先日、美ケ原温泉旅館組合主催のワイン巡りとやらに顔を出した。千五百円で、旅館を六軒回り、それぞれにワイン一杯とつまみをいただくというものである。これに参加賞のつもりか箸までついてくるから、随分お得である。地元の温泉宿なんて普段利用する機会がないから、門の内側をあれこれ覗けるだけでも面白い。つまみもそれぞれの宿が趣向を凝らしていて、これまた面白い。旅館と旅館の間をけっこう歩くが、ほろ酔い加減だと路地を抜ける風も心地よく、これはまたこれで気持ちよい。そんなに楽しいものともつゆ知らず、夕方残り一時間くらいになってから参加したので、元を取ろうと慌てて歩いて汗を掻いたのだけは後悔した。
カメラを忘れたので、写真はない。腕時計まで忘れたので、時間がわからなくて困った。気楽なものである。だが参加している面々を見ると、みんな似た様な気楽な人種であった。そのような人種を呼ぶ催しものであったと言える。