『杉山真伝流・臨床指南』六然社・刊
この本は、ほんとにおもしろい。
卑近な内容が多く、東洋医学の自然観が素直に表されている。
しかし、現代医学がまだ日本に入って来ない時代なので、鍼灸も大変な仕事だったようだ。
端々に編著者の人情が出ていて、読んでいて温かみを感じるばかりでなく、通り一遍のことを言うのでもなく、意志の強さも出ていて、果敢な表現には親しみを感じる。
例えば、第一章のまとめでは、こんなことを書いている。
【私は、衛生上の問題を軽視する訳ではない。必要な衛生上の管理は行うべきだと考えている。しかし、ディスポ化され、それでも飽き足らず、鍼を抓む指には手術用のゴム手袋をし、一回刺した鍼は何ヶ所も刺してはいけないなどと指導するのは、鍼術を捨てろと言うに等しい。(中略)日本の鍼灸がその方向に行くのであれば、私はアジアの村の片隅で、日々の生活の苦労と寄り添う地域医療の一環として、鍼灸の生き残る道を探したいと思う。】
感動するではありませんか。
いいことばかりを述べる「ゴマすり鍼灸師」が多い中、こんな意思表明をする先生は本当に少ないので、若い鍼灸師も、それなりに歳をとった鍼灸師(笑)も参考にして欲しいと思う。
本文では、鍼術のテクニックが多いのにもびっくりするし、結構深鍼や強刺激が多いので、現代の日本人には適しないところもありますが、技術の研磨に打ち込んだ様子がありありと表現されていて、これは若い鍼灸師には是非読んでもらいたいと思うしだいです。
取穴を見ながら、七星論に当てはめていったのですが、これがまたおもしろい。
臨床実践塾 に参加されている方にはわかると思いますが、理論は違えど七星論での選穴理論と一致するところが多い。