街は今日も彼を無視した。
信号待ちをしても、同じ信号を待つ人々の誰も彼に目を合わせようとしなかった。あらゆる建物は不景気に顔をしかめ、異物の混入を拒み硬く口を閉ざした。彼には行きたい場所がどこにもなかった。行ける場所はなおさらだった。
もちろんすべて、彼の妄想である。貧困にあえぎ孤独にふさぎ込む日々がもう何年も続いているせいであった。こんな冷たい街なんてうんざりだと、何百回思ったろうか。だが同時に、こんな風によそ者の自分を無視してくれるこの街の優しさを彼は愛した。
彼はいつも同じカーキ色のシャツを着た。もともと何色だったかは正確にはわからない。自転車にまたがり、ハンドルに両腕と顎を乗せ、通行人のいないところを睨んだ。自転車は彼に許された唯一の贅沢であった。自転車に乗れば、軽々とこの不機嫌な街を横断することができる。ペダルを漕ぎ地に足を付けなければ、少し高いところからこの軽蔑する街を見下ろせる。だが実際には、ハンドルに両腕と顎を乗せたまま、なかなか漕ぎ出そうとしなかった。信号の色が二度三度と変わっても、同じ姿勢で同じ交差点に留まっていることもしばしばだった。
ようやく気怠そうに自転車を漕ぎ始めるとき、街路樹に向かってよく痰を吐いた。彼はもう六十に手が届こうとしていたのだ。
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