★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

テロル・車・慕情

2016-05-22 02:01:27 | 漫画など


系譜になってないだろ、という批判に答えるためには、読者の私もこれまた一生勉強しなければ……

「ワイルドスピード メガマックス」という映画をこの前観たのだが、どうもわたくしはマッチョな男どもが犬死にしかかる映画が大好きだ。というより、マッチョな男は優しいはずという、幻想があるのである。

ところで、突然、映画「慕情」を思い出したんだが、訳知りふうで説明が多い映画が多いけれども、「好きだわ」「悲しいわ」という表現だけでいろいろ言ってしまうことは大事だと思う。説明はある程度差別的になるのである。それがいかに批評的であったとしても……。この問題は、上の二つの話題ともいずれつながる。

内田樹氏がいらっしゃいました

2016-05-20 00:29:00 | 大学


内田樹氏が講演をするというメールが事務方から送られてきていたので、氏の講演会には何回か行ったことがあったが、「大学教育は生き延びられるのか」という答えが自明の理のような演題だったので、いつもの悪口が聞けると期待してサン×ート高松の会場に行ってみた。

行って気付いたのであるが、香川大学が今年当番校であるところの「国立大学教養教育実施組織会議及び事務協議会」とかいうものの最初のイベントだったらしく、来ているのは教養教育に関係する部署の教員と事務方がほとんどで、その他一般の教員はほとんど来てなかった。しかし来てた先生が知り合いでよかった。

というか、よくもこういうところに内田氏を呼んだと思う――、今回の会議は文科省の命令であるくぉーたー制とかなにやらに関してみんなで示し合わせることが目的なはずである。明日の会議では文科省の人も来るみたいだから、あれな雰囲気になるはずである。どうみても、内田氏に文科省批判をさせるという、企画側の一部の抵抗があったとしか思えない。そうでなかったら、内田氏の批判で溜飲を下げた後、現実に帰ろうというわけであろうか。あるいは、内田氏が案外、難局を乗り切る具体案を持ってきてくれるかと期待したのであろうか?

内田氏のことである。話が長くなるのは最初からわかりきっているにもかかわらず、最初の司会と学長のお話が長いと思ったが、これも、内田氏の話となるべくコントラストをはっきりつけ、いわば、対立物が対立したまま統一されるが如き、シュルレアリスム的な何かを狙ったのかもしれない。案の定、内田氏の批判がヒートアップし、予定よりかなりオーバーしたようだった。忙しい内田氏が今回承諾したのも(――そういえば、以前、講演はもうやらねえよ、と言っていた気が……)、明らかに、国立大学の子犬のような体たらくに嫌みを言うためであろう。

となりに座っていた、どこかが悪そうなおじさんがずっとiPadでヤフーを見ていたのが気になったが、内田氏のお話は、まあいつものあれであったが、面白かったと思う。というか、ときどき「キミたちは骨の髄からポチである」と言われないと、本当にそれに気付いていない人がいるからである。内田氏が、(大学関係者なら自明の事実であるはずの)大綱化のあたりからふり返って、自身の転向(教務委員長の時の自己評価導入→挫折)をくどいほど説明していたのも、下手をすると、我々は面従腹背とかサバイバルとか、自分自身に言い訳をしながら、改革とかミッションのなんちゃらとかグローバルだかグローカルだか、学生中心だかしらんが、そういう狂ったスローガンを半ば信じ込んでいるからである。現実に我々が行っている制度変更やなにやらが全て間違っているのではないが、それを、狂ったスローガンに対する対処だと思っているところが最悪である。そこには本質的な現実の分析が最後までないからだ。確かに、今大流行のエビデンス主義はあるが、大学が言い訳で捻出しているデータはほとんど嘘じゃねえか。いや、嘘ではないかもしれないが、教育の成果の本質的な部分とは無関係ではないか。いや、完全に無関係とは云いきれないかも知れないが、無関係だと意識的に思っていないと、より大きく関係があるように思い込み始めてしまうのがおちなのである。内田氏が今日繰り返していた「A=スローガンとB=証拠は全く関係がない」という言葉はそういう、「勘違い」の発生のことを言っているのである。だから、内田氏は、教務委員長の時の「勘違い」からの目覚めをふり返ったのであり、その意味で、現役の我々に対して「そろそろ目を覚ましたら如何?」と呼びかけているのである。内田氏は、文科省への一斉蜂起を促したような感じだったが、実際は、別にゼネストやちゃぶ台返しを実行しろといっているのではなくて、学者たちの(学者らしからぬ)認識の問題を示唆していると見るべきであろう。

無論、内田氏のいう文科省の過ちは、ほとんどの大学人にとって自明なはずである。「生き延びる」どころの話ではなく、文科省に殺されようとしているのが日本の教育である。しかし、上記の「勘違い」を意識しない限りは、本当の意味での面従腹背すらなされず、実際は、大学人はアイヒマンみたいな「悪の凡庸さ」に陥るだけなのであろう。

それにしても、内田氏はもともとレヴィナスの翻訳やユダヤ人問題の地味な(今読んでみると、確かに内田氏の文体なのだが)研究者であって、九〇年代以降の大学の滅茶苦茶さがなければ、そのままそんな感じだったのかも知れない。しかし、中野重治ではないが、叩かれることによって強くはねかえる人間という者はいるものであって、話しまくり書きまくる思想家としての内田氏は、実は文科省やら安倍政権やらが生み出したと言っていいと思う。皮肉な事態だなあ……

内田氏の放言癖を批判する人もいるが、だって、彼は時代が生み出した跳ね返る鉄塊なのである。そりゃどこに跳ね返るかわからんだろう。

内田氏が学者だなあと思うところは、学会でみんな同じような分野をやりたがるのは、その分野の論文が多ければその論者の「格付け」が即座に分かるから、と言っていたこと。これはたぶん正しい。うちの学会でも明らかにそうだったからである。よく知ってるなあ……(当たり前)。そこで、多様性が失われ、素人にうまく面白さを伝えることができない人が増えていって業界に来る人がいずれはいなくなってしまう。カルスタで、議論が広がると思いきや、そうでもなかったのは、議論の多様性が抑圧されていたからである。エクリチュールとか越境とか宙づりとか符牒で話をしていれば学会で仲間は増えるだろうが、そりゃ普通の人は何を言ってるかわかんねえわ……

確かに、学者のなかの「格付け」願望の方が、エビデンス主義そのものよりもやっかいなのである。エビデンスは証拠という意味ではなく、エクセルで並べ替えをするためのデータに過ぎないのだ。

以上は、大学人が学問が本当は好きだと仮定した場合の話。現実は、もっと陰惨であることを本当は皆知っている。教育現場がいまも何とかなっているのは、確かに内田氏がいうように、教育に携わる人間が、自分が死にかけても現場を何とかしてしまう「業の深い人」であるせいなのかも知れないが、――いまやそうでない人も多いのである。かつて私も、もしかしたら、文科省は、そういう人たちをあぶり出そうとしているのだ、と思ったこともある。確かに一部そういう側面はあるのである。しかし総体としてはそうでもなさそうだ。制度を改革することと人間の変化の関係にたいする考察が滅茶苦茶である限り、いつまでたっても隔靴掻痒なのは当たり前であって、焦って強権的な異分子排除に脱線するに決まっていると思っていたら、本当にそうなった。まず、教育を目にみえる成果として測定しようとする、通俗小説に出てきそうな小役人的発想から早く脱出しなければならない。

――とはいえ、大学人も、文科省に楯突いても文科省自体に主体性が全くない以上、いじめの応酬みたいな泥仕合になることを予感している。今は、大きな地殻変動の時期であり、文科省も我々もその中の小物に過ぎないのは確かなのだ。ただ、ガロアみたいな、突撃する天才バカが歴史に必要な気もするからなあ、と迷っている時点で、わたくしはより小物であった。

……そういえば、昨日、かわぐちかいじの『テロルの系譜』を読んだので、こんな感想をもったのかもしれません。

テトリス実写化らしい

2016-05-19 18:56:16 | 映画
https://www.youtube.com/watch?v=AhwGEa7507g


テトリスとかいうものをやったことがないので、いまいち面白そうじゃない……

http://www.asahi.com/articles/ASJ5M5GBCJ5MUCFI005.html?iref=comtop_8_03


この人なら知ってる……、ビバヒルのアンドレアの人だ。

http://digital.asahi.com/articles/ASJ5K354LJ5KPTIL00B.html?rm=362


ああ、もうだめだな、いろいろと……オリンピックはやめだな。

とにかくXを達成しろ。やり方はお前らが考えろ

2016-05-19 09:12:45 | ニュース
昨日は授業で、蓮實重彦の会見を「頭の悪そうな受け答え」に書き直しなさい、という宿題をだして悦に入っていたのである……。授業で読み直してみたら、やっぱり、確かにいつもの蓮實だとはいえ、『朝日新聞』でさえ、「蓮實重彦ってどういう人?」という欄を作ってる昨今、あんな感じで記者に喧嘩を売っているのは、丁寧に説明すると称して日和ってるだけの連中よりはかなりマシと言わざるをえない気がするのだ。学生の自己対話に期待しよう。



燃費目標「とにかく達成しろ」 三菱自上層部が圧力http://www.asahi.com/articles/ASJ5L5GZ1J5LUTIL02N.html?iref=comtop_8_01

「とにかく燃費(目標)を達成しろ。やり方はお前らが考えろ」

「とにかくXを達成しろ。やり方はお前らが考えろ」

最近Xに代入できるものが多すぎるので、ちょっと昼寝することにする。



東京五輪2020予想図

2016-05-18 12:50:25 | ニュース


大震災+原発爆発

いろいろとおもてなし

曰くアンダーコントロール

東京五輪開催決定

イノセ追い出し成功

日本の夏、安保の夏

ヒゲパンチ(国会)

エンブレム騒動とか競技場騒動とか

清原ドラッグ

ゲス不倫

おもてなし露見

舛添公私混同

蓮實「ご心境という言葉は私のなかにはございません」

安倍「わたくしが立法府の長です(石破氏もびっくり)」事件……いまここ

おもてなし更に露見

北朝鮮ロケット発射

オバマ、広島で曰く「リメンバーパールハーバー」

「アメリカ、北朝鮮、韓国、中国」に宣戦布告

意味不明なので無視される

南海トラフ大地震(原発3基ほどアンダーコントロール)

AKB48解散

松田聖子ラストコンサート

東浩紀歌手デビュー

ロボット小説家、芥川賞受賞

関東大震災(アンダーコントロール)

庵野秀明監督「風の谷のナウシカ」完結

消費税40%導入

東京五輪2020開催(参加国が日本だけだったので、金メダル獲得数で最高記録)

大学での授業アンケート廃止

小渕ドリル事件関係者総懺悔

金魚と寝ることになったか――

2016-05-17 21:10:32 | 文学


考えてみりゃ、安部公房の「水中都市」より「蜜のあわれ」の方が後である。結局、安部公房も後年に「蜜のあわれ」みたいな作品を書いているところをみると、「水中都市」や「人魚伝」を以て、「蜜のあわれ」を馬鹿にしていた昔のわたくしが馬鹿すぎたのである。

高松の癖に豪雨で

2016-05-16 23:58:03 | 文学


『蜜のあわれ』を観てきた。二階堂ふみが赤子を演じていて、可愛かった。「交尾して参る!」でつい笑ってしまったのはわたくしも慎みがなくなってきた証拠であろう。……というのは冗談であるが、本当はちょっと首をくくりたくなるような映画であった。

昔、「幼年時代」を読んだ時、これなら俺にも書けるぜと思ったことがある。

そう思ってから30年たつ。

家に帰ってきて、ニュースサイトを見たら、蓮實重彦が三島由紀夫賞を受賞したとでていて、わたくしは青春時代を思い出した。http://www.asahi.com/articles/ASJ5J7G1NJ5JUCVL03L.html?iref=comtop_6_03 

「私の書いたものは傑作と言えるものではありません。あの程度のものは、私のように散文のフィクションを研究している者であればいつでも書けるものでありますから、あの程度のものはすなわち、相対的に優れたものでしかないということだと思っております」

この「いつでも書ける」というのが、わたくしの青春時代をさらに想起させる。

新聞記者は、蓮實が「おじさま、いつまでザボってらっしゃるの」という赤子のような声をいつも聞いているのが分からないのであろう。というか、わたくしは蓮實の文章を読むための環境として、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を大音響でかけながらが、案外良いと思う。

金魚繚乱の絵はがき

2016-05-14 18:12:45 | 文学


「ああ、真佐子にも、神魚華鬘之図にも似てない……それよりも……それよりも……もっと美しい金魚だ、金魚だ」
 失望か、否、それ以上の喜びか、感極まった復一の体は池の畔の泥濘のなかにへたへたとへたばった。復一がいつまでもそのまま肩で息を吐き、眼を瞑っている前の水面に、今復一によって見出された新星のような美魚は多くのはした金魚を随えながら、悠揚と胸を張り、その豊麗な豪華な尾鰭を陽の光に輝かせながら撩乱として遊弋している。

――岡本かの子「金魚繚乱」

滝川クリステルの絵難しい

2016-05-13 23:19:35 | ニュース


・東京五輪招致委、2.2億円送金認める 「コンサル料」http://www.asahi.com/articles/ASJ5F5KKZJ5FUTQP01M.html?iref=comtop_6_01

……お・も・て・な・し 表なし~。日本の労働者が、声と態度だけでかいアホ上司と奴隷的同輩と若人の言うことをいつまでも聞いているとは限りません。あり得ないミスが頻発しているのは、彼らが泥臭い尻ぬぐいをやめたからです。サボタージュは日に日にひどくなっております。もうまともにイベントをやり遂げる体制ではありませぬ。革命は起こりませんが、堕落は起こります。

・舛添都知事、45万円分を返金へ「私的な支出誤り計上」http://www.asahi.com/articles/ASJ5F5H15J5FUTIL03M.html?iref=comtop_6_02


……お・も・て・む・き 表向き~。この人を降ろしたがっていた人結構いたからなあ……。まあ学者崩れで許せるのは漱石だけだろう……。官が嫌なので官を従えようとしても自分が官になってしまうだけなんだよなあ……。というかこんな公私混同はわかりやすいものだからかえってどうでもいい。問題は、海外に商売の手助けに行っている政治家であって、あれはたぶんほとんど外「遊」である。公私混同が合法的に行われていることこそをマスコミは問題にすべきである。ところで、甘利さんはどうなったんだろう?

・社民の「統一名簿」呼び掛け、小林節氏が拒否http://www.asahi.com/articles/ASJ5F5GYBJ5FUTFK00M.html?iref=comtop_list_pol_n03

……小林節偉いけど心配だなあ……。無党派層は政治的に実は一番狷介固陋というか良く言って明晰だから、なかなか動かない。あまり無党派を無知なノンポリと考えない方がよいのである。やっぱ公明党を切りくずす方がいいかもしれんぞ……と、思った。

初号機と光子力ビームと女性

2016-05-12 23:20:22 | 大学


今日は、サブカルにおける男と女問題について結構突っ込んだ話をする予定であったが……。マ×ンガーZの最終話とエ×ァンゲリヲンの天使化=覚醒だか暴走だかのシーンとの共通点と違いについて、学生と考えていたら、時間が来てしまいました。

わたくしの言いたいのは、ミソジニーのあり方なのだ。

どちらもロケットパンチや光子力ビームを使う事態は、どうでもよい。

いや、どうでもよくない。シンジ君は、「綾波を返せ」とかDV夫みたいなことを言ってないで、「光子力ビーム!」と言えばいいのである。これは「安倍は頭がおかしい」と「絶望者に悪の動機は理解できない。」(レーニン)との違いだ。違うか……