二人は居間に入った。私も女たちのあとについてドアの閉まる前に滑り込む。死体のある部屋に入るのはやはり気が滅入る。死体と言っても、何時間か前まで自分の持ち物だったわけだから余計に気が滅入る。まるで使い古した自分の下着を公衆の面前に晒されているようなやりきれなさがある。
私の下着はやっぱり朝と同じ蛸踊りのような格好でソファーの上にあった。
「ま、ひどい」
「ひどい姿でしょ」
「奥様。これは天罰ですよ」
大仁田はトカゲの尻尾のような眉を吊り上げ、目をぎらぎらさせて美咲を見つめながら、それこそ罰当たりなことを言う。
「天罰です。死因が何でしょうと。ええ、そうですよ奥様。死因が何でしょうと、ほんとにそうでございますよ。はっきり言います。天罰です。奥様にひどいことをしてきた天罰ですよ。人をひどく扱う人間はひどい死に顔をするもんなんです」
さすがに腹の立った私は思わず大仁田の襟首をつかもうとしたが、当然手は空を切るだけである。
私の一人相撲をよそに、女二人はまじまじと見詰め合っている。
「天罰かねえ」
「天罰ですよ」
「お前、心当たりがあるのかえ」
「天罰のですか? そりゃあるでしょう」
「いえ違うわよ。死因のよ」
(つづく)
私の下着はやっぱり朝と同じ蛸踊りのような格好でソファーの上にあった。
「ま、ひどい」
「ひどい姿でしょ」
「奥様。これは天罰ですよ」
大仁田はトカゲの尻尾のような眉を吊り上げ、目をぎらぎらさせて美咲を見つめながら、それこそ罰当たりなことを言う。
「天罰です。死因が何でしょうと。ええ、そうですよ奥様。死因が何でしょうと、ほんとにそうでございますよ。はっきり言います。天罰です。奥様にひどいことをしてきた天罰ですよ。人をひどく扱う人間はひどい死に顔をするもんなんです」
さすがに腹の立った私は思わず大仁田の襟首をつかもうとしたが、当然手は空を切るだけである。
私の一人相撲をよそに、女二人はまじまじと見詰め合っている。
「天罰かねえ」
「天罰ですよ」
「お前、心当たりがあるのかえ」
「天罰のですか? そりゃあるでしょう」
「いえ違うわよ。死因のよ」
(つづく)
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