こちら函館・松風町の老舗バー「杉の子」。
これは函館を舞台にした映画「海炭市叙景」の名前を取ったカクテル。この映画は
なかなかよかった、と話したらママさんが喜んでサイン入りの台本を見せてくれ
ました。
原作は函館出身の作家・佐藤泰志で、彼の小説は次々に映画化されており、私は函館を
舞台にした映画をだいぶ見たので、「そこのみにて光輝く」「オーバー・フェンス」
「きみの鳥はうたえる」「草の響き」などを見ました。
ちなみに「きみの鳥はうたえる」ではこの店の名前だけが出てきましたが、実は店内で
ロケを5時間もしたのに、その場面は全部カットされてしまったとかw
しばらく函館の映画や佐藤泰志の話をしていたら、土曜日に「まちづくりセンター」で
佐藤泰志に関わる映像のイベントがあると教えてくれたのです。いまの我が家の目の前
ですから、これは是非行かねば、と思いました。
こちらが「まちづくりセンター」。元は函館を代表する丸井今井百貨店だったのです。
函館は何度も大火に襲われていますから、昔の木造は焼失し、明治に入ってからこの
ような石造りになり、その後3階が4階、5階と増築されました。しかし改修時に
また屋上に展望台がある昔の3階建てに戻されました。
しかしここには東北以北最古の手動式(じゃばらのドアを手で開ける)エレベーター
があり、それは残したので左奥のほうだけは5階になっています。
ほらね、我が家から見れば後ろが5階になっていると^^
さてこのイベントでは佐藤泰志の人生を描いたドキュメンタリー「書くことの重さ
~作家佐藤泰志」を上映。彼は高校生のときに「市街戦のジャズメン」で文学賞を
取り、この夏にその映画化が上映されるのでこのイベントが企画されたのです。
彼はいくつか文学賞を取りましたけれど、芥川賞には5回も候補になったのについに
受賞は出来ませんでした。命を削るような執筆生活を送り、41歳の若さで自死して
しまいます。ちょっと重かったなあー。
このドキュメンタリーを作った監督の別作品「母と子の絆~カネミ油症の真実」も
上映されましたが、猛毒物質でひどい健康被害を受けた人たちの様子、国の対応の
ひどさ、黒く生まれた赤ちゃんなんかが出てくるというので、心が弱い私は見ない
ことにしたのでした。
もうひとつ、その監督・稲塚秀孝のドキュメンタリー「日高線と生きる」は見ました。
廃線になった日高線。私は6年前に襟裳岬から日高線終点の様似に出て、そこから
代行バスで鵡川まで行きましたねえ。去年は苫小牧から富川を経由して平取に
行きました。
ここはもうご覧の通り、ひたすら海岸線を行くので、10年前の高波で線路がズタズタ
になり、4年前に廃止が決定してしまったのです。このドキュメンタリーでは
日高線の歴史をたどり、沿線の人々の生活、昆布漁や競走馬を育てる牧場の様子などが
描かれました。
昆布漁では70代の漁師が海に出て昆布を獲り、それを女たちが地面に広げて干す様子が
出てきました。その漁師さんの父親は90代まで船に乗って漁をしていたとか。さらに
いちご農家では手摘みでいちごを収穫していましたが、形が悪かったり大き過ぎたりと
規格外のものを集めて加工する人たちがいて、それはメンタルに障害を持つ人たちが
せっせと作業をしているのでした。
なんだかね、、、地道で大変な仕事をず~~~っとしている人たちを見て、世の中には
お金を動かすだけとか、PCの中での作業だけで莫大な利益を上げている人たちが増え、
経済格差が爆発的に広がっているのを思わずにはいられなかったのでした。。。