水仙・第二弾
江嵜企画代表・Ken
昔「春よ来い」というタイトルのNHK朝ドラを見たことがある。春はもうそこまでと思いきや、さに、あらず、人生も同じで、なかなか思うようには運ばない。3月はじめから月末にかけての気候は特にそうだ。三寒四温とはよくいったもので、土曜日はポカポカ陽気、日曜は、こちら神戸は、一転して、午後から冷雨である。
キズイセンと呼でいいのか、正式の名前は知ないが昨年秋、球根を植えていた水仙が一斉に開花をはじめた。背丈はせいぜい15センチほどだが、若魚が跳ねるように花を付けていた。土曜日に軽くスケッチしていた。
前日の雨が効いたのか、今日お昼前、例の更地に出かけたら、わずか一日で描き込めないほど花を腕一杯に広げて、自己主張丸出しで、踊るように咲いていた。
水仙を描いていると、突然、声がした。振り返ったら、猫対策、大変でしょうと、まるで10年の知己のように、相好を崩して話かけてくる年の頃50前後の男性ではないか。阪神青木駅南の青木市場で肉屋をしていた。18年前の震災で市場が全焼、店をたたんだ。猫の話そっちのけで震災当時の話になった。
神戸の人間は1.17である。神戸もひどかった。福島の方は3.11である。どこが違うか。神戸は津波の被害はなかった。決定的に違うのは放射能である。3:11の時から2年経った。状況は悪くなる一方だとテレビ、ラジオで伝えられる。胸が痛む。
猫の話に戻る。ガソリンの廃液を猫が嫌がるから撒かれたらどうかと親切にアドバイスしていただいた。件の紳士は猫は嫌いではないと断った上で、猫に餌をやる輩は許せないとまるで自分自身のことのように怒っていた。
猫に罪はない。しかし、せっかくご機嫌で咲き始めた水仙の上で日向ぼっこされるのはいただけない。(了)