続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『本来の意味』

2017-08-12 07:08:43 | 美術ノート

 『本来の意味』

 四角な画面に✖の太く黒い線があり画面を四分割している。
 青・暗緑色・レンガ模様・白地にCorps de femme(女の身体)という意味をあらわす文字が、各入っている。
 これが本来の意味であるという。

 大きく画面を遮る✖、否定を意味する✖、十字路でもある。
 青は、空・空間・明るさなどを想起させる。
 暗緑色は、森や林や海の底・陰鬱・深淵などを想起させる。
 レンガ模様は、レンガを知る人のみにそれを想起させるが、単に整列した線条でもある。
 白は、空白・無を連想させるが、そこにCorps de femmeという文字が入ることで、その文字が通用する人たちにとっては意味をなすが、その約束外の人にとっては無意味でしかない。

『本来の意味』とは、意味がない=否定という意味であり、混沌の中に意味を見いだすようにと言う指令にも思える。
『本来の意味』とは、(あるがまま)を自己の脳裏において解釈・受理すべきものであり、示された絵図のイメージを壊したり分解したりするものではない。
《その通り/在るがまま》を感知せよ! それが正しい意味であり、「秘めた内実への侵入は禁止する」というマグリットの強いメッセージ(通告)のような気がする。しかし、「混沌の中に意味を見いだせるか?」という一縷の期待がなくもない、という矛盾をも孕んでいる。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)