どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

細身のジャック(1)

2010-07-30 07:21:42 | 連載小説
 キャンパスの芝生に足を踏み入れると、教室内とは違った種類の暑さがあった。  長い間咲きつづけてきたツツジもいつしか散り、花壇はふたたび緑一色に染まっていた。  山野正夫はそこの縁石に足をかけ、ずれてきたテキストを膝の上で留めなおした。  本はブックバンドから外れるほど曲がっていたわけではないが、彼はそうしながら考え事をしていたのだ。  現在、学内の一郭で熱っぽい議論が交わされている。 . . . 本文を読む
コメント (4)