桂文珍独演会:神戸酒心館
江嵜企画代表・Ken
桂文珍独演会が、神戸酒心館(078-841-1121)で開かれ、楽しみにして
出かけた。開演が午後7時ということもあり、開演前の時間待ちを利用して、
レストラン「酒ばやし」で食事を済ませる客人も結構多かった。
庭には、ライトアップされたしだれ桜がほぼ満開で、店の周りに植えられた
桜並木と併せて、今回で10周年を向かえた独演会に文字どうり花を添えた。
会場はいつもながらご婦人客が多い。全席自由席だが、予約の際、入場券に
整理番号が打ち込まれているので、静かに席につくのかと思いきや、奇声を
発しながら、恥ずかしげもなく、場所取りに精を出していた。
おせっかいとは思いながら、お元気ですねと、声をかけたら、さすがにばつ
悪そうに、急におとなしくなった。他県は知らないが、こういう光景は、
関西独特と言う話もある。
演題は「百年目」。古典落語ですと、文珍さんの説明があった。昔から
良くある話だが、堅物で通っていた人ほど、たががはずれると危ない。
その堅物の番頭が、大川(淀川)で、芸者をあげて船遊びをしていたところを、
旦那に見つかる話である。弁解に四苦八苦する番頭。じわじわと問い詰める旦那と
番頭のやり取りを身振り手振り、文珍さんが見事に演じた。
文珍さんによれば、番頭は、今で言えば、中間管理職である。落語の枕で、
なにかといえば、不始末をしては、頭を下げる中間管理職を笑いに使った。
頭の下げ方にはじまり、弁解の口上まで、全てが、マ二アルどうりだという。
「それでは、着席させていただきます」と書いたマ二アルどうりいかず、
「それでは着服させていただきます」とやったと。マ二アルどうり頭を
下げなかったのは、船場吉兆の女将くらいだと言って、また、笑いを誘った。
つなぎで、内海英華師匠が、女都都逸をやった。都都逸を生で聴くのは
はじめてだった。都都逸と来れば、艶話である。面白くなかったのかどうかは
知らないが、前の席に座ったオバサン連中は、くすりとも声を出さずに聞いていた。
文珍さんによれば、昨年正月から全国公演を始め、今回で70回目だという。
落語寄席の傾向として、東へ行くほど、深く物を考えている。西へいくほど
いい加減で、その分,西の方がよく笑ってくれるそうだ。そういうものかなと、
思いながら興味深く聞いた。
会場の様子をスケッチしたが、お気づきのとり、画面には、バタバタと、
席を占拠したオバサン連中が並んでいる。(了)