NY原油先物相場(WTI)(軽質油)が、4月9日、一時、史上最高値のバレル112.21ドルを更新し、結局、前日比2.37ドル、2.2%高の110.87ドルで取引を終了した。ブレント(重質油)も、つれ高、108.46ドルで取引された。
米エネルギー情報省は、4月9日、4月4日締めの週間原油在庫統計を発表した。それがエコノミストの予測を大きく下回った。石油製品在庫も原油以上に下落した。その結果、投機資金が大量に原油市場に流れ、相場を押し上げたと、今朝のWSJ紙は紹介している。
一部の原油アナリストは、米国の原油在庫は、日量900万以下まで減少したが、それは、米国の原油輸入が、日量1000万バレル以上減少したことが、影響していると指摘している。
その一方で、高い原油でガソリンを作っても利益が出ない。よって稼働率が増えない。需要の主力のガソリンの稼働率が下がる。悪循環でガソリンの値段が上がる。米国では、原油の精製能力が一向に増えないことが、原油相場の元凶の一つであるとの指摘が従来からある。
OPEC総会では、原油高騰は、米国の精製能力の低下とそれを材料にして相場に仕立て上げる投機家が作った相場である。原油のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映したものではないと、しばしば指摘されている。
原油急騰の材料には、これまたお決まりのコースのひとつであるが、ドル先安の見方が底流を流れていることが指摘できる。IMF(国際通貨基金)が、米国経済は、レセッション入りしたと発表した後、ドル相場は、対ユーロで、3月末以来の最安値を更新し、1ユーロ=1.5821ドル、1ドル=101.78円まで値下がりした。
米国の短期目標金利(FFレート)は、既に、年2.25%まで引き下がられたが、次回のFOMC(連邦公開市場委員会)で、追加利下げが避けられないとの見方から、追加利下げ、ドル安の「方程式」から、どうしても、ドルは中長期的には安くなるとの呪縛から抜けない。
ドル安となれば、これまたお決まりのコースであるが、NY金先物市場で、トロイオンス19.60ドル、2.1%高、933.60ドルまで値上がりした。金相場は、直近の高値である1,033ドルから大きく下げていたが、ここへきて戻り基調にある。
NY株式市場では、4月9日、原油相場が一時、新高値を更新したことを嫌気して、前日比49ドル、0.4%安の12,527ドルで取引を終了した。この日は、GM(4% 安)に加えて、ガソリン高の連想から、ダウ採用銘柄で、空運株、陸運株が売られたことが、ダウ平均を押し下げた。
金融株も値下がりした。Bank of America,J.P.MorganChase,MerrillLynchなどの金融セクターの銘柄が、2008年第一四半期決算発表を控えており、結果を見極めてから動いても遅くはないとの見方が、株式相場の上値を抑えていると今朝のWSJ紙は指摘している。
米国はいいとして、肝心の日本はどうか。日銀総裁はG7開催を控えてドタバタで決まったが、特に政治の世界では、機体が左右に大きく揺れる、ダッチロール状態から抜け出していない。自分の意見を表に出すことをよしとしない日本人の体質が事態を益々混迷させている。国際相場は、石炭もコーンも去年の3倍になった。他人任せでは済まされまい。(了)