続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

M『脅かされた殺人者』

2015-03-13 06:44:54 | 美術ノート
マグリット『脅かされた殺人者』

 この絵から殺人者を特定することは難しい。前面の両脇に隠れた男の一人は棍棒(性的な暗示か)を持ち、もう一人は捕獲の網を持っている。二人とも怪しげではあるけれど、殺人者という凶暴さはなく極めて静かである。
 真ん中の空間(部屋)の男は、被害者(殺された女/死体)と同室に居ながら驚愕の態度もなく蓄音機に耳を傾けているというより覗き込んでいる。仕事帰りの休息にさえ見える不可解、無関心。
 外部のテラスから部屋を覗きこんでいる男三人は、死体を見ずにその男を見ている。(マグリット自身の分身とも思える三人)
 全裸の死体(殺人者と銘打っているから死体だと断定している)は口から血を流しているが、肉体的な損傷は見えず、直接的な危害はないと思える。女としての恥部はさらけ出されたままであり見当違いの首にタオルがかけられているのは屈辱である。

 いかにもこの不可解な『脅かされた殺人者』、犯人は単独なのか、複数犯なのかも定かでない。第一この中に殺人者が居るとして、凶暴・暴力・闘争の空気はなく、犯罪者の心理を伺えるものもない。(無意識の犯罪)

《そして、脅しているものはどこにいるのか?》

 外部のテラスから傍観いる三人、静かなる脅迫者である。そして更なる無念をもって脅している者がいるとしたら、この作品を前にしている作者ではないか。ゆえにこの絵の空間は突き抜けている、作者とこの三人が対峙の位置関係にあるのだと思う。
 この絵の中に作者自身が参加してこの絵が成立しているのである。(すべてを見知っているぞ!)という作者の思いがこの光景を脅している。
 性的関係、束縛、無関心、蓄音機に暗示される風評・噂・・・作者はこの寒々とした光景に憎悪の念を抱いていると思われる。


 自殺した母を死に追いやったものは何だったか・・・母の死に起因しているかもしれない作者の原風景ではないかと推測する。哀しくも辛い慟哭の光景である。『マグリット』(西村書店より)

『冬のスケッチ』51。

2015-03-13 06:34:16 | 宮沢賢治
一八       *
    行きつかれ
    はやしに入りてまどろめば
    きみがほほちかくにあり
    (五百人かと見れば二百人
     二百人かと見れば五百人)
    いつか日ほそみ
    すぎごけかなしくちらばれり。
         *
    散乱のこゝろ
    そらにいたり
    光のくもを
    織りなせり


☆講(はなし)の新しさは語(ことば)の飛躍で図ると現われる
 字の飛躍で図る、字の飛躍で図ると現われる
 語(ことば)の飛躍で図る
 化(形、性質を変えて別のものになる)の算(見当を付けて)覧(よく見る)と、講(はなし)が続く。

『城』1905。

2015-03-13 06:11:36 | カフカ覚書
しかし、この地位は、いまのKにとっては、以前よりも大切なものであった。Kは、ハンスとの会話から新しい希望に胸を膨らませるようになっていた。この希望は、どうやら実現の見込みもなく、根拠もまったく欠けていたけれども、Kにとっえはどうしても忘れることができない魅力をもっていた。そのために、さしものバルナバスの影でさえ薄くなってしまうほどであった。


☆しかし、この地位は今現在よりもさらに大切なものになっていた。自ら認めるように全く根拠のない、信じられないような未知を抱くに至った。さらに忘れることのできないハロー(死の入り口)における愚作、それどころか、ほとんどバルナバス(北極星=死の転換点を回るもの)を隠蔽してしまった。