どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

思い出の短編小説 『壁の中』

2024-05-18 01:13:00 | 短編小説
 巣鴨プリズンが解体されたとき、ある独房の壁の中から奇妙な塊が転がり出てきた。 公には報道されなかったが、それは高温の熱によって溶かされたコンクリートが、冷えて固まった状態に見えた。 普通、ブルドーザーで破砕された壁は、捻じ曲がった鉄筋を除けば、セメントと砂、砂利による組成が一目瞭然だった。 それに対し、発見された塊は内部でガラス質の粒子が滾り、流れ出たような形跡が見られた。 飴を塗りつけたような . . . 本文を読む
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