続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『一夜の博物館』

2015-05-04 06:40:00 | 美術ノート
 博物館とは古今東西、世界の情報の集積を提示する場所をいう。にもかかわらず《一夜》とは、なぜか。
 One-noght Museum・・・幻の、ということかもしれない。幻の時空の必然性はどこにあるのだろうか。


 箱の中は四つに仕切られている、何と言うこともないが十を暗示している風でもある。
 腐ったリンゴ・・・知恵の実としての具現が時の経過により腐敗寸前である。
 切り取られた手首・・・。

《わが手の力により、またわが知恵によって・・・》《そのいばらと、おどろとを一日のうちに焼き滅ぼす》(聖書より)

 左下には、何という形を特定できない置物。意味不明、用途を推し量ることが出来ない物体。自然に出来た形ではなく人の手が加わったような仕上げに見える。無意味/徒労の象徴だろうか。

 右下は、模様のように刻まれた穴が配された平面状のもの(板)で、内部を隠蔽している。何か在るかもしれないし、無いかもしれない。暴くことは不能であり、秘密の有無は永遠の謎である。


 永遠の謎を秘めた不思議な作品、具体的に口に出来ないマグリットの胸のうち。
 発言(メッセージ)は、明言できない。
 この世界観は永遠の様相を呈しているが、やがては朽ちていくかもしれないという想定を、幻という時空で描きとめたのである。

 世界は永遠ではない、一夜限りの幻かもしれない。(宇宙の時空、億年の歴史においては)
 作品が内包するマグリットの深い瞑想(憂慮)は謎のままに、鑑賞者は作品の前を通り過ぎるしかない。答えを明言することは(絶対に)許されない、そういう作品である。(写真は国立新美術館『マグリット展』図録より)

『城』1954。

2015-05-04 06:26:55 | カフカ覚書
「それが、そのころのきみの考えだったのだね」と、Kはたずねた。「で、それ以来なにが変わったのかね」
「自分でもわからないわ」と、フリーダは言って、自分の手をにぎっているKの手を見つめた。「もしかしたら、なにひとつ変わっていないのかもしれないわ。


☆要するに当時は反対意見だったんだね、とKは言い、「それ以来変わったかね」
「自分でも分からないわと、フリーダ(平和)は言って彼の支えるKの国(地方公共団体)を見つめた。「もしかしたらなにも変わっていないかもしれない。