続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『夏』

2015-05-26 07:11:15 | 美術ノート
 建物(四階建て以上の高層)をバックに空を映した旗が揺らいでいる。

 個性を隠した窓、一つ一つにはそれぞれの人生が隠れている。百あれば百の人生模様が刻まれているはずの窓の外観は実に無個性である。
 その建物の前に掲げられた旗。旗は象徴、集団・組織・国のシンボルである。その旗に映る雲多き青空。

(この旗は何を意味しているのだろう)四次元空間・・・時とともに変幻自在に形を変えていく雲、留まることなく予測不可能なまま変化していく形態。動かされるのでなく動いている自然。束縛はなく、宇宙の原理に従って姿を変えている。空はどこまでも青く見える、どこまで行っても空である。

 この解放感/自由に上からの指令はない。
 この旗こそが、望み掲げられるべきシンボルである。この解放感に近似したイメージとして『夏』を選択したのだと思う。

 しかしこの旗を見るべき窓の住人はカーテンを閉ざしたままのように見える。


 そして、マグリットの掲げた『自由の旗』は不穏である。いつまた曇り、嵐を呼ぶかを予測できない。だから、換言すれば『決意の旗』でもある。
 自然、大宇宙への敬意。マグリットの信仰、真意を垣間見た思いがする。

(写真は国立新美術館『マグリット展』図録より)

『冬のスケッチ』120。

2015-05-26 06:51:13 | 宮沢賢治

       ※
  かぜのうつろのぼやけた黄いろ
  かれ草とはりがね、 郡役所
  ひるのつめたいうつろのなかに
  あめそゝぎひのきはみだるる。
  (まことこのとき心象のそらの計器は
   十二気圧をしめしたり。)


☆講(はなし)には双(二つ)の群(むれ)がある。そして、亦(また)諸(もろもろ)推しはかる。
 字を審査(正しいかどうかを明らかにすること)が衝(かなめ)である。
 系(一続きの関係をなすもの)の記は自由に記すが、基(物事のもとになるもの/根本)は圧(押さえる)。

『城』1974。

2015-05-26 06:36:34 | カフカ覚書
おまけに、きみとぼくとのあいだの意見の不一致は、ハンスの眼のとまらずにいたわけじゃない。それがハンスの眼にとまらなかったとおもうのなら、きみは、この大人のように用心ぶかい少年をひどく過小評価していることになる。それに、万一すべてのことが彼の眼にとまらなかったとしても、そのことからだれも損害をこうむるわけじゃないとおもうがね」


☆ハンス(国)とわたしたちの矛盾を気づかずにいるわけではない。この用心深い氏族の予言者を過小評価していることになるが、彼自身、隠れた死を信じるべきである。そこから先祖の悲しみが生じているのだと、わたしは思う。