映画少年改めゲロゲロ少年Yが、貸したDVD、ブレッ
ソンの「湖のランスロ」を返しに来た。
そして第一声。
「やっぱり、ブレッソン最高ですね、ひょっとしたら
これが自分のなかでは一番かもしれないです」(Y)
随分の入れ込みようだ。
しかし、こちらとしては、また始まったか、である。
「兎に角、音が凄いですね」(Y)
何の話かというと、騎士がかぶる甲冑などが触れ合う
音であったり、槍がぶつかる音をさしているのだ。
ここで、この映画の大まかな内容を説明すると、題材
は「アーサー王の聖杯伝説」、モンティ.パイソンの
「ホーリーグレイル」と同じだ。
あの映画の中にも「ランスロ」は出てくるが、英語な
ので「ランスロット」となっている。
実は、お笑い映画の中では、一番好きかもしれない。
「ホーリーグレイル」はふざけた映画で、常識人が見
たらご立腹であろうが、こちらの「湖のランスロ」は
そういうことは絶対ない。
しかし、わけ分からないとなる可能性は大である。
この映画は、聖杯を探しに行った騎士の冒険物語とか
そういうものではなく、聖杯が見つからなかったその
後の話が主で、しかも、物語としての展開は判り辛く、
いつものことながら「劇的」という演出は一切なく、
唐突に思える画面展開の連続で、スカッとするとかすっ
きりするというものとは全く無縁である。
反娯楽映画であることは間違いない。
ランスロと王妃との不倫関係、王に対する裏切り、騎
士同士の戦い、一応一般的な映画の娯楽要素はあるの
だが、それが娯楽性をまとうような演出をしていない
ので、結果、娯楽映画とは無縁のものとなっているの
だが、それでは何があるのかというと、断片化された
部分であり、誇張化された音である。
Yが言った、「音が凄いですね」というのも確かに当っ
ていることは当っているのだ。
「リアルな映画というのは、むしろこういうのかも知
れないですよ」(Y)
「そのリアルってどういう意味で使ってるの」(私)
「つまり、いかにも本当らしい演出で本当の出来事の
ような内容で、作り物という事実を隠蔽するような映
画とは違うという意味で」(Y)
何だか、またわけの分からないことを言い出した。
「つまり、映画は作り物であるという事実を前面に押
し出し、いかにも全てを描いているという錯覚も与え
ず、敢えて部分を描くことによって、描かれてない全
体、世界を描くというブレッソンの姿勢あってこそ、
真にリアルなものは描けるという意味か」(私)
意訳もここまで来ると芸である。
「そういうことですよ」(Y)
と、とりあえずまとめようというこちらの思惑で何と
なく落ち着いたが、一見チープな史劇のような「湖の
ランスロ」、そのチープな外見とは対照的に、視線を
ぐらつかせる、脱臼させる、刺激に満ちた映画である
ことは間違いないのである。