どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

リュウの憂鬱(5)

2006-10-05 05:22:20 | 短編小説
 白い犬からは、精気が失われていた。毛色も白というより、脂が抜けて灰色がかって見えた。  早春の張り詰めた空気を払いのけて、とつじょ現れた日のリュウの躍動が嘘のようだ。  野生の残る純粋さが、媚びない気品を感じさせたものだ。  その時の子犬が、いま打ちひしがれた姿で目の前にいる。檻に囚われた罪人のように、記憶を探る気力も萎えた顔で立っている。  真木男は、リュウを救い出せない自分の非力に、落胆して . . . 本文を読む
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