キプロス問題の影響は無視、米ＦＲＢ金融緩和継続を材料に、ＮＹダウ５５ドル高

(学校で教えてくれない経済学）


キプロス政府は資金支援をロシアに求めたが具体的な答えは得られなかったとドイツZDFが21日朝６時台放送のワ―ルドWaveMorningが伝えた。メルケル、ドイツ首相が、「キプロスの大手銀行は混乱している。自ら永続的な解決策を出さねばならない」と厳しい口調で語る様子をテレビ画面に映していた。キプロスは自国の海域で発見されたガス田でロシアのガスプロムを頼りにしている。しかし、目先、キプロスは、60億ユーロの資金をいかに調達出来るかにかかっている。ドイツZDFの担当記者は,EUはキプロスに預金課税する策に出るリスクを犯した。もし失敗すればキプロスごとき小さな問題さえ解決できないとなるとEUのみならずそれに伴い通貨ユーロの信任すら失いかねないと解説した。

ロシアRTRは２１日朝５時台の放送で、キプロスは安定した銀行システムの再構築など種々の対策を用意しているとロシアに支援を求めてサリス財務相がモスクワを訪れたが合意は得られなかった。キプロスの銀行は来週火曜日２６日まで取引が停止される。メルケル首相は「不透明な銀行システム改善のため必要な資金を支援する」と語った。ドイツに期待するのは無理なようだと解説していた。

一方、NY市場は、キプロス問題の不透明な動きの中も、ＮＹダウは前日比５５ドル高、１４，５５１ドルで取引を終えた。２０日付けのＷＳＪ紙電子版でJonathanCheng記者は「米FRB毎月８５０億ドルの資金供給を続けるとＦＯＭＣ声明文で明らかにしたことをマ―ケットは好感した。」と書いていた。２１日朝５時４５分からの放送のモーニングサテライトに出演した堀古英司氏は「FRBが債券購入を従来同様に続けると明言した。ＦＯＭＣ声明文も事前予測とほぼ同じ内容だった。」と述べた後、バ―ナンキＦＲＢ議長は記者との質疑応答の中で「キプロス問題は重大なリスクでない。キプロスの波及効果は限定的だ。」と語った。株式の見通しについて聞かれたバ―ナンキ議長は「米企業が最高の決算を出している。行き過ぎではないと思う。」と、ホリコキャピタルマネジメントもびっくりのコメントをしていたと、苦笑いしながら話していたところが面白かった。

２０日付けのWSJ紙電子版によれば、キプロス問題は嵐が通り過ぎたとは受け止めていないが、むしろ利益確定売りの格好の機会を提供してくれたとディ―ラ―は捉えた。欧州株は英国株が小幅下げた以外は上昇した。アジアでは日本市場が休場したが、シカゴ日経ダウは１２，５８０円と１８日の日経ダウを上回っている。上海株が銀行、不動産株上昇を受けて前日比２．７％上げたと紹介していた。ＮＹ外国為替市場では、ドルは対ユーロで1ユーロ＝１．２９３７ドルまで下げたが、対円では１ドル＝９５．９８円まで値上りした。ＮＹ原油（WTI）はバレル１．０８ドル高、93.24ドル、ＮＹ金相場は、ユーロ持ち直しをうけて小幅下げトロイオンス１，６０５．３０ドルで取引された。ＮＹ債券市場は、債券が売られ、１０年物国債の利回りは１．９６０％まで戻した。日本国債の利回りは0.607% である。日銀が大胆な金融緩和政策を打ち出すとの観測がドル円相場を支えている。(了)