〇 山路来て何やらゆかしすみれ草 芭蕉
この句は奥の細道に収録されている作品で芭蕉が山路を歩いていて足元にふと菫の花を見つけた時のほっとした心境を詠んだものである。
菫という花は可憐に見えるがなかなか強靭な植物で、木の枝の陰などでもちょっとした陽だまりを見つけて花を開く。
意識せずとも心細さを感じていた芭蕉は陽だまりに咲く菫を見つけてなんとなく共感を覚える。
曽良や去来などの同行者もいたが必ずしも心の同行者であったかはわからない。
江戸深川の庵を出る時から生死の運を託した旅路だから自然を見る目にも慈しみが感じられる。
芭蕉が俳諧〈言葉遊び〉を芸術にまで高めたといわれるのはこうした慈しみがあったればこそと首肯される。
参考=芭蕉の「奥の細道」出発点をめぐっては現在の千住大橋・清澄あたりといわれているが、確かに深川の庵をたたんで奥州路に近い清澄に小舟で渡って準備を進めたらしい。
歌人でもある西行法師を偲んでの旅立ちだから、150日余りをかけて全行程をめぐり江戸に戻った。
同行したのは曽良〈河合曽良〉と去来〈向井去来〉で、いずれも芭蕉十哲に上げられ道中それぞれが記録を残していて芭蕉研究には欠かせない資料である。
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