紅茶を入れてから、しばらくその香りをかぐ。
(あいつには一度はっきりしたことを言わなきゃいかんな)
洗い物を片付けたばかりの台所に佇んだまま紅茶を一口啜り、カップを手にしたままCDをかける。
主題のないジャズが流れる。音量を心持ち絞る。
(人間性の問題だから。あいつにははっきり言ってやらなくちゃ)
時計の秒針を十二秒数える。そのまま一時間だって数え続けてもいい気分だ。
私には自由がある。この、秋の夜長のための。
紅茶を飲み干す。苦い滓(おり)が喉を通る。手早くカップを湯ですすぐ。
少し自分は寂しいのだと自覚する。
(あいつは昔もっと素直でいいやつだと思っていたが、でもおれだってそう思われているかもしれないからな!)
私は台所の窓を開け放った。
虫の音。くしゃみが出そうなほど涼しく乾燥した空気が頬を撫でた。
私は目を閉じた。
あいつにはまたメールでも出そう。人間性について書く必要は、今はない。うん、人間性について人に説教する必要なんて、今も、これからも、当分ないんだ。
(あいつには一度はっきりしたことを言わなきゃいかんな)
洗い物を片付けたばかりの台所に佇んだまま紅茶を一口啜り、カップを手にしたままCDをかける。
主題のないジャズが流れる。音量を心持ち絞る。
(人間性の問題だから。あいつにははっきり言ってやらなくちゃ)
時計の秒針を十二秒数える。そのまま一時間だって数え続けてもいい気分だ。
私には自由がある。この、秋の夜長のための。
紅茶を飲み干す。苦い滓(おり)が喉を通る。手早くカップを湯ですすぐ。
少し自分は寂しいのだと自覚する。
(あいつは昔もっと素直でいいやつだと思っていたが、でもおれだってそう思われているかもしれないからな!)
私は台所の窓を開け放った。
虫の音。くしゃみが出そうなほど涼しく乾燥した空気が頬を撫でた。
私は目を閉じた。
あいつにはまたメールでも出そう。人間性について書く必要は、今はない。うん、人間性について人に説教する必要なんて、今も、これからも、当分ないんだ。