思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

エゴイズムを越える条件は、自分を愛し、大事にすること。

2007-06-01 | 日記

エゴイズムや独我論を越えるための条件は、自分の心と体と頭を愛し、大事にすることです。
他者への愛は、自分を愛する心からしか生じません。
自己を粗末にする人、ていねいに扱わない人は、真に他者を尊重することもありません。人と、その人の身の回りの様子をみると、どれほどの愛をもった人かが分かります。
その人の「言う事」を聞いてもほんとうのことは分かりません。
実際の態度を観察してはじめて分かるのです。

自分を愛し、大事にしている人でなければ、他者をほんとうに気遣うこともできるはずがありません。自我と他我は深いところでは結び付いているからです。
自分の心が、美しくよい世界への憧れで満たされていなければ、他者への優しさや世界をよくしようという意志が芽生えるはずがありません。
自分を愛し、いたわらない人の思想は、ウソです。

心を透明に保つ努力、頭を鍛える努力、体を健やかにする努力で、自分自身をよい状態に保つこと、自分をていねいに生きることが、エゴイズムによる行動や独我論の思想から自己を解放し、他者と共に生きる広々とした世界―魅力ある人生をもたらすのです。

したがって、教育において何より大事なことは、かつて志賀直哉が強調したように、子どもが自分を大切にし、愛することができるようにすることです。
幼い頃から人はふつう誰でも、人や動物や物に興味を示し、愛しますが、その心を周囲の大人から大切なものとして扱われることで、子どもは、自分自身を愛せるようになります。教育で一番大事な点は、子どもがほんとうに自分を愛せるように配慮することです。
それがなければ、他者愛は、命令や要請による形式愛という欺瞞にしかなりません。当たり前のことですが、愛は強制によっては生じませんから。

私の心身が感じ知る世界は「他者」ー自分の外にある様々な世界です。それらが私の意識の内実なのですから、私の意識に就き、それらをよく見、味わい、愛することは、他者を受容し愛することと結びついているのです。
エゴイズムや独我論は、意識が外なる価値に支配されて、自己の正直な意識につくことに失敗した不幸な観念で、人間からエロースを奪ってしまいます。

武田康弘



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