大寒の東京駅にひとを待つ
凍るような時空である。
東京駅は誰もが知る駅であり、日本の中心である。大寒という大きな冷却された空間から駅にスポットライトが当たる。行き交う群集や騒めきは凍り付いた空間では動きを止めてしまう。
ただ一人・・・群衆の中の一人がそこに固定される。他は霧消し、蒼白の単色が辺りを染める。解放されているのに閉じられており、ただ一人の息づかい、深いため息が漏れる。呼吸は止まっているかもしれない。
雑踏の中の静謐、彼女の眼差しは探しているが留まっている。
世界の中心で《ひと(彼)を待っている》
限定の時空ではない、永遠に待っているかもしれないし、過去の残像かもしれない。待つという時間の停止には切なく哀愁を帯びた情感がある。
諦念か期待か、あるいは姿を現さなかった男への腹立ちか。
♪雪が降る…あなたは来ない~♪というロマン・・・さらなる凄まじい冷徹・鋭敏な感性をこの句は秘めている。