臨機応答・変問自在, 森博嗣, 集英社新書 0088G, 2001年
・売れっ子推理作家でありながら、某国立大学工学部助教授の助教授の肩書きを持つ著者の、大学生活の一面を垣間見れる書。授業では学生に質問をさせることで出席をとり、質問への回答をプリントで配布することを長年続けており、その中から、編集者(集英社)の独断で選りすぐったQ&A集。そこからは著者の "超合理的" とも言えるような特異な人物像が浮かび上がる。
・著者が建築関連の研究をしていることを始めて知った。
・数万にのぼる質問からの選りすぐりであれば、もっとウムム…と唸ってしまうような質問がゴロゴロあるかと思いましたが、意外と平凡です。そもそも受け付けているのは授業に関する質問で、オモシロ質問を求めている訳ではないので当たり前かもしれませんが。
・日本語の乱れを指摘する解答が目立つ。文筆家の性?
・「人は、どう答えるかではなく、何を問うかで評価される。 たとえば、就職の面接で、「何か質問はありませんか?」と面接員に尋ねられたとき、的確な質問ができるかどうか、そこで評価される。」p.13
・「結局のところ、教育とは、受け手に「学んでやろう」「吸収してやろう」といった積極性が存在しないかぎり、ほとんど無駄だと断言して良い。教育そのものが成立しない、といっても過言ではない。」p.14
・「⑤自分で解決しなければ意味がないことを気づかせる。 ようは⑤が最も重要だ。「そんなことは自分で調べろ」「自分で考えろ」という内容をそれとなく示唆する。」p.19
・「一度も、小説など書いた経験がなかった人間なのに、ある日突然、キーボードに向かって、いきなり書きだしたのだ。」p.21
・「Qワープロばかり使っていて漢字を忘れると悲しくないですか? 手紙を書くときはどうするのですか?
★何かを忘れられるのは、その分、頭を他のことに使えるわけだから嬉しい。人間は歩けるようになると、はいはいを忘れる。はいはいを忘れて悲しいですか?」p.38
・「Q環境保全において、これから何が重要になると思いますか(建築分野にとどまらず)?
★人を減らすこと。物質の移動を少なくすること。エネルギィの節約。そして、作ったものを長く使うこと。」p.42
・「Q太陽を見ると何故くしゃみをしたくなるのでしょうか?
★この質問は毎年出る定番ですが、疑問を本気で追及したい? もしそうなら、調べましょう。」p.44
・「Q人間の指はどうして五本あるのか?
★何本だったら不思議じゃないですか? これは単なる偶然。」p.51
・「森は小四のときに庭に一畳の大きさの小屋を自分で建てて、そこで寝泊りした。建築なんて誰でもできるよ。」p.55
・「Q空を飛ぶヒーロは何故みんなマントをつけているのですか? あのマントで飛んでいるのでしょうか?
★知りません。飛ぶのには邪魔だと思うが。」p.58
・「Q百年間もつ家を建てるのと、五十年間もつ家を二回建てるのでは、どちらが経済的に優れていますか?
★時代による。今までは、明らかに後者でした。しかし、経済的に優れていることと、環境的に優れていることは、また別の問題。」p.75
・「Q建築分野において、計画→構造→材料→生産と発展した歴史のその先には何が来るのでしょうか? あるいは何を持ってくるべきでしょうか?
★これはよい質問。こういうのを大学生の質問という。このように問題提起をしたことが既に答といえる。おそらく歴史は繰り返すでしょう。」p.77
・「Q今日の話を聴いて、リサイクルが難しいということがわかりましたが、今のままでは、地球環境のこととか心配です。建築家としてどのような対策が考えられるのでしょうか?
★何百年も使える構造物を建てること。」p.79
・「Q建物はどれくらい高いものまで作れますか?
★技術的には千m以上可能だが、採算がとれない。」p.81
・「Q家を設計するとき、風水の考え方を取り入れたことはありますか? 信じないですか?
★信じていないが、風水を考慮するのは建築では常識。プロの作るものでは取り入れていない建物の方が少ないでしょう。」p.95
・「Qアメリカなどでは古くなった建物の解体でビルを破壊していますが、N大の古くなった建物を壊すときには、そういう方法を使わないんですか?
★日本の建物は頑丈なのでうまくいかない。隣接した建物があって条件が揃わない。」p.96
・「悩んでいるのか、悩んでいないのか、ファジイな若者が多い。なにげに悩んでいる。 個人的には、人生相談というものは基本的に偽善だと考えているが、偽善に騙されて救われる人もいるようなので是非を論じるつもりはない。」p.101
・「Q人生で成功するときの才能と努力と運の割合はどれくらいだと思いますか?
★八:一:一くらいでしょう。努力は才能の一部だと思うけれど。」p.103
・「Q先生、生きてて何になるんですか?
★それを知るために生きています。何にもならないことを認識するのが学問かもしれない。」p.104
・「Q遅刻して来ました。質問、人生とは? その目的とは?
★死ぬまでにする思考のこと。もっとわかりやすく言うと、「人生とは何だろう」と考える瞬間にだけ、現れる概念。人生に目的はない。目的がないということが重要なことだと思います。」p.105
・「Q僕も先生のように本を沢山読めたらいいと思うのですが、時間がとれなくてなかなか読めません。なにかこつのようなものがありますか? 少しの時間で読めるような、詩集とかばかりに読書がかたよってしまっています。
★時間がないなんてことがありますか。誰の一日も二十四時間です。それに、本を速く読む必要なんてまったくない。料理を速く食べたってしかたがないのと同じです。」p.106
・「Q新しい考えを思いつくにはどうしたらいいですか?
★真剣になってひたすら考えること。必ず何か思いつくでしょう。思いつかないのは考えていないから。これは、どうやったら五十m先へ行けますか? という質問と同じです。」p.109
・「Q成功するために必要なもののうち、九十九%は努力で、残り一%は才能だといいますが、先生は才能というものが存在すると思いますか?
★思います。努力できることが才能。だから、成功は百%才能だと思う。才能は持って生れたものではなく、思い立ったときに、あるいは、やる気があるときに生まれるもので、いつでも消える。自分自身をどれだけコントロールできるかが才能です。」p.111
・「Q最近やる気が出ないのですが、どうしたらやる気が出るようになりますか?
★嫌々でもやること。やる気がなくてもやっていれば、そのうち何とかなるでしょう。」p.118
・「お祭は日常よりも苦痛な時間に成り下がってしまった。」p.121
・「Q自分が満足できるのだったら授業をさぼって遊びにいくといのは、良いことだと思ってますが、教える側からするとどんなものでしょうか?
★まったく気になりません。教える側などという立場は存在しない。「教える」という行為がこの世に存在するとは思えない。教えてもらったようにイメージしていても、それは「学んだ」だけです。森(教官)は、みんなが購入した教科書と同じ存在。君が遊びにいったら、教科書は怒りますか?」p.129
・「Q先生の大学生に対する教育方針は何ですか?
★教育方針などありません。しいていえば、教育しないことが方針。教育するという動詞は存在しないと思う。教育を受けるとは、人の生き方を観る、ということだ。」p.132
・「Q最近、設計課題で徹夜が続いて疲れぎみです。先生は何か良い健康法をご存知ないですか?
★徹夜をしないこと。これは絶対。規則正しい生活と、あと、食べ過ぎないこと。この健康法で、森は二十年以上病院へ一度も行っていません。薬も飲みません。」p.137
・「工学は応用分野であって科学の最先端にはいない。しかし、一般の人々が触れる科学技術の大半は工業製品であり、それは工学によって支えられている。」p.151
・「学生たちの科学に関する質問は、はっきりいって非常に幼稚である。難関を突破し、工学部に入学した若者がこれか? 日本の将来の工業はどうなる? と危惧する向きもあるかもしれない。しかし、それはこの数十年の技術の進歩が早過ぎた証拠だといっても良い。」p.151
・「スケルトンというのは、透明という意味ではない。世間では完全に誤用されているね。」p.169
・「Q宇宙の果ては本当にあるのか?
★ない。地球にだって果てはないでしょう?」p.175
・「普通の人は気づいていないが、コンクリートは間違いなく二十世紀を代表する材料といえる。おそらく二十一世紀もしばらくその座を譲らないだろう。コストが安く、作業が安全で、しかも耐久性に優れているため、たちまち世界中に広がった。(中略)未来人が遺跡を発掘したら、この時代は、コンクリート時代、あるいはセラミックス時代と呼ばれるだろう(新石器時代とかかもしれないが)。」p.191
・「Q冬に作られたコンクリートほど強度が強く、冬建てられたマンションの方が良いそうですが、品質の違いなどから家賃に反映されて高かったりするのですか?
★まったくされません。だから得。」p.193
・「Qコンクリートはいつ誰が発見したのですか?
★わからない。紀元前よりある。ただし、RCやポルトランド・セメントの歴史は約百五十年ほどで新しい。」p.195
・「Q σ-ε 曲線を理論的に導くことはできないのですか?
★素晴らしい。この質問は凄い。材料の最先端課題、コンクリートに関しては、今年から当研究室で始めた研究テーマの一つ。」p.196
・「ただ、教師に関する個人的な質問が学生から出る、ということは、どちらかというと良い傾向と分析できる。たとえそれが批判的、懐疑的なものであっても、である。」p.207
・「筆者が二十五年ほどまえに運転免許を取得したとき、学科試験で面白い問題が出た。「対向車のライトに幻惑されたので、目を逸らして対処した」これが間違いかどうか、というのが問題だ。幻惑されたのだから、目を逸らさざるをえない、そのままでは危険である。だから○か、というと、正解は×。そして、解説にはこうあった。「幻惑されるまえに、目を逸らさなくてはならない」 学生が書いてくる「森先生なら、こういうときどうしますか?」という質問に対しては、これが応用できる。「森なら、そうなるまえに対処する」である。そんなにうまくいくものなら世話はないのだが……。」p.208
・「Q小説家になるためにはどうしたらよいのでしょうか?
★小説を書くと良いと思います。」p.213
・「Q先生のおすすめの本は何ですか?
★人に本をすすめない人なのです。すいません。」p.221
・「Q先生が今までにやった最高の贅沢はどんなことですか?
★今の奥さんと結婚したことかな。」p.227
・「Q何かおすすめの小説があったら教えて下さい。
★小説は読まない方が良いです。」p.231
・「Q初恋の思い出を聞かせて下さい。
★嫌です。」p.231
・「Q先生は大学で講義もして、自分の研究もしていますし、小説も書いているそうですし、週末には東京にも行くそうですし……。ずいぶん多忙そうですが、時間のうまい使い方でも知っているのですか?
★テレビを見ないし、酒を飲まないし、スキーをしないし、友達としゃべらないし。どっちかというと、みんなの方が忙しいと思う。みんな時間のうまい使い方でも知っているのでは?」p.234
・売れっ子推理作家でありながら、某国立大学工学部助教授の助教授の肩書きを持つ著者の、大学生活の一面を垣間見れる書。授業では学生に質問をさせることで出席をとり、質問への回答をプリントで配布することを長年続けており、その中から、編集者(集英社)の独断で選りすぐったQ&A集。そこからは著者の "超合理的" とも言えるような特異な人物像が浮かび上がる。
・著者が建築関連の研究をしていることを始めて知った。
・数万にのぼる質問からの選りすぐりであれば、もっとウムム…と唸ってしまうような質問がゴロゴロあるかと思いましたが、意外と平凡です。そもそも受け付けているのは授業に関する質問で、オモシロ質問を求めている訳ではないので当たり前かもしれませんが。
・日本語の乱れを指摘する解答が目立つ。文筆家の性?
・「人は、どう答えるかではなく、何を問うかで評価される。 たとえば、就職の面接で、「何か質問はありませんか?」と面接員に尋ねられたとき、的確な質問ができるかどうか、そこで評価される。」p.13
・「結局のところ、教育とは、受け手に「学んでやろう」「吸収してやろう」といった積極性が存在しないかぎり、ほとんど無駄だと断言して良い。教育そのものが成立しない、といっても過言ではない。」p.14
・「⑤自分で解決しなければ意味がないことを気づかせる。 ようは⑤が最も重要だ。「そんなことは自分で調べろ」「自分で考えろ」という内容をそれとなく示唆する。」p.19
・「一度も、小説など書いた経験がなかった人間なのに、ある日突然、キーボードに向かって、いきなり書きだしたのだ。」p.21
・「Qワープロばかり使っていて漢字を忘れると悲しくないですか? 手紙を書くときはどうするのですか?
★何かを忘れられるのは、その分、頭を他のことに使えるわけだから嬉しい。人間は歩けるようになると、はいはいを忘れる。はいはいを忘れて悲しいですか?」p.38
・「Q環境保全において、これから何が重要になると思いますか(建築分野にとどまらず)?
★人を減らすこと。物質の移動を少なくすること。エネルギィの節約。そして、作ったものを長く使うこと。」p.42
・「Q太陽を見ると何故くしゃみをしたくなるのでしょうか?
★この質問は毎年出る定番ですが、疑問を本気で追及したい? もしそうなら、調べましょう。」p.44
・「Q人間の指はどうして五本あるのか?
★何本だったら不思議じゃないですか? これは単なる偶然。」p.51
・「森は小四のときに庭に一畳の大きさの小屋を自分で建てて、そこで寝泊りした。建築なんて誰でもできるよ。」p.55
・「Q空を飛ぶヒーロは何故みんなマントをつけているのですか? あのマントで飛んでいるのでしょうか?
★知りません。飛ぶのには邪魔だと思うが。」p.58
・「Q百年間もつ家を建てるのと、五十年間もつ家を二回建てるのでは、どちらが経済的に優れていますか?
★時代による。今までは、明らかに後者でした。しかし、経済的に優れていることと、環境的に優れていることは、また別の問題。」p.75
・「Q建築分野において、計画→構造→材料→生産と発展した歴史のその先には何が来るのでしょうか? あるいは何を持ってくるべきでしょうか?
★これはよい質問。こういうのを大学生の質問という。このように問題提起をしたことが既に答といえる。おそらく歴史は繰り返すでしょう。」p.77
・「Q今日の話を聴いて、リサイクルが難しいということがわかりましたが、今のままでは、地球環境のこととか心配です。建築家としてどのような対策が考えられるのでしょうか?
★何百年も使える構造物を建てること。」p.79
・「Q建物はどれくらい高いものまで作れますか?
★技術的には千m以上可能だが、採算がとれない。」p.81
・「Q家を設計するとき、風水の考え方を取り入れたことはありますか? 信じないですか?
★信じていないが、風水を考慮するのは建築では常識。プロの作るものでは取り入れていない建物の方が少ないでしょう。」p.95
・「Qアメリカなどでは古くなった建物の解体でビルを破壊していますが、N大の古くなった建物を壊すときには、そういう方法を使わないんですか?
★日本の建物は頑丈なのでうまくいかない。隣接した建物があって条件が揃わない。」p.96
・「悩んでいるのか、悩んでいないのか、ファジイな若者が多い。なにげに悩んでいる。 個人的には、人生相談というものは基本的に偽善だと考えているが、偽善に騙されて救われる人もいるようなので是非を論じるつもりはない。」p.101
・「Q人生で成功するときの才能と努力と運の割合はどれくらいだと思いますか?
★八:一:一くらいでしょう。努力は才能の一部だと思うけれど。」p.103
・「Q先生、生きてて何になるんですか?
★それを知るために生きています。何にもならないことを認識するのが学問かもしれない。」p.104
・「Q遅刻して来ました。質問、人生とは? その目的とは?
★死ぬまでにする思考のこと。もっとわかりやすく言うと、「人生とは何だろう」と考える瞬間にだけ、現れる概念。人生に目的はない。目的がないということが重要なことだと思います。」p.105
・「Q僕も先生のように本を沢山読めたらいいと思うのですが、時間がとれなくてなかなか読めません。なにかこつのようなものがありますか? 少しの時間で読めるような、詩集とかばかりに読書がかたよってしまっています。
★時間がないなんてことがありますか。誰の一日も二十四時間です。それに、本を速く読む必要なんてまったくない。料理を速く食べたってしかたがないのと同じです。」p.106
・「Q新しい考えを思いつくにはどうしたらいいですか?
★真剣になってひたすら考えること。必ず何か思いつくでしょう。思いつかないのは考えていないから。これは、どうやったら五十m先へ行けますか? という質問と同じです。」p.109
・「Q成功するために必要なもののうち、九十九%は努力で、残り一%は才能だといいますが、先生は才能というものが存在すると思いますか?
★思います。努力できることが才能。だから、成功は百%才能だと思う。才能は持って生れたものではなく、思い立ったときに、あるいは、やる気があるときに生まれるもので、いつでも消える。自分自身をどれだけコントロールできるかが才能です。」p.111
・「Q最近やる気が出ないのですが、どうしたらやる気が出るようになりますか?
★嫌々でもやること。やる気がなくてもやっていれば、そのうち何とかなるでしょう。」p.118
・「お祭は日常よりも苦痛な時間に成り下がってしまった。」p.121
・「Q自分が満足できるのだったら授業をさぼって遊びにいくといのは、良いことだと思ってますが、教える側からするとどんなものでしょうか?
★まったく気になりません。教える側などという立場は存在しない。「教える」という行為がこの世に存在するとは思えない。教えてもらったようにイメージしていても、それは「学んだ」だけです。森(教官)は、みんなが購入した教科書と同じ存在。君が遊びにいったら、教科書は怒りますか?」p.129
・「Q先生の大学生に対する教育方針は何ですか?
★教育方針などありません。しいていえば、教育しないことが方針。教育するという動詞は存在しないと思う。教育を受けるとは、人の生き方を観る、ということだ。」p.132
・「Q最近、設計課題で徹夜が続いて疲れぎみです。先生は何か良い健康法をご存知ないですか?
★徹夜をしないこと。これは絶対。規則正しい生活と、あと、食べ過ぎないこと。この健康法で、森は二十年以上病院へ一度も行っていません。薬も飲みません。」p.137
・「工学は応用分野であって科学の最先端にはいない。しかし、一般の人々が触れる科学技術の大半は工業製品であり、それは工学によって支えられている。」p.151
・「学生たちの科学に関する質問は、はっきりいって非常に幼稚である。難関を突破し、工学部に入学した若者がこれか? 日本の将来の工業はどうなる? と危惧する向きもあるかもしれない。しかし、それはこの数十年の技術の進歩が早過ぎた証拠だといっても良い。」p.151
・「スケルトンというのは、透明という意味ではない。世間では完全に誤用されているね。」p.169
・「Q宇宙の果ては本当にあるのか?
★ない。地球にだって果てはないでしょう?」p.175
・「普通の人は気づいていないが、コンクリートは間違いなく二十世紀を代表する材料といえる。おそらく二十一世紀もしばらくその座を譲らないだろう。コストが安く、作業が安全で、しかも耐久性に優れているため、たちまち世界中に広がった。(中略)未来人が遺跡を発掘したら、この時代は、コンクリート時代、あるいはセラミックス時代と呼ばれるだろう(新石器時代とかかもしれないが)。」p.191
・「Q冬に作られたコンクリートほど強度が強く、冬建てられたマンションの方が良いそうですが、品質の違いなどから家賃に反映されて高かったりするのですか?
★まったくされません。だから得。」p.193
・「Qコンクリートはいつ誰が発見したのですか?
★わからない。紀元前よりある。ただし、RCやポルトランド・セメントの歴史は約百五十年ほどで新しい。」p.195
・「Q σ-ε 曲線を理論的に導くことはできないのですか?
★素晴らしい。この質問は凄い。材料の最先端課題、コンクリートに関しては、今年から当研究室で始めた研究テーマの一つ。」p.196
・「ただ、教師に関する個人的な質問が学生から出る、ということは、どちらかというと良い傾向と分析できる。たとえそれが批判的、懐疑的なものであっても、である。」p.207
・「筆者が二十五年ほどまえに運転免許を取得したとき、学科試験で面白い問題が出た。「対向車のライトに幻惑されたので、目を逸らして対処した」これが間違いかどうか、というのが問題だ。幻惑されたのだから、目を逸らさざるをえない、そのままでは危険である。だから○か、というと、正解は×。そして、解説にはこうあった。「幻惑されるまえに、目を逸らさなくてはならない」 学生が書いてくる「森先生なら、こういうときどうしますか?」という質問に対しては、これが応用できる。「森なら、そうなるまえに対処する」である。そんなにうまくいくものなら世話はないのだが……。」p.208
・「Q小説家になるためにはどうしたらよいのでしょうか?
★小説を書くと良いと思います。」p.213
・「Q先生のおすすめの本は何ですか?
★人に本をすすめない人なのです。すいません。」p.221
・「Q先生が今までにやった最高の贅沢はどんなことですか?
★今の奥さんと結婚したことかな。」p.227
・「Q何かおすすめの小説があったら教えて下さい。
★小説は読まない方が良いです。」p.231
・「Q初恋の思い出を聞かせて下さい。
★嫌です。」p.231
・「Q先生は大学で講義もして、自分の研究もしていますし、小説も書いているそうですし、週末には東京にも行くそうですし……。ずいぶん多忙そうですが、時間のうまい使い方でも知っているのですか?
★テレビを見ないし、酒を飲まないし、スキーをしないし、友達としゃべらないし。どっちかというと、みんなの方が忙しいと思う。みんな時間のうまい使い方でも知っているのでは?」p.234