米国の大統領に誰がなるかで、世界が大きく変わることは、歴史が証明している。40年近く前の話で恐縮だが、当時、共和党大統領候補だった、リチャード・ニクソンは、繊維を地場産業としている、サウスカロライナとノースカロライナ2州で勝利した結果、僅差で大統領に選ばれた。
米国の大統領が、大差で勝利した場合と僅差の場合とでは、当選後の施政が大きく変わる。当時、ニクソンは、繊維2州に、自分が大統領になれば、日本その他からの繊維製品の輸入を規制すると約束した。ニクソンは、僅差で大統領に選ばれた。
1970年11月、佐藤ニクソン会談で、沖縄返還に命をかける佐藤総理、繊維規制で晴れて自分を大統領にしてくれた選挙民に約束を果たしたいとする二人の間で密約が交わされた。その事実を伝える資料が、米国立公文書館で保管され、昨年、図らずも公表された。
4月6日付のウオールストリートジャーナル(WSJ)紙、一面トップに、民主党大統領候補の一人、ヒラリークリントンの選挙参謀、Mark Penn氏が突然、辞任すると発表したと報じた。2ヶ月前に、30数年来の女性の参謀を解雇しているから、今回のペン氏辞任で、ヒラリー候補は、両腕をもぎ取られたことを意味する。
WSJ紙によると、ヒラリー候補は、公の場では、自由貿易を喧伝している。その一方で、自らの選挙参謀が、コロンビアとアメリカとの二国間貿易交渉でロビスト(顧問弁護士)を勤め、コロンビア大使と密会しているところをWSJ紙にすっぱ抜かれた。立場をなくしたペン氏は、即日辞任発表を余儀なくされたとWSJ紙は報じた。
米ワシントンDCには、ロビストなる職業で、飯を食っているひとが大勢いる。元大統領補佐官や多くの高官が退職後、ロビストになり、クライエント(顧客)から巨額の報酬を得ている。日本の銀行や高名な企業でも、ロビストに多額の金を払い、情報を買っている。
ヒラリークリントンは、4月22日に、ペンシルベニア予備選を控えていた。争点は、オハイオ州同様、貿易問題であった。想像を逞しくして言えば、何らかの密約が選挙民との間で交わされていてもおかしくない。
米国人は足もとを蚊が刺した程度ではさして問題にしない。ところが、のど元を食いちぎられると察すれば、なりふり構わず挑戦してくる。ヒラリークリントンは、いま手傷いの獅子同然である。
野球で言えば、7回、8回、終盤を迎えた段階で、民主党代表の資格を得る、2,025人の選挙人に対して、オバマ候補、1,634、ヒラリー候補1,500と僅差ながら劣勢は明白である。
WSJ紙によれば、ペン氏は、ヒラリー候補が変革を訴えながら、ヒラリーの演説草稿では、ヒラリー上院議員としての首都での過去の業績を繰り返しアッピールするというミスを犯してきたが、今回のミスで、致命的になったと指摘している。
今回の大統領予備選は、サブプライムローン問題が混迷の度合いを強めるにつれて、争点が経済問題に移ってきた。米国では、政治と経済とは、コインの表裏の関係にあり、中でも、2008年は、経済問題での公約が死命を制する。
日本はどうか。春の海ひねもすのたりのたりかな。ほどほどにしてもらいたい。(了)
米国の大統領が、大差で勝利した場合と僅差の場合とでは、当選後の施政が大きく変わる。当時、ニクソンは、繊維2州に、自分が大統領になれば、日本その他からの繊維製品の輸入を規制すると約束した。ニクソンは、僅差で大統領に選ばれた。
1970年11月、佐藤ニクソン会談で、沖縄返還に命をかける佐藤総理、繊維規制で晴れて自分を大統領にしてくれた選挙民に約束を果たしたいとする二人の間で密約が交わされた。その事実を伝える資料が、米国立公文書館で保管され、昨年、図らずも公表された。
4月6日付のウオールストリートジャーナル(WSJ)紙、一面トップに、民主党大統領候補の一人、ヒラリークリントンの選挙参謀、Mark Penn氏が突然、辞任すると発表したと報じた。2ヶ月前に、30数年来の女性の参謀を解雇しているから、今回のペン氏辞任で、ヒラリー候補は、両腕をもぎ取られたことを意味する。
WSJ紙によると、ヒラリー候補は、公の場では、自由貿易を喧伝している。その一方で、自らの選挙参謀が、コロンビアとアメリカとの二国間貿易交渉でロビスト(顧問弁護士)を勤め、コロンビア大使と密会しているところをWSJ紙にすっぱ抜かれた。立場をなくしたペン氏は、即日辞任発表を余儀なくされたとWSJ紙は報じた。
米ワシントンDCには、ロビストなる職業で、飯を食っているひとが大勢いる。元大統領補佐官や多くの高官が退職後、ロビストになり、クライエント(顧客)から巨額の報酬を得ている。日本の銀行や高名な企業でも、ロビストに多額の金を払い、情報を買っている。
ヒラリークリントンは、4月22日に、ペンシルベニア予備選を控えていた。争点は、オハイオ州同様、貿易問題であった。想像を逞しくして言えば、何らかの密約が選挙民との間で交わされていてもおかしくない。
米国人は足もとを蚊が刺した程度ではさして問題にしない。ところが、のど元を食いちぎられると察すれば、なりふり構わず挑戦してくる。ヒラリークリントンは、いま手傷いの獅子同然である。
野球で言えば、7回、8回、終盤を迎えた段階で、民主党代表の資格を得る、2,025人の選挙人に対して、オバマ候補、1,634、ヒラリー候補1,500と僅差ながら劣勢は明白である。
WSJ紙によれば、ペン氏は、ヒラリー候補が変革を訴えながら、ヒラリーの演説草稿では、ヒラリー上院議員としての首都での過去の業績を繰り返しアッピールするというミスを犯してきたが、今回のミスで、致命的になったと指摘している。
今回の大統領予備選は、サブプライムローン問題が混迷の度合いを強めるにつれて、争点が経済問題に移ってきた。米国では、政治と経済とは、コインの表裏の関係にあり、中でも、2008年は、経済問題での公約が死命を制する。
日本はどうか。春の海ひねもすのたりのたりかな。ほどほどにしてもらいたい。(了)