音楽・自由自在、人間・自由自在、
感性と知性と身体性、その全てから上質の香気が漂うような魅力的な女性、エレーヌ・グリモーの創った「愛」をテーマにしたCDの紹介です。
思索的にして行動的、豊かで鋭く、アグレッシブにして上品、
美しく強い信念の持ち主=グリモーの「愛」の文書をこの下のブログで紹介しましたが、このCD冒頭は、「シューマンのピアノ協奏曲」です。激しく強い打鍵から始まり、メランコリー、瞑想、可憐、しなやか、強靭、憑かれたような想い、音楽がまるで「肉体」そのものの豊かさを持つに至っています。
グリモーの言う「熱病のようなひらめき」としての愛という見方は、シューマンの真髄を明かしました。つづくシューマンの妻クララの歌曲を歌うのは、最高のメゾ・ソプラノ歌手の一人、フォン・オッター、ブラームスのチェロ作品のチェロは、いま話題独占のトルルス・モルクですが、共にグリモーの「愛」の理念の共同の体現者として、見事に「歌って」います。最後のラプソディの独演は、深く美しい!うならざるを得ません。
完全に身体化した心-観念は、「魂」と呼ぶにふさわしい、心身の区別は消える、そんなことを感じ知ることができる素敵な音楽です。眼差し、語り、抱擁、すべてが一体となった美。
グリモーは、まだまだ「進化」しそうです。目(耳)が離せません。もし、彼女の想念にさらに深く強靭な思想が生じれば、アルゲリッチも成しえなかった「人間美」の世界に飛翔できるでしょう。
武田康弘
「ユニバーサル・クラシック」のホームページに紹介されているのを今見つけましたので、リンクしておきます。(12月8日)