(学校で教えてくれない経済学)
JRの車内吊り広告を見ていたら、雑誌WEDGE最新号で、「1ドル70円で日本は強くなる。円安亡国から決別せよ」という文字が飛び込んできた。日々の上げたり下げたりの動きを追いかけるばかりが能でない。読んでみて勉強になった次第である。
ウエッジの記事は、日本の産業構造の強化や購買力の強化に、円が高くなることが必要だと訴えていた。ただ、日本では、円が高くなると「売り」、円が安くなると「買い」と、特に株式市場では、反応する。
国民経済的には,自国通貨が、強くなって「売り」、自国通貨が安くなって「買い」という構図が、輸出立国として、第二次世界戦で日本が負けて以降、長年にわたって、日本人の体の隅々まで、刷り込まれてきた。
刷り込みとは恐ろしいもので、雑誌「ウエッジ」の見出しも、「1ドル70円」というタイトルで、雑誌を買う、筆者のような人間が、全てではないだろうが、いることだけは確かである。一冊400円だが、好学の向きは、一読をお薦めする。
目先の動きに戻る。4月29,30日に開かれる米FOMC(連邦公開市場委員会)で、米FRB(連邦準備制度理事会)が、短期の目標金利であるFFレートを現在の2.25%から0.25%下げ、年2.0%へ下げ、同時に出される「声明文」の中で、「追加利下げ打ち止め」を示唆するかどうかが、エコノミストの関心の的となっている。
4月28日、週開けのNY外国為替市場では、ドルは対ユーロで買われ、1ユーロ=1.5564ドルで取引された。ユーロが対ドルで売られた結果、ユーロは、対円でも売られ、1ユーロ=161.72円前後で取引された。
円相場を対ドルで見ていると円高だが、対ユーロで見ると、大幅な円安である。年初にベルギーへ出かける機会があったが、ユーロに対して日本円がいかに値打ちのない通貨に成り下がっていることをしみじみ実感した。
NY原油(WTI)先物相場が、ドルが対ユーロで、買われたことを受けて反落、バレル115ドル台まで値下がりした。原油相場に限らず、金、プラチナ、小麦、とうもろこしはじめ商品相場が軒並み値下がりした。
ドルの先安を見越して、餌場に集まっていた水鳥が、ばたばたと飛び立っている動きと見れば分かりやすい。ドルの先安感は、米FRBの急激な利下げが背景にある。昨年の夏、米国のFFレートは、年5.25%だった。現在、それが2.25%まで引き下げられた。
水は「高き」から「低き」へ流れる。お金は利回りのいい場所を求めて、「低き」から「高き」へ流れる。米国の金利が、次回のFOMCで、利下げ打ち止め感を多少なりとも出してくれば、膨大な貿易赤字、増え続ける財政赤字を抱えながらも、ドル相場は落ち着くと判断しての動きであろう。物事はそう単純なものではないが、FOMCの動きを注目したい。
4月28日、NY株式市場は、FOMC結果待ち、08年1~3月期、米GDP統計も見極めたい。見送り商状から、前日比39ドル安、12,831ドルで取引された。
日本ではガソリンスタンドに長い行列が出来ている。原油がバレル120ドルになっても、1ドル=70円になれば行列は不要となる。為替の意味を改めて、考えてみる好機会だ。(了)