思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

金・武田の恋知対話2-2「武田さんと共働・開新につづくことを期待」

2007-06-18 | 恋知(哲学)

恋知対話2-2

武田様 2007年6月18日
金泰昌

 6月15日から17日まで東京で「横井小楠と公共世界」というテーマをもって第74回公共哲学京都フォーラムを主催しました。いろんな側面から実豊かな研究会でありました。ただ武田さんへの応答が遅れましたことをお詫びします。

 わたくしの公共認識はわたくしとは人種的にも文化(宗教)的にも国家的にも相異なる他者との出会いとそのようなちがいにも拘わらず、共にくらし、仕事をし、時にはぶつかりながらも何とか最悪の破局までには行かず、何らかの目標を達成することによって共に生きていかざるを得ないという経験的事実に基づいています。別に利他的というわけではありません。わたくしのわたくしであること=私性=自己同一性を自明なものではなくて、いつでもどこでも他者との関係の中で改めて見直し、立て直し、固定化への衝動に乗ってしまうことのないように自他関係を重視してきたということです。自分の思うようにならないような状況、圧倒的多数の他者たちの真只中で日常生活・研究活動・私的公的交流をつづけていくということは、いつでもどこでもわたくしではない、身体も思考も欲望も目標もわたくしとはちがうし、決してわたくしのものとして回収・同化・支配できない、他者たちが私に向ってわらわれる現象であり、それにきちんと向きあって、わたくしとしての応答―意図的に応答を拒否するという応答も含めて―を要請されているという状況の中で生きつづけてきたという実存体験がわたくしの公共認識の源泉とも言えますね。

 他者とともに生きていくということは、利他的な倫理の立場からものごとを考えるということと必ずしも同じことではありません。他者とともに、他者たちの中で、生きて行かざるを得ないからこそ自分を確かめ、自分の位置付け・意味づけ・視点設定をしっかりし直す必要があります。全体・統一・普遍という名の「同の帝国主義」に制圧・統合・無化されないためにも個体・個別・特殊としてのわたくしであることの確認・再確認・再々確認は不可欠な基本条件であると思います。自己も他者も同時に呑み込んでしまう全体化統一化・普遍化への暴力に抵抗するためにも唯一・代理不可能・還元拒否的な自己と他者の相互関係という次元の重要性を十分認知する必要を強調したいのです。

 わたくしの考える「公共」とは「公共性」という名詞的ものというよりは動詞的はたらきです。「公共する」ということです。ですから、公共性とは何かという実体論的問題設定はそれで重要な専門家的研究課題であると思います。しかしわたくしは「公共するとはどういうことか」そしてそれは「何のためにすることか」という問題に関心があるのです。わたくしの公共認識はそのようなわたくしの問題関心に相関的であります。そしてそれはわたくしの切実な願望=正直な思い=欲望に相関的であります。日本と中国と韓国という政治空間に生きてきた・生きている・生きていくだろう私たち=市民たち=人間たち=自己たちと他者たちが共に幸せになる相和・和解・共福の公共世界を共に拓きたいという欲望です。自分ひとりで考えても他者たちが共にしてくれないとできないことです。ですから自他が向きあって語りあい・働きあい・新しい次元を拓きあうというプロセスを積み上げて行くということが大事であると考えるのです。対話する・共働する・開新する―それがまさに公共するということの具体的な意味であります。わたくしはそのように考えます。ですからわたくしにとりましては、他者との出会い・他者と向きあってたがいの存在をきちんと認め・その価値と尊厳に敬意を払い・一方的な強制・支配・所有(我有化)を戒めるということが公共するということの前提条件になるということであります。

 わたくしは武田さんと哲学を公共するという姿勢でまず対話するという段階に参入したと現在の状況を捉えているのです。ですから、武田さんのご意見をうかがいましたし、また武田さんの考え方を尊重するという立場からわたくしの考え方も武田さんに申し上げて私たちの対話をつづけていきたいと思っているわけです。願わくばいずれ武田さんとの何らかの共働する段階に進展し、そこからまた開新する段階にまでつづくことを期待するのです。わたくしにとっての他者としての武田さんと武田さんにとっての他者としてのわたくしは決して「同」ではなく「一」でもない「異」であり「多」でありながらも「相和」を目指し、どこかで想定外の不和が生じた場合は「和解」に最善をつくし、そこから「共福」の時空が拓かれることを希求するということであります。共に哲学する友よ、それがわたくしの赤裸々な心の現実であります。


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