兄嫁さんの台湾話を聞いていると、クーフンという街
に行ったのだが、そこが中々良かったと言う。
漢字にすると「九份」。
で、一体そこはどういう所かと聞くと、映画の「何と
か夜情」の舞台で有名となった所だと言う。
何とか夜情?
そんな映画あったか、それなりに有名な映画なはずだ
からと思い、「悲情城市」のこと?と聞くと、そうそう
ということになった。
台湾と言ったら、「ホウシャオシェン」か「エドワード
ヤン」が代表的監督だ。
二人を比べれば、知名度ではホウシャオシェン。
そして彼の映画で、印象的な街が出てくる映画となる
と、真っ先に、「悲情城市」の狭い坂の両側にぎっし
り店の並ぶあのシーンが思い浮かぶ。
果たして、それが「九份」だったのだ。
あの映画で、観光名所になっているとは知らなかった。
尾道のような地形で、日本統治下に発展したらしく、
日本人からしてもどこか懐かしさを感じる、独特の雰
囲気を持った街ということだ。
同じ坂道では、尾道が舞台の映画「転校生」なんかよ
り、成瀬巳喜男の「浮雲」に出てくる伊香保温泉のあ
の坂道の方が近いと、「悲情城市」を見た時にも感じ
たが、監督の質を考えても「伊香保温泉」と「九份」
の方が、映像としての力が同質な感じがする。
要するに、どちらの映画もそのシーンがすばらしいと
いうことだ。
例えば、転校生」で尾道が人気化するのは解るが、
「悲情城市」であの街が人気化するのは、今ひとつ理
解できないと言うか不思議な感じがする。
何故かと言うと、「悲情城市」が一般受けする映画と
は思えないから。
台湾が、日本の統治下から解放され、いよいよ独立か
というところで、中国本国人(国民党)からの弾圧を
受ける。
映画は、その2.28事件を背景に、翻弄され離散す
る一家を描いていくのだが、日本ではごく一部の人し
か見てないと思うが、台湾ではそんなことなかったの
だろうか。
自国の歴史的大事件が題材になっていると言う点で、
それなりに話題になったということなのだろう。
いずれにしろ、「悲情城市」のインパクトが、日本と
は比べ物にならないほど大きかったであろうことは、
まず間違いない。
そして、個人的にも、「九份」にはちょっと行ってみ
いと思った。