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ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】摩擦の話

2007年11月23日 22時01分38秒 | 読書記録2007
摩擦の話, 曾田範宗, 岩波新書(青版)791(G33), 1971年
・なぜ人間は地面を踏みしめて歩くことができるのか? これは決して自明なことではありません。靴の裏側が地面にひっかかるから? ひっかかるとはどういう状態なのか? 何と何がどのようにひっかかっているのか? 電子顕微鏡で見てみるとどうなるのか? こう突き詰めていくといろいろな謎が浮かんできます。『摩擦』の歴史とはその謎との格闘の歴史であり、本書では16世紀のレオナルド・ダ・ヴィンチの時代まで遡り、現代に至るまでを概観します。この他、『日常身辺の摩擦現象』、『摩擦のメカニズム』など、豊富な図を使い平易な言葉で語った『摩擦』尽くしの内容です。数式も結構出てきますが、苦手な人は読み飛ばしても、内容の理解にはそう差し障りはありません。
・人が普段気にかけないテーマに光をあて、専門家ではない者にも「ほうナルホド、これはおもしろい」と思わせる、学問の入口である新書としてのお手本のような本です。
・バイオリンをはじめとする弦楽器のペグの部分。ペグの穴に弦の先をちょっといれてクルクル二~三度回すだけで、ペグの表面はツルツルにもかかわらず、弦がしっかりとまるのは不思議だったのですが、これにも摩擦(オイラーの原理)が絡んでいたのですねぇ。
・「第一は、静摩擦力でも動摩擦力でも、一般に摩擦力は物の重さ(正確に表現すると摩擦面に働く垂直力)に比例するということである。」p.9
・「第二の大切な性質は、動摩擦力(したがって動摩擦係数)が静摩擦力(静摩擦係数)よりも小さいということである。」p.10
・「すなわちこの実験から、重さがおなじであれば、相手の面と接触する摩擦面積はどうであっても摩擦力(したがって摩擦係数)は変らない、というおもしろい摩擦の性質が明らかにされたのである。」p.12
・「このことから、おなじ重さでも、接触面(摩擦面)の材質かかわると、摩擦力(したがって摩擦係数)は大幅にちがってあらわれることがわかる。」p.13
・「さてこれまでの実験でわかったいくつかの摩擦の性質を整理して、きちんと箇条書きにしてみよう。それは次のようになる。
(1) 摩擦力は摩擦面に働く垂直力に比例し、見かけの接触面積の大小には関係しない
(2) 摩擦力(動摩擦の場合)はすべり速度の大小には関係しない
(3) 静摩擦力は動摩擦力よりも大きい

 この三つの実験法則((3)は除くこともある)は、この法則の確立にもっとも功績のあった十八世紀のフランスの実験物理学者で、同時に工学者でもあったクーロン(Charles Augustin de Coulomb, 1736-1806)の名をとってクーロンの法則、またはかれの約百年前、この法則の存在をほぼ確認し、クーロンの研究の基礎をつくったおなじフランスの物理学者・工学者アモントン(Guillaume Amontons, 1663-1705)の名をとってアモントンの法則、さらに両人の名前を連らねて、アモントン-クーロンの法則とよばれており、その確立は摩擦の学問や技術の発展の歴史の上では画期的意味をもつものである。
」p.14
・「こうしてレオナルドは、クーロンの法則の内容をなす主要規定、すなわち摩擦力と垂直力との比例関係、摩擦力が接触面積に関係しないことの二つをすでに確立していたのである。」p.27
・「その多くは「車輪の直径は大きいほうが軽く動くか、小さいほうが軽く動くか」という一見きわめて幼稚な課題なのである。実験も容易である。ところがやってみると、条件によって大きいほうが得だったり損だったりして、一般的でかつ統一的な関係はまだよくわかっていないのである。」p.64
・「万有引力が質量のあるものの存在そのものに密着した自然現象であるように、摩擦は質量のあるものどうしの接触そのものに密着した自然現象なのである。」p.67
・「昭和十年にわたくしは東大の航空研究所に奉職し、はじめて、そして亡くなられるまでのきわめて短い期間だったが(寺田寅彦)先生の面識をえ、食堂などでお話をきく機会ができた。そのとき摩擦はおもしろい問題だ、いいテーマだからよく勉強しろ、という意味の激励をうけたことを覚えている。」p.68
・「オイラーの原理というのは、まるい物にまきつけたロープやベルトの一端を軽い力で引っぱっているとき、多端を引っぱってロープやベルトをすべらそうとすると、非常に大きな力が必要になることの原理である。」p.78
・「われわれの現在もっている工作技術では完全な幾何学的平面というものはつくりえず、かならず凹凸が存在する(図IV-1)。現在の工作技術をもってしては、最高の仕上げ面でも凹凸の高さは10-4mm前後であろう。」p.123
・「凹凸説とそのアンチテーゼとしての凝着説は五十年の論争を重ねたが、ようやくジンテーゼとしての近代的な凝着説が凹凸説を包含して完成に近づきつつあるとみてよい。」p.153
・「凝着説にせよ凹凸説にせよ、それらを統一的にとらえる接点は、要するに摩擦面の変形と磨耗なのであり、わたくしが「摩擦と磨耗とは表裏一体」といったのはこの意味だったのである。」p.179
・「一言にしていえば、「磨耗をともなわない摩擦はない」ということが非常に大切な現実の摩擦の概念だったのである。」p.180
・「しかし遺憾ながら実際には摩擦ブレーキの制動力は、一回ごとにその平均値の16パーセントくらいは大きくも小さくもなるのである。」p.201
・「われわれのつくりだしたスピードはわれわれがとめねばならない。しかしはたして思うようにとめることができるだろうか。残念ながらそれはできていないのである。」p.202
・「近年摩擦の研究が非常に進んで、摩擦のメカニズムもかなり明らかになってきた。摩擦の大きい小さいのメカニズムも、摩擦熱の発生機構から摩擦する表面の温度上昇の様子もだんだんわかってきて、われわれの知識もかなり豊かになった。そろそろこの摩擦という悍馬を手なづけることもできそうである。手なづけるということは、摩擦を小さくしておとなしくさせるのも一つだが、せっかくの悍馬だから悍馬のままその荒っぽいところを利用するのがいちばんの妙法だ。」p.208
・「本書の執筆にあたって、わたくしは読者にこのほとんど忘れられている摩擦という現象を身辺に感じとり、また親しみをもってほしいと願った。」p.213

?ジンテーゼ(ドイツSynthese) 1 論理学で、演繹的な推理法。  2 哲学で、思想の各要素を論理的に結合して統一すること、およびその結果。カントでは、直観と悟性の形式によって結合する先天的総合と、経験判断のような経験的総合とがある。弁証法では、新しい概念によって、二つの対立概念を統合すること。
コメント (2)
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【食】カフェ アルテ [喫茶@美唄]

2007年11月23日 07時23分00秒 | 外食記録2007
カフェ アルテ(Caffi Arte) [喫茶@美唄][アルテピアッツァ美唄]
2007.11.17(土)12:20入店(初)
注文 エスプレッソ 500円

・アルテピアッツァ美唄内に、去年か今年か、わりと最近出来た喫茶店です。『森の広場の音楽会』開演前の空き時間にちょっと寄ってきました。
・丘の中腹にある建物はまだ新しく木の香りがして、店内の片隅には薪ストーブがついていました。窓からの景色も良く落ち着いた雰囲気です。コーヒーも美味しい。
・建物の半分は喫茶店で、残り半分は美術作品をつくるための工房(?)になっています。ちょっと覗いてみると、木彫りの作品を作っている方が作業中でした。先日は、美唄弦楽アンサンブルの練習でも使わせてもらいました。
・現在飲み物のみのメニューですが、軽食メニューも欲しいところです。
・アルテピアッツァ内に飲み物の自動販売機はありません。散策途中の水分補給はコチラでどうぞ~♪
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