続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

M『無謀な睡眠者』

2015-03-22 06:59:44 | 美術ノート
マグリット『無謀な睡眠者』

 暗雲垂れ込めるような不吉な背景が対象物の隙間から垣間見える。睡眠者の眠る箱は宙に浮いているとさえ見えるが画面いっぱいに描かれていることもあり、それはないと鑑賞者は観念的に否定する。しかし危うい位置であることは不安を搔き立てるのに十分である。

 この者の下、不定形な(意味を想起させない)パネルに埋め込まれた関連性の薄い任意の六つの物はなにを意味(象徴)しているのだろう。
 火の灯った蝋燭・・・これは一般的に生命を現わし、燃えている=生きていることを意味していると思われる。
 鳥(鳩だろうか)・・・『大家族』における鳩、聖書にあるノアの箱舟の後の世界、つまり子孫の暗示(未来)ではないか。
 手鏡・・・これは自分と自分の背後(過去)を写すもの。
 リボン・・・女性への憧憬。
 帽子・・・男であることの執着、誇り。
 リンゴ・・・食欲、あるいは思考への願望。
 象徴/集約されたこれらを収納というか、放棄しているのではないか。いつでも捨てられる、捨ててもいいと。

 木目模様の箱は、マグリットの場合、棺を暗示しているような気がする。棺の中に深く身を沈めているというのではない、身を横たえ枕をし毛布を被り、足は少しはみ出している。(目が覚めれば、再び生きなくてはならない、生きざるをえないではないかという消極的な生を感じる)


 総体的に考えると、これは自殺願望の図である。眠りについたこの者は《このまま目が覚めなくてもいい、死んでもいい、むしろ死にたいのだ》という無謀な考えで眠りについている者である。
 マグリットは「わたしの作品を解釈するな」というようなことを発言している。こんな情けない「わたしを暴露してくれるな」そう言っているのである。口に出来ない思い、しかしどうしても、見えないもう一つの世界(母の逝った世界)を思わずにはいられない。時空の重なり(同時性)を夢想する所以である。(『マグリット』西村書店刊より)

『冬のスケッチ』60。

2015-03-22 06:48:34 | 宮沢賢治
  おゝすばるすばる
  ひかり出でしな
  枝打たれたる黒すぎのこずゑ。
        *
  せまるものは野のかはひ
  すばるは白いあくびをする
  塚から杉が二本立ち
  ほのぼのとすばるに伸びる。


☆押しはかる詞(ことば)を兌(とりかえる)と告げる也。
 魄(魂)を懲(過ちを繰り返さないようにこらしめる)惨(いたましい)事(ことがら)を、翻(ひっくり返す、形を変えてうつす)律(きまり)を申べている。

『城』1914。

2015-03-22 06:32:52 | カフカ覚書
おそらくKのことを心配して、思いやりからそうたずねたのであろうしかし、Kは、フリーダがもともと彼を教師の命令や横暴から守ってやると約束しておきながら、実際にはほとんど守ってくれなかったことを思いだして、いったん学校の小使いになったからには、こういうしがない仕事もやらなくてはならないのだよ、とだけ答えた。


☆それは慈悲深く心配していたからそうたずねたのである。しかしながら、Kはフリーダ(平和)が、最初は彼を空虚(幻影)の命令や横暴から守ってやると約束したのにあまり成功しなかったが、ただ先祖の汚点が罪過になるのではと、立場もまたそうせざるをえなかったのだと言った。