昨日の続き。
「コクトーズカフェ」というくらいだから、「コクトー」
が好きなのだろうとは誰しも思うところだ。
店は、現在行われている「平成中村座」の「まつもと市
民芸術館」ももう直ぐという場所に位置している。
周辺の雰囲気は、もう少し歌舞伎一色かと思ったが、
普段どおりの静かな平日の昼下がりであった。
店内には、数組の先客がいた。
思ったより、ゆったりした空間である。
それは、むき出しの壁をそのまま使ったロフト風とい
うことと、広さの割りにテーブルが少ないという理由
による。
雰囲気的には、コクトー風である。
というのはこじ付けで、吉祥寺や下北沢辺りにありそ
うな、地元の芸術志向の人間が集まってきそうな店で
ある。
いい雰囲気ではある。
しかし、店内にコクトーを思わすものは全く見つけら
れなかった。
コクトーのポスターでも貼ってあれば、なるほどねと
いうことになるのだが。
営業形態は、カフェというよりレストランのようだ。
イタリアン的フレンチ的料理という、最近良く見かけ
る「いいとこ取り」或いは「どっちつかず」の料理を
提供する店であるようだ。
個人的には、どちらかに徹底した料理を望むのだが、
そういう店は特に田舎では難しい。
「カフェ飯」という分類でみれば、別になんでもあり
だが。
チキンのランチを頼む。
オードブルのプレートとバターライスつきチキンのソ
テーがその内容。
オードブルには、スペイン風オムレツやラタトゥイユ
味スープがあったりで、予想通りのフュージョンであっ
た。
量的には結構なもの。
味のほうは、可もなく不可もなくというところか。
あまりの暑さと、脱水気味もあり、ハイネケンの生ビー
ルなども頼んでしまった。
昼ビールと言うのは、背徳的快感である。
と食べ終わって、外の様子を窺うと、どうも空模様が
怪しい。
傘など用意していないので、早めに駅に行かなくては、
と会計をささっと済ませ駅に向かっていくと、ポツリ
と雨粒が。
しかし、まだ本降りではない。
駅に到着して、次の電車の時刻を確認すると、まだ30
分ほどある。
そこで駅ビルの本屋に行く。
本屋で本を買うという機会は、殆どが今回のような機
会だけである。
何か薄い文庫本(厚いのは現況では遠慮したい)はな
いかと探す。
前回このケースでは、カフカの「変身」を買った。
しかし、その時はたまたま「変身」だけは読んでなく
て、調度いいということになったのだ。
因みに、映画と比較するために再度読み出した「アメ
リカ」は無事読み終わった。
薄くて、しかも興味を引くような本は中々見つけられ
ない。
小説は、とりあえず要らない。
まず厚さだけで選考する。
すると厚さといい内容といい、最適なものが見つかっ
た。
それは、ランボーの「地獄の季節」。
スタローンではなく詩人のランボーだ。
詩だったら、飛び飛びでも関係ないし、いつでも取り
出せる薄さだし、有名な割りに読んだこともないしと
正にうってつけの本であった。
当然、値段もお手頃。
というわけで、今現在、ランボーの「地獄の季節」が
いつでも出番とばかりに、バッグの中で控えている。
その後、雨は本格的になり、結局ずぶぬれ状態で家ま
で歩くこととなった(走りたいところだったが、走る
余力はなかった)。