ショパンの夕べ:ピアノリサイタルat兵庫県立芸術文化センター
江嵜企画代表・Ken
ショパンの夕べ、ピアノリサイタルが2月7日、午後5時から兵庫県立芸術文化セン
ターで開かれた。この日は日本画教室の仲間のUさんの次女、ピアストの梅村知加さ
ん、東敬子さん、雑古亜由美さん、3人が独奏した。
実は同じ日、神戸国際大学で川島隆太先生の「認知症」の講演会が午後1時半から
あり、どちらも外せない。開演前ぎりぎりに会場に到着した。演奏一番手は東敬子さ
ん。ソナタ、お馴染みの第三楽章「葬送行進曲」など感性溢れる演奏のあと梅村知加
さんが登場した。三番手は雑古亜由美さんが「船歌 嬰へ長調Op.60等荘重に弾き
切った。
梅村さんのピアノは、上海出身の二胡奏者、沈佳氏との共演は1~2度聴いたことが
あるが、独奏を聴くのははじめてだった。舞台に現れ一礼して鍵盤に向かった。しば
し独特の間があり、4つのマズルカOp.24の演奏がやおら始まった。気楽に聴
けばいいものに、こちらも妙に緊張した。Uさんもきっと緊張しておられたと拝察す
る。演奏前、今日は、ロビーで娘に話しかけてもなにかイライラしてたよと、この日
の演奏会を直前にして彼女なりに力が入っていたのかもしれない。
4つのマズルカOp.24.バラード第2番ヘ長調Op.38.スケルツォ第3番嬰ハ短調Op.39.3
曲を1曲、1曲、丁寧に、かみしめるように、力強く演奏した。演奏の後,Uさんに見事
に演奏されましたね。お目出とうございますと挨拶した。
会場入り口で手渡された、北村智恵氏作成のプログラム作品紹介の「しおり」の中
身がショパンの人となりを短いスペースで併せ伝えた優れものだった。
ショパンは「銃を持って戦うことのみが愛国心ではない。音楽の才能を生かし、
ポーランドという国の悲運な歴史を、後世の外国人に知らしめる役割を担うこともま
た、病弱なお前にとっての、国や民族への愛国心である」という父親からの手紙文
に触れた箇所が特に印象に残った。
梅村知加さんが2曲目に弾いた曲は「バラード第2番へ長調Op.38」だった。
「バラードは日本語で「譚詩曲」もしくは「物語」と訳される。内容が劇的であるこ
とを生命とする。ところが、ショパンにとっては何かのストーリーを音楽に置き換え
たものではない。」と自ら語ったと伝えられると北村氏は書いた。
「ショパン自身は、文学性や標題そのものさえも拒否し、音のみによる表現を自ら
の音楽の信条としていた。ポーランドの愛国の詩人アダム・ミツキヴィッチが文学の
中でしていること、親友ドラクロワが絵画の中でしていること、親友ベルルーニがオ
ペラの中でしていることを、ピアノ作品の中で求めた。そのコンセプトを象徴する言
葉がバラードだったのである」という言葉も印象に残った。
日本画はまだまだ道半ばであるが、音楽の世界と絵の世界は表現の手段は違う。し
かし、見た人、聴いた人の心に話しかけることでは底辺では同じではないかと思いな
がら会場を後にした次第である。素人の分際でなにえらそうなことを言うかとお叱り
を受けそうだが、「ショパンの夕べ」ピアノ演奏会に声をかけ、素晴らしい機会を与
えてくれた日本画教室のUさんに感謝である。(了)