た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

断片No.1

2013年08月29日 | 断片


 対面車両がすれ違いに困るほどの狭い路地ではあったが、秋の西日のいっぱいに差す中、五人の警官と、ぴかぴかの手錠を掛けられた一人の男が囲まれて歩む姿は、なかなかに荘厳であった。
 下宿屋の老婆は、竹ぼうきを杖代わりにあんぐりと口を開けて、その行進を眺めた。何しろ、彼女の人生でこれだけの数の警官を間近に見たことがなかったからだ。
 「捕まったんだよ! やれやれ、また何をしでかしたのさ!」
 彼女の話相手はおそらく足元を徘徊している三毛猫と思われたが、もちろん三毛猫は主人の呟きに答える気など毛頭ない。
 
コメント
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