心するんです。心が落ち着くんです。そういう箱の外側を手で撫でるとね、とても幸せな気分になるんです。ほら、こんな風に撫でるんです」