11月23日に、「愛」をテーマにした一枚のCD(シューマンとクララとブラームス)の新譜が発売されました。企画し、演奏しているのは、エロース豊かな女性=ピアニストにして恋知者かつ野生のおおかみ保護の活動家でもある天才エレーヌ・グリモーです。
そのCDジャケット冒頭に、グリモーが書いた愛についての見事な文章が載っていますので、ご紹介します。
「愛は、絶対的な意味としては存在しないものです。それは常に あなた という存在と 私 という存在の間で、激情によって別々の存在だと明かされるふたつの魂の間で交わされる作用です。
愛するということは、この明瞭な意味において、私たちにとって最も固有な存在という掟に従って繰り広げられます。
ですから、愛は極限の苦しみの叫びでも完全な喜びの予感でもなく、熱病のようなひらめきです。それはもっとも強烈な精神的体験であり、最も深い知識の様相であり、迷宮に入り込み嵐に打ちのめされても人が最後まで持ち続けられるのかどうかが問われる魂の透明さを、経験することによって引き出してゆくことなのです。
したがって、愛するとことは、求める気持ちがもつ充足感、人と共に新たに経験する充足感に目覚めること、そして目覚めることで、選ばれた限りある魂の中で無限の夢を体現させること以外の何物でもありません。
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リルケはその詩『鎮魂歌』の中でその掟についての秘密を明かしてくれました。
もし過ちというものがあるならば、それこそが過ちだ。
自らの中に見出すあらゆる自由の中で
愛する者の自由を増大させないことが過ちだ。
私たちは愛し合う時、そのことだけに執着すべきだ。
つまり私たちは互いにあるがままでいるということ・・・」
エレーヌ・グリモー
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抜粋の文責・武田康弘