ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】カオスの紡ぐ夢の中で

2008年02月27日 22時02分30秒 | 読書記録2008
カオスの紡ぐ夢の中で, 金子邦彦, 小学館文庫 R-か-1-1, 1998年
・本書の内容についてはカバーの紹介文におまかせ → 「老科学者の魂と引き換えにデーモンがこの世からカオスを消しにかかる。その日から世界は「創世記」を逆行しはじめ……。パロディによるカオス理論の入門編「カオス出門」。生命の進化をパロディ化した複雑系SF小説「進物史観」。複雑系研究の現状と舞台裏を明かす「バーチャル・インタビュー」。そして日頃の研究から科学者の夢、インターネット、文化論までを綴ったエッセイ「複雑系へのカオス的遍歴」。「重く暗く深刻そうに伝えると重要なことで、そうじゃないと軽くて重要でないっていう変な誤解を壊したい」という複雑系研究の第一人者が、多彩な表現で複雑系、カオス理論を説く。
・「カオス」について興味があったので、関連書籍を読み漁った時期が過去あります。そんな時に同著者の名の入った本も数冊読んでいるような。この分野への興味は失ったわけではなく、現在も興味津々。
・非常に読みやすいカオス的読み物。とは言っても専門書をいくらか読んだ上での話なので、まったく予備知識のない方が読むと難しく感じる部分があるかもしれません。全体を通じて、小説をはじめとする様々な一般書からの引用が目立ち、著者の読書好きが覗えます。また、収録された作品の中では『小説 新物史観』が出色の出来でした。生物の進化に対するカオス・複雑系から見た解釈がベースとなっている"物語"の不思議な物語。
●複雑系へのカオス的遍歴
・「新しい見方で今までの世界観ががらっとかわる、そういう瞬間の醍醐味を求めて多くの科学者(少なくとも僕)は研究をしている。」p.11
・「しかし、科学が文化であるという当然のことが日本で(実はたぶんアメリカでも)受け止められていないのは深刻な問題だと思う。たとえばそのことが、オウム真理教と理科系学生の問題の根にあると僕は思っているからだ。」p.12
・「このような弱いカオスによって多様性が維持される機構を「ホメオカオス」と名付け、多くの生命系の動的な安定性をもたらす仕掛けになっているのだろうと考えた。」p.24
・「どうも、日本社会の中には、まだ外国は偉くて、日本人からは文化が生まれないだろうという偏見が巣食っているのではないだろうか。」p.35
・「日本人に独創性がないのではなく、評価されないだけなのだ。優秀な二番煎じ研究者の競争の陰で本当に独創的な研究者が埋もれてしまうのである。「真似」的な研究は頭がよさえすればできることにすぎないのに対して、本当に新しいものを作り出すには、表面には現れない試行錯誤を含めて、ずっと大きな努力が必要だからだ。」p.36
・「新しいことを始めるには、自分の中でアイデアを熟成していくための長い時間が必要だし、この期間に情報が入りすぎるとかえってマイナスになることも多い。」p.37
・「この問題は、たぶん脳というシステムの働き方に関係している。脳の発達には外から情報が入ってくることによる部分と内部の脳神経系の自発的な変動過程による部分が相互に関係しあっているからだ。前者だけでは外から与えた情報を単に受容する、学習機械になってしまう。一方、脳生理学の実験では、外から感覚情報が入らない時にも、複雑な変動過程が起こっていることが明らかになりつつある。」p.38
・「また、最近、我々の間でさかんに議論されている「カオス的遍歴」というのは、いくつかの安定な状態があり、そこに留まっている安定な時期とカオス的な不安定性によりその間を遷移するような大変動の時期が交互に現れてくるという、歴史にも相通ずるような現象である。」p.39
・「今まさに僕が大阪大の四方哲也氏と提唱しているのは、生命系では一般に、まず初期の不安定な動き(カオス)を利用して多用な状態が生まれ、その中から、相互作用を通して、繰り返し構造を持つ状態が選ばれて安定化していくという仮説だ。」p.41
・「たとえば、デタラメな絵を描け、ないし複雑な絵を描けと言われた時、どのように対応するだろう?  複雑と言われた時は、何か構造や規則があるけれど、それを表現するのが困難というような絵を描こうとするのではないだろうか。一方、デタラメって場合にはそういう規則がまったくないというような感覚があると思う。」p.47
・「ところで、ヒトの思想は、初期ギリシアの哲学、インドのブッダ、中国の春秋時代あたりで可能性を出しつくして、あとはその中のいくつかを精密化し安定させ、広めていっているだけのように見える、というのは言いすぎだろうか。」p.57
・「今までの教育システムにも問題は色々あったのも事実かもしれないが、教養のような「即戦力」にならないようなことはやめて早いうちに専門を身につけさせようという「改革」の方向は、長いスケールで独創性を発揮できるような学生を生まれにくくさせると危惧している。」p.59
・「それを集めれば全体がわかるという考えを多くの物理学者は疑わないことが多い。素粒子論研究者の一部には、自分達は究極の理論を研究しており、それがわかれば他の科学はその応用であるという考えを抱いている者すらいる。しかし、この考え自体は論理的にも歴史的にも正しくない。」p.74
・「ひょっとして物語というのは、複雑系研究の方法として人類が生み出した、最高の手法なのではないだろうか、と。」p.84
●小説 進物史観――進化する物語群の歴史を観て
・「この一見不毛な戦いの後に、当時まったく無名・無職の研究者F氏の一編の論文から結論が出る。結論「人間は愚かである」。これは「本当の知性」なるものは(三歳以上の)人間には存在しないという主張だった。」p.107
・「Fさんを見いていてすごいと感じるのは、こういう、うまくいきっこないことを平然とやりだしてしまうことだ。天才ってのは、それを成功させてしまうものかとよくきかれる。少なくともFさんはそうではない。平然と失敗してしまうのだ。」p.113
・「熊ではなくなったFさんの到達した結論はこうだ。  「物語の発展の歴史は生物の進化と同じだ」  普通の人ならせいぜい「……と似ている」と言うくらいだ。そこを一気に「同じだ」と飛躍してしまうのがFさんの原動力だ。」p.117
・「つまり、我々が考えなきゃあかんのは、『進化する物語群の歴史』なのだ。略して『進物史』」p.118
・「「どうやって生命というものが無生物から誕生してきたかは、未だに謎なんだ。いったんできたあとの進化についてはずいぶん解明されたのに、だ。こういった『期限』についての超難問はとりあえず避ける。これが成功の秘訣だ」」p.123
・「《犬が落とし穴に落ちて「わん」と鳴いた。猫がそれを上から見て「ニャー」と笑った》  「こんなもんがどうして面白いんだ? まったくわからん……」  F研究室では皆、不思議がった。」p.131
・「実は、これには我々はひどく興奮した。つまり進化が「メタ」のレベルにまで及んできたのだ。単に文章の組み合わせを規定する「遺伝子」だけでなく、どういう形で組み合わせるかを司る、規則を与える規則のようなものが誕生したということなのだ。」p.134
・「病気とは何かを言おうとすると、正常とは何かということになる。ところがこの「正常」というのは、かなりぼんやりしたもので、異常の対比としてしか捉えられないという循環に陥ってしまう。」p.150
・「脳科学者のある者は、ダブルバインドなどの考えの元祖でもある科学者グレゴリー・ベイトソンの考えに基づいて、「たとえば、関係代名詞の中に関係代名詞という入れ子構造が数段入ると理解できなくなるように、人間の脳には、メタレベルを理解できる限界がある」としている。」p.159
・「たとえばね。多細胞生物の体作りの原理は、カンブリア紀以降、本質的な変更はないと思われている。これをみると、まず体作りの可能性が最初に出尽くして、あとから徐々に安定なものが固定化されてきたように見える。これが進化の行き方だと僕は考えているんだ。」p.189
●バーチャル・インタビュー――あとがきにかえて
・「あのエッセイの多くは『クォーク』という科学雑誌に連載してたものですが、それを引き受けたのは、文化としての科学っていうのを訴えたかったからなんです。もとにはオウム真理教の事件があったんです」p.192
・「科学研究費を多くとるためには、早いタイムスケールで動く仕事をやり続ける方が有利なわけです。でも、それだけだったら長期的には虚しさがありますよね。  その意味では、ジャーナリズムの場合とにていますね。つまり売れた方がいいって代わりに、たくさん研究費をとってきた人がよい研究者であるというような、本末転倒が時にあるわけです。こんな風にしていくと、ほんとにごっつぃ研究は出にくくなるんじゃないかと思います。  要するに、どんな分野でも職業倫理ってのが弱まっているんじゃないかと思うんです。」p.202
・「――それで、そもそも複雑系の研究というのは一言ではどういうものなのですか?  「『一言で言えれば複雑系じゃない』って一言で答える、ってのもあるかもしれないけど、いずれにせよ部分と全体の矛盾をはらんだ相補的な関係を、かけ声だけじゃなくて真剣に探るってことになると思います。つまり部分の和で表せない全体というのは論理的にどういうものか、それを捉えるにはどうしたらいいかというようなことです。」p.209
・「津田一郎さんや僕が重視しているのは『カオス的遍歴』と呼ばれる現象です。たとえば、最初に与えられた要素のダイナミクスとは、一つ上のレベルでマクロな状態の間の遍歴が起こる。この際、必ずしも要素レベルのダイナミクスと上のレベルの関係が、なめらかな一対一のものではないだろうと僕は予想しています。まだ証明はできないのですけど」p.214

《チェック本》
奥泉光『「吾輩は猫である」殺人事件』新潮文庫
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【食】らーめん専家 羅妃焚 総本店 [ラーメン@岩見沢]

2008年02月27日 08時16分48秒 | 外食記録2008
らーめん専家 羅妃焚 総本店(らぴた) [ラーメン@岩見沢][食べログ.com]
2008.2.5(火)21:00 入店(初)
注文 チャッチャ味噌 + 白髪ネギ 780円

  
・岩見沢中心部の国道12号線沿い。目立つ看板なので分かりやすいと思います。美唄への行き帰りに、車がたくさん停まっているのがよく目についたので気になっていたお店。
・この不思議な店名は一体どこからきているのか??
 
・麺はやや硬めのゆで具合で、黄色のテカテカツルツル麺でした。チャーシューは薄いのにトロトロな、あまり見かけないタイプの物でした。どうやって作っているのかちょっと不思議。これに好物のネギをトッピングでウハウハです。そして驚いたのがこのスープ。コッテリなくせに、口の中でスープの味がスッと無くなる。この後味のスッキリさは初体験です。ラーメンのスープを形容する言葉として適切かどうか分かりませんが、とってもクリーミーでした。どう作ったらこうなるのか?? これは『チャッチャ』特有なのか、他の通常味でも同じなのかは未確認です。
・どんぶりの形状が特殊で、やや浅め。
・往来の激しい国道沿いに派手な看板を掲げた今風の雰囲気のお店ということで、客がよく入っているとはいえ、正直言ってあまり期待をしていませんでした。しかし今回はそんな予想を見事に裏切られました(良い意味で)。このような新興のラーメン店に対しては懐疑的なイメージを持っていましたが、そんなイメージを覆すラーメンでした。今後のラーメン屋開拓に新たな弾みがつきそうです。

   
 
 
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