阿部和夫教授at神戸国際大学
江嵜企画代表・Ken
「認知症」の三文字を見ただけで講演会にどっと人がおしかけるようだ。2月18日(土)午後1時半から六甲アイランドにある神戸国際大学で「認知症の治療法―薬以外に何があるかー」と題して安部和夫、兵庫医科大学院教授の講演会が開かれ楽しみにして出かけた。司会者の話では350人が集まった。開演15分ほど前に会場に着きスケッチを始めた。開演にかけてどんどん人が増え、やがて階段教室が一杯になり、補助席が会場に用意された。過去の同大学での講演会通じてこういう光景を始めて見た。
司会者の紹介で安部先生はアルツハイマー病はじめ認知症の大家。この道数十年の豊富な経験と数々の実績を残しておられる高名な先生だと恥ずかしながら始めて知った。この日のタイトルは認知症に対する「薬以外の治療法」である。しかし、薬の名前は、ひとことふたことあったようだが記憶に残っていない。
阿部先生は約1時間半の話の冒頭に、「認知症」とは今まで出来ていたことが出来なくなる病気です。加齢とともに誰でも脳は萎縮します。特に記憶をつかさどる海馬の萎縮に関係した病気ですと話された。認知症と物忘れとは違います。「認知症」のひとでも昔のことはよく覚えています。海馬が委縮する前のことは覚えているからです。
とにかく楽しく毎日を過ごしなさい。身体を動かしなさい。運動することが一番です。それも一日6分歩きなさい。週3日でいいのです。血流が良くなり認知症の原因と言われるアミロイド繊維の脳内の沈殿が運動しない人と比べて少ないということがデータに出ています。脳の中の血流をよくすることが大事だという言葉がよく出て来た。一日6分、週3日で効果があるという言葉が特に印象的だった。
カラオケでもいい。好きな歌を歌うと元気が出る。好きな本を読んでもいい。好きなことをすると血流がよくなる。血流がよくなると認知症に限らず病気になりにくい。食事をとることが大事です。しっかり食べなさいという言葉が印象に残った。ぽっちゃり型の人の方が認知症になりにくいデータがあるそうだ。魚の摂取量が多い人も認知症になりにくいとデータがある。「認知症に関連する書物はなん百冊も出ているんですよ」とニコニコしながら話される阿部先生の言葉も印象に残った。
講演の終わりに認知症の方に対する介護の大切さ、難しさに阿部先生は触れられた。「長いお別れ」(中島京子著)が紹介された。認知症になった患者本人は分からない。「私(介護者)が私(患者)になっていくことが大事だ」と話されたことばが印象に残った。
講演のあと3人が質問した。63歳と名乗るご婦人は「認知症は遺伝しますか?」と聞いた。阿部先生は「遺伝子の影響は5~6%あります。しかし、そんなことにとらわれないで楽しく毎日送ることの方が大事でしょう」と答えた。2番目にある主婦が「ネズミに効果がある薬が開発されました」と聞いた。阿部先生は「市販されても2025年です。それとから」ネズミの臨床結果と人とは違います」と答えた。最後に薬剤師と名乗る男性が「アミロイドの沈着と海馬の萎縮の関係」を聞いた。「海馬は古いことは覚えています。」とだけ答え「歌の好きな方なら、好きな歌を歌って今楽しく過ごすことです」と話を終えられた。(了)