道頓堀・大阪名物くいだおれ風景
江嵜企画代表・Ken
道頓堀・大阪名物くいだおれ風景をスケッチしておいてくれないかと知人のKさんから突然電話がかかってきた。Kさんは灘波高島屋日本画教室の仲間で、道具屋筋の老舗の女将さんでもある。
聞けば、突然で悪いが、どうしても7月7日の大切な会合に間に合わせたいというのである。もし雨でも降れば描けなくなる。時間がない。とるものとりあえず、現場にかけつけてスケッチした。
「くいだおれ」をフリー百科事典『ウィキぺディア」で調べた。株式会社くいだおれが経営する食堂の名前で、1949年6月、故山田太郎さんが創業・開店とあった。
その「大阪名物くいだおれ」が、建物の老朽化などで7月8日をもって閉店すると4月のはじめに記者会見で発表してからの3ケ月、蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
特にチンドン屋の格好をした店1階正面にある人形「くいだおれ太郎」はいまでは全国的に有名で、閉店になれば是非引き取りたいと各方面から声が出ていた。
「現場」を訪れてみて改めて人気のすごさを体感した。黒山の人だかりという言葉があるが、文字通りそれである。入れ替わり立ち代り、「くいだおれ太郎」の前を数人で占拠しては「はい、ポーズ」とやっていた。
先の百科事典『ウィキぺディア』によると、くいだおれ人形は、淡路人形浄瑠璃の頭をつくっていた文楽人形作家、二代目由良亀(藤代亀太郎)の作だそうだ。作家谷崎潤一郎の『蓼喰う虫』の中にも「由良亀」として登場していることを始めて知った。
ところで、閉店と聞いて「くいだおれ太郎」は引っ張りだこになっているようだ。7月3日、阪神甲子園球場にもかけつけ、プロ野球ナイター、阪神・中日戦を「観戦」していた。
創業60年、老舗のお店、「大阪名物くいだおれ」が大阪の街から姿を消すのは淋しい。しかし、聞くところによると、新たな経営者のもと、人形「くいだおれ太郎」は、現在の場所に留まるとの話も出ているそうだからほっと胸をなでおろしたファンも多いのではなかろうか。
「船場吉兆」が大阪の悪名をとどろかせたが、「大阪名物くいだおれ」が大阪の汚名を少なからず償ってくれているような気がしてならない。
はからずもスケッチの機会を作ってくれた知人のKさんに感謝する次第である。
(了)