思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

金・武田の恋知対話2-1「自己という中心から公共性は生まれる」

2007-06-17 | 恋知(哲学)

恋知対話パート?ー「公共性について」

金泰昌さんからの催促もあり、木曜日に第一弾を書きましたので、以下に貼り付けます。おそらく明日にはキムさんからの応答あるのではないかと思います。ぜひ、ご意見・ご感想をお願いします。 


恋知対話―2の1(通算17)

金泰昌様 2007年6月14日 
自己という中心から公共性は生まれる  武田康弘

これまでの「恋知対話」について、小見出しをつけ、一部修正してインターネット上での公開が出来ましたので、対話を再開します。

キムさんの問いー公共性について武田がどう考えているか?にお応えします。

わたしは、なにごとも赤裸々な心の現実から始めないと、思想は宙に浮いて絵空事になってしまうと思っています。正直な心=己の欲望のありようをよく見つめ、その地点から考えを立ち上げないと、イデオロギー性の強い「主義」に陥ると考えていますので、公共性についても、わたしの体験から始めようと思います。

わたしの公共思想体験は、小学5年生のときの「日本国憲法」の学習に始まります。わたしは当時(もちろん今でも)、戦争への憎悪と嫌悪と恐怖をつよく感じていました。政府が戦争を起こし、自分が戦争に行かされるなどは、絶対に認められないーそのような政府ができた時は「打ち倒すべきだ」と思い、もし政府を倒せなければ、どのような方法をもっても「逃げよう」と心に深く刻んでいました。
わたしは何より私の命が大事であり、他者のために命を捨てるなどという考えは少しもありませんでしたし、「お国のために」などという自己犠牲の思想は、危険でおぞましいものとしか思いませんでした。核戦争も起こり得るという現実の前に、古い道徳や思想は、何の役にも立たないと明瞭に直観していました。
わたしは、どんな遊びより「日本国憲法」の勉強が面白かったので、小学校の先生に頼んで「政治クラブ」をつくってもらいましたが、それは、?国の最高の力=主権は国民にあること、?政府の交戦権を認めない戦争放棄の平和主義をもつこと、?基本的人権は永遠の権利として国民に与えられていること、以上の3つを柱とする民主主義という思想が権力者からわたしを守ってくれると思ったからです。他人のためでも国のためでもなく、自分のために公共性はある、それがわたしの出発点です。

いわゆる「自己という中心」からの出発ですが、それはエゴイズムとは違います。これも小学生の時の思い出ですが、担任が「個人主義ではいけない」という話をしたので、わたしは「個人主義と利己主義は違います。自分の得だけを考えるのはよくないですが、自分の考えに従って生きるのはよいことだと思います」と反論し、担任が絶句したことがありました。

この私の命・生活は何より大事なものであり、この私の心身と私の抱く想念は何より貴重なものである、とわたしはずっと感じてきました。だからこそ、互いにその貴重な世界を守り合い、楽しみや悦びを広げ合うことが必要なのです。これが公共性の起こりであり、公共性とは、集団で生活する人間が、集団に埋没するのを防ぎ、個々人がより大きな私の可能性を開くために必要な思想だ、とわたしは思っています。人間はひとりで生きることはできないので、単なる個人性では、個人の可能性は狭まり悦びも広がりません。公共性とは、互いに私の可能性を広げていくために必要な現実的な思想であり、社会の中でよく生きるための知恵ではないでしょうか。

狭く私の得だけを考える閉じた自我主義的思考ではなく、広くみなに共通する利益を考える開かれた公共的思考は、私の人生を社会的現実に向けて押し広げてくれます。公共性とは、観念的・抽象的な次元ではなく、現実的・具体的な領域で私を活かす道であり、それは私の人生の充実・悦び・晴れやかさの世界を切り開くことになるのです。
 したがって、公共的思考は、一人ひとりのふつうの個人が、私的生活に閉じ込められてしまう不幸から抜け出るための方法であり、広く社会全体を私の世界にするという発想であり、官・政治権力者・経済的支配者・知の独占者から社会・国家・知を「私」-「民」に奪い返す力をもつものです。公共する哲学によって、現代の民主制社会に生きる私たちの思想の原理を明晰化していきたい、そうわたしは思っています。

公共的な時空を開くとは、ふつうの多くの人が、私の可能性を社会的現実に向けて開き合うことだ、それがわたしの基本思想ですが、「公共哲学」の第一人者であるキムさんは、武田の考えをどう見ますか?






コメント
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