昭和52年初版 常盤新平/訳 山本卓美/デザイン 樽喜八/イラストレーション
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください
ディクスン・カーもこれまで読んだ推理小説の解説で何度も出てくる名前だったため
ジュブナイルでいろいろ探した結果、この文研出版シリーズが引っかかった
■ジョン・ディクスン・カー(1906~1977)
アメリカ生 25歳で名作『夜歩く』を発表し注目を集める
その後イギリスに住み、小説の舞台もイギリスのため英米作家とされる
別名カーター・ディクスンでも多くの作品がある
「密室殺人もの」の第一人者
昭和52年初版ということで他館から借りてきた
全体が黄色くなったかなりのレア本が届いて大当たりv
「文研の名作ミステリー」は他にも色々あるので気になる
表紙、挿絵はちょっとクセのあるイラスト
蝋人形といえば少年探偵シリーズを思い出す
内容は一気読みするほど面白かったv
最後まで事件の真相、真犯人も当てられない思いがけない人物!
バンコランが最初から、かなり裏で調べ上げた上で
事件に取りかかっているのが特徴的
悪人ガランとは長年の付き合いだからこそ
彼が絡んでいるとなれば、裏まで十分調べてから捜査に入ったのだろう
そのバンコランですら、真犯人にたどり着くまでには時間がかかった
大きなヒントが目の前で与えられていたなんて思いもしなかった故に!
タイトルのろう人形は、雰囲気の味つけ程度で、今作は複雑な人間関係がメイン
【内容抜粋メモ】
●パリ警視庁探偵アンリ・バンコラン
ナイトクラブに呼び出された私(語り手
隅に大きな顎と曲がった鼻の男が潜んでいるのが分かる
日焼けした立派な青年ショーモン大尉に
パリで一番古い蝋人形館「オーギュスタン蝋人形館」の主人オーギュスタン老人を会わせる
娘マリーと2人で経営
ショーモンの婚約者オデット・デュシェーヌが殺されセーヌ川に浮かんだ
ショーモンはオデッ、彼女の友だちクローディンと会う約束をしていたが
急に「行けない」と電話があった
不審に思い、後を追い、蝋人形館の前で待ったが
入ったまま出て来なかった
閉館は5時
裏口はあるがカギがかかり、見物人は通れない
●動く蝋人形
オーギュスタン:
「恐怖のギャラリー」というコーナーに
斧で人を殺したルシャール夫人の蝋人形がある
小さな茶色の帽子、毛皮の襟巻きをした美女
オデットは「獣人の人形が観たい」と言い、教えたのが気になり見ると
オデットの後ろをルシャール夫人が歩いていたのを見た!
娘マリー:
父はだいぶ耄碌している
オデットらしき女性と長話をした
だが、人相は真逆
●獣人の腕の死体
獣人の人形を見に行くと女性の死人を抱いていて
後にそれはクローディン・マルテルの死体と分かる
マルテル伯爵の令嬢
ナイフで心臓を刺され、ネックレスについていたと思われる
ペンダントが引きちぎられている
●恐怖のギャラリーの裏口
ドアがあり、いつもカギがかけられているが廊下につながっている
細い通りに出ると、隣りの建物のドアにはドアノブがない
クローディンのバッグが落ちていて、舞踏会用の黒いマスクが落ちている
マリーが話したのはクローディンではないかと推理
小さな茶色の帽子、毛皮の襟巻きをしていたため
通路にガラスの破片が落ちている
マリーはパリのいろいろな銀行に100万フランほどのお金を預けていることを問い詰める
バンコランは、この事件には第三の女がいること
悪党エチエンヌ・ガランと関係していることを示唆する
●オデットの友だち ジーナ・ブレボー
クローディンとともに学生時代からの友だちで
大人しいオデットと正反対にジーナは派手好き
●文学博士 エチエンヌ・ガラン
バンコランとは昔からのライバル関係
なぜか社会、人間を憎んでいて
恵まれた生活をしている上流社会のゴシップを集めて脅して金を集めている
しかも証拠品は絶対返さず、出版物にして発表し
名誉、地位ももぎとることに喜びを見出している
●秘密クラブ
中ではマスクをして、互いの顔も名前も分からない男女が集まる
会費はとても高いため、長者番付に載るような名士しか会員になれない
マスクには色分けがあり、相手が決まっていない人は黒
決まっている人は赤
ガランはそこの経営者で、会員のゴシップを集めて脅しの材料を集めている
クラブと蝋人形館は2つのカギで通じている!
街と通路から出る裏口のドアのカギは会員しか持っていない
その特別なカギは銀色
マリーが裏口を開けるのに金をとっている
ガランは完全なアリバイを話してみせる
ナイトクラブから出た時、尾行をつけたら
クルマの後部座席に毛皮の襟巻きの女性も乗っていた
●ムーラン・ルージュの歌手 エステル嬢
彼女は蝋人形館の前をウロウロしていた
バンコラン:
エステルはジーナに間違いない
昨日、ムーラン・ルージュを休んだ
部屋から赤いマスクと銀のカギが見つかった
ガランと関係している
●オデットの幼馴染 ポール・ロビケー ロンドンのフランス大使館員
デュシェーヌ夫人を訪ねるとジーナもいた
オデットが12歳の時、父は自殺
その屋敷にガランも挨拶に来る
亡き主人と親しかったと自己紹介する
ジーナが玄関に行くのを見て、私はその話を盗み聞きするよう言われる
ガランに「クローディンを殺したのは誰か?」と聞かれて
「暗くて分からなかった」と狼狽えるジーナ
ガラン:
君は犯人を見ているはずだ
今晩、いつもの時間に 18号だよ
ロビケー:
クローディンから何通も手紙をもらった
ショーモンが他の女を好きになったと書いてあった
ロビケーが銀のカギを落とした 19とある
つっこんで尋ねると、クラブは男女各40人それぞれの部屋を持っている
19はその部屋番号
このことを伏せる代わりに、このカギを貸してほしいと頼む
●マルテル伯爵
古い由緒ある貴族で、家の名誉のためなら死んでも構わないと思うほど古い考えの老人
左腕がない
マルテル伯爵:娘のことは妻に任せきりだった
夫人:
昨夜は部屋で一晩中泣いていた
「彼がフランスに帰っていたことを知らなかった」とか言っていた
ペンダントのことを聞くと
アクセサリーは好きじゃないから普段はつけないため知らない
バンコランの事務所はパリ警視庁の最上階で
最も高いためパリ中が見える
オデットの検死結果:
頭に数カ所の傷
数mから落ちたと思われる
死因はナイフで心臓を刺された
バンコラン:
オデットはクラブで殺されたに違いない
通路に落ちていたのはクローディンのものだ
ジーナとクローディンは会員だが、オデットは違う
蝋人形館で待ち合せる約束をした
犯人は通路に出るドアで待っていて、クローディンの背中を一突き
ジーナは驚いて逃げたが暗くて顔は見えない
●デュシェーヌ夫人の告白
夫人:
私も昔、会員だった
そこでガランの声を聞いた
先日、玄関先から聴こえた声で思い出した
主人が客と応対していた時もその声を聞いた
その後、主人は自殺した
あの男が犯人に違いない 捕まえてください
犯人がクローディンのバッグから探していたのは
ペンダントについていた銀のカギだと推理
その後、思いつきで獣人の腕に乗せたと推理
●盗聴
19号で密会するジーナとガランの話を聞くため
マスク・クラブに18号のカギで潜入捜査することになった私
真ん中は大きな中庭
部屋には窓が1つあるだけ
ジーナはムーラン・ルージュで歌ってからクラブへ向かった
18号に行こうとすると、窓ガラスが割れていて入れないと受付に言われるが
そのまま入る
19号のドアが開いていて、2人が来る直前に低い屏風の後ろに隠れる
(ガランが愛猫を連れてきた時点でバレると分かるねw
ジーナ:
警察に行きます
バンコランにワケを書いた手紙を出した
クローディンが突き飛ばして、窓を破って中庭に落ちた
死体を隠さないと死刑になるとあなたが脅した
ガラン:
僕はオデットの苦しみを短くしてやっただけ
2、3日中にパリを引き上げる
共同経営者にクラブを売った
すべてまとめて本に書くつもりだ
その原稿はクラブの金庫にある
また金が欲しくなったら役に立つ
犯人はショーモンではないですか?
猫が私に気づき、銃を持つ仕草をして
後ろを向かせて逃げようとするが
非常ボタンで用心棒たちから追われる
窓を破り、中庭から目の前のドアを開けて入ると
真っ赤なドレスを着た別人のように美しいマリーがいた
かくまってくださいと言って意識を失い
気づくと包帯が巻かれてソファに寝かされている
話しているうちに2人に特別な感情が生まれるのは唐突では?
マリー:
私が求めるのは表と裏のある二重生活
昼はみすぼらしい蝋人形館の切符売り
夜はシンデレラのようなお姫様!
父はうすうす気づいている
もう知られても構わない
ガランのたくらみを話すと、マリーは怒り
金庫から原稿を出して燃やす
●ナイフのありか
マラーの人形の胸に刺してあるナイフと血は本物
クローディンを刺してすり替えられた
男女のカギは形が違うため
犯人がクローディンのカギを盗んでも使えない
私は帽子、コート、マスクをして
マリーの恋人役に変装して受付から出る
裏口のドアが開いていて、ナイフがない!
突然、窓が開いて、ガランがノドにナイフを刺されて死んでいた
オーギュスタン:お父さんはいつでもお前の味方だ
バンコラン:
親というものは、娘が何をしてもかばうものなんですか?
通路に落ちていたのは腕時計のガラス
クローディンを刺した時に割れた
犯人はマルテル伯爵 自分の娘を自分で殺したんだ!
動機はガンコで名誉心が強いため
普通、右利きなら左腕に時計をはめる
なぜナイフを持つ手に時計をしていたのか?
腕が1本しかなければそうするしかない
15分前に伯爵と電話で話した
賭け事好きな伯爵は、我々がうまく推理し
犯人だと言い当てた時、自白するつもりでいた
ガランはクローディンがクラブ会員であることをタネに
伯爵を脅していた
オデットを刺したのはガラン
クローディンは自分が殺したと思って泣いていた
母親にそれを告白していたのを、部屋の外から伯爵が聞いていた
蝋人形館に来た時はまさか殺すとは思っていなかった
だが、蝋人形にはブキミな力がある
死神がそそのかし、マラーからナイフを抜いて
娘を獣人の生贄に捧げて先祖に対して償いをした
ガランを殺したのも伯爵 名誉を守るため
それらの証拠品を会った時にすべて見せていた!
机の前にあった青い紙切れは人形館の入場券
事件の晩はトランプをしに行ったと話したが
そんなアリバイは調べればウソだとすぐ分かる
目の前で腕時計を見るフリまでした
あなたが犯人だと言ったら、褒めてくれました
もう一度電話するバンコラン:
今、青酸カリを飲んだら、犯罪はなかったことにします
マルテル家の名誉は守られるでしょう
飲まなかったら、永久に嘲笑われる
トランプを2枚引いて、私の数が大きかったら私の勝ちとしましょう
伯爵:
あなたのカードはダイヤの5
私のカードはスペードの3
あなたをお待ちします
*
父親が名誉を守るために娘を殺すほどだったのに
最後に自らの死を選ばなかったのは意外だった
でもよく考えれば、罪を認めて世間に恥を晒すことのほうが
彼にとっては地獄同様の苦しみなのだから
そのほうが重い決断だったということか
■解説 常盤新平
バンコランが扱うのは、いつも背筋が寒くなるような薄気味悪い殺人
カーの初期作品にしか出てこない
ディクスン・カーで書く時の主役はフェル博士
カーター・ディクスンの時の主役はヘンリー・メルビル卿
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
【注意】
トリックもオチもネタバレがあります
極上のミステリーなので、ぜひ読んで犯人当てをしてみてください
ディクスン・カーもこれまで読んだ推理小説の解説で何度も出てくる名前だったため
ジュブナイルでいろいろ探した結果、この文研出版シリーズが引っかかった
■ジョン・ディクスン・カー(1906~1977)
アメリカ生 25歳で名作『夜歩く』を発表し注目を集める
その後イギリスに住み、小説の舞台もイギリスのため英米作家とされる
別名カーター・ディクスンでも多くの作品がある
「密室殺人もの」の第一人者
昭和52年初版ということで他館から借りてきた
全体が黄色くなったかなりのレア本が届いて大当たりv
「文研の名作ミステリー」は他にも色々あるので気になる
表紙、挿絵はちょっとクセのあるイラスト
蝋人形といえば少年探偵シリーズを思い出す
内容は一気読みするほど面白かったv
最後まで事件の真相、真犯人も当てられない思いがけない人物!
バンコランが最初から、かなり裏で調べ上げた上で
事件に取りかかっているのが特徴的
悪人ガランとは長年の付き合いだからこそ
彼が絡んでいるとなれば、裏まで十分調べてから捜査に入ったのだろう
そのバンコランですら、真犯人にたどり着くまでには時間がかかった
大きなヒントが目の前で与えられていたなんて思いもしなかった故に!
タイトルのろう人形は、雰囲気の味つけ程度で、今作は複雑な人間関係がメイン
【内容抜粋メモ】
●パリ警視庁探偵アンリ・バンコラン
ナイトクラブに呼び出された私(語り手
隅に大きな顎と曲がった鼻の男が潜んでいるのが分かる
日焼けした立派な青年ショーモン大尉に
パリで一番古い蝋人形館「オーギュスタン蝋人形館」の主人オーギュスタン老人を会わせる
娘マリーと2人で経営
ショーモンの婚約者オデット・デュシェーヌが殺されセーヌ川に浮かんだ
ショーモンはオデッ、彼女の友だちクローディンと会う約束をしていたが
急に「行けない」と電話があった
不審に思い、後を追い、蝋人形館の前で待ったが
入ったまま出て来なかった
閉館は5時
裏口はあるがカギがかかり、見物人は通れない
●動く蝋人形
オーギュスタン:
「恐怖のギャラリー」というコーナーに
斧で人を殺したルシャール夫人の蝋人形がある
小さな茶色の帽子、毛皮の襟巻きをした美女
オデットは「獣人の人形が観たい」と言い、教えたのが気になり見ると
オデットの後ろをルシャール夫人が歩いていたのを見た!
娘マリー:
父はだいぶ耄碌している
オデットらしき女性と長話をした
だが、人相は真逆
●獣人の腕の死体
獣人の人形を見に行くと女性の死人を抱いていて
後にそれはクローディン・マルテルの死体と分かる
マルテル伯爵の令嬢
ナイフで心臓を刺され、ネックレスについていたと思われる
ペンダントが引きちぎられている
●恐怖のギャラリーの裏口
ドアがあり、いつもカギがかけられているが廊下につながっている
細い通りに出ると、隣りの建物のドアにはドアノブがない
クローディンのバッグが落ちていて、舞踏会用の黒いマスクが落ちている
マリーが話したのはクローディンではないかと推理
小さな茶色の帽子、毛皮の襟巻きをしていたため
通路にガラスの破片が落ちている
マリーはパリのいろいろな銀行に100万フランほどのお金を預けていることを問い詰める
バンコランは、この事件には第三の女がいること
悪党エチエンヌ・ガランと関係していることを示唆する
●オデットの友だち ジーナ・ブレボー
クローディンとともに学生時代からの友だちで
大人しいオデットと正反対にジーナは派手好き
●文学博士 エチエンヌ・ガラン
バンコランとは昔からのライバル関係
なぜか社会、人間を憎んでいて
恵まれた生活をしている上流社会のゴシップを集めて脅して金を集めている
しかも証拠品は絶対返さず、出版物にして発表し
名誉、地位ももぎとることに喜びを見出している
●秘密クラブ
中ではマスクをして、互いの顔も名前も分からない男女が集まる
会費はとても高いため、長者番付に載るような名士しか会員になれない
マスクには色分けがあり、相手が決まっていない人は黒
決まっている人は赤
ガランはそこの経営者で、会員のゴシップを集めて脅しの材料を集めている
クラブと蝋人形館は2つのカギで通じている!
街と通路から出る裏口のドアのカギは会員しか持っていない
その特別なカギは銀色
マリーが裏口を開けるのに金をとっている
ガランは完全なアリバイを話してみせる
ナイトクラブから出た時、尾行をつけたら
クルマの後部座席に毛皮の襟巻きの女性も乗っていた
●ムーラン・ルージュの歌手 エステル嬢
彼女は蝋人形館の前をウロウロしていた
バンコラン:
エステルはジーナに間違いない
昨日、ムーラン・ルージュを休んだ
部屋から赤いマスクと銀のカギが見つかった
ガランと関係している
●オデットの幼馴染 ポール・ロビケー ロンドンのフランス大使館員
デュシェーヌ夫人を訪ねるとジーナもいた
オデットが12歳の時、父は自殺
その屋敷にガランも挨拶に来る
亡き主人と親しかったと自己紹介する
ジーナが玄関に行くのを見て、私はその話を盗み聞きするよう言われる
ガランに「クローディンを殺したのは誰か?」と聞かれて
「暗くて分からなかった」と狼狽えるジーナ
ガラン:
君は犯人を見ているはずだ
今晩、いつもの時間に 18号だよ
ロビケー:
クローディンから何通も手紙をもらった
ショーモンが他の女を好きになったと書いてあった
ロビケーが銀のカギを落とした 19とある
つっこんで尋ねると、クラブは男女各40人それぞれの部屋を持っている
19はその部屋番号
このことを伏せる代わりに、このカギを貸してほしいと頼む
●マルテル伯爵
古い由緒ある貴族で、家の名誉のためなら死んでも構わないと思うほど古い考えの老人
左腕がない
マルテル伯爵:娘のことは妻に任せきりだった
夫人:
昨夜は部屋で一晩中泣いていた
「彼がフランスに帰っていたことを知らなかった」とか言っていた
ペンダントのことを聞くと
アクセサリーは好きじゃないから普段はつけないため知らない
バンコランの事務所はパリ警視庁の最上階で
最も高いためパリ中が見える
オデットの検死結果:
頭に数カ所の傷
数mから落ちたと思われる
死因はナイフで心臓を刺された
バンコラン:
オデットはクラブで殺されたに違いない
通路に落ちていたのはクローディンのものだ
ジーナとクローディンは会員だが、オデットは違う
蝋人形館で待ち合せる約束をした
犯人は通路に出るドアで待っていて、クローディンの背中を一突き
ジーナは驚いて逃げたが暗くて顔は見えない
●デュシェーヌ夫人の告白
夫人:
私も昔、会員だった
そこでガランの声を聞いた
先日、玄関先から聴こえた声で思い出した
主人が客と応対していた時もその声を聞いた
その後、主人は自殺した
あの男が犯人に違いない 捕まえてください
犯人がクローディンのバッグから探していたのは
ペンダントについていた銀のカギだと推理
その後、思いつきで獣人の腕に乗せたと推理
●盗聴
19号で密会するジーナとガランの話を聞くため
マスク・クラブに18号のカギで潜入捜査することになった私
真ん中は大きな中庭
部屋には窓が1つあるだけ
ジーナはムーラン・ルージュで歌ってからクラブへ向かった
18号に行こうとすると、窓ガラスが割れていて入れないと受付に言われるが
そのまま入る
19号のドアが開いていて、2人が来る直前に低い屏風の後ろに隠れる
(ガランが愛猫を連れてきた時点でバレると分かるねw
ジーナ:
警察に行きます
バンコランにワケを書いた手紙を出した
クローディンが突き飛ばして、窓を破って中庭に落ちた
死体を隠さないと死刑になるとあなたが脅した
ガラン:
僕はオデットの苦しみを短くしてやっただけ
2、3日中にパリを引き上げる
共同経営者にクラブを売った
すべてまとめて本に書くつもりだ
その原稿はクラブの金庫にある
また金が欲しくなったら役に立つ
犯人はショーモンではないですか?
猫が私に気づき、銃を持つ仕草をして
後ろを向かせて逃げようとするが
非常ボタンで用心棒たちから追われる
窓を破り、中庭から目の前のドアを開けて入ると
真っ赤なドレスを着た別人のように美しいマリーがいた
かくまってくださいと言って意識を失い
気づくと包帯が巻かれてソファに寝かされている
話しているうちに2人に特別な感情が生まれるのは唐突では?
マリー:
私が求めるのは表と裏のある二重生活
昼はみすぼらしい蝋人形館の切符売り
夜はシンデレラのようなお姫様!
父はうすうす気づいている
もう知られても構わない
ガランのたくらみを話すと、マリーは怒り
金庫から原稿を出して燃やす
●ナイフのありか
マラーの人形の胸に刺してあるナイフと血は本物
クローディンを刺してすり替えられた
男女のカギは形が違うため
犯人がクローディンのカギを盗んでも使えない
私は帽子、コート、マスクをして
マリーの恋人役に変装して受付から出る
裏口のドアが開いていて、ナイフがない!
突然、窓が開いて、ガランがノドにナイフを刺されて死んでいた
オーギュスタン:お父さんはいつでもお前の味方だ
バンコラン:
親というものは、娘が何をしてもかばうものなんですか?
通路に落ちていたのは腕時計のガラス
クローディンを刺した時に割れた
犯人はマルテル伯爵 自分の娘を自分で殺したんだ!
動機はガンコで名誉心が強いため
普通、右利きなら左腕に時計をはめる
なぜナイフを持つ手に時計をしていたのか?
腕が1本しかなければそうするしかない
15分前に伯爵と電話で話した
賭け事好きな伯爵は、我々がうまく推理し
犯人だと言い当てた時、自白するつもりでいた
ガランはクローディンがクラブ会員であることをタネに
伯爵を脅していた
オデットを刺したのはガラン
クローディンは自分が殺したと思って泣いていた
母親にそれを告白していたのを、部屋の外から伯爵が聞いていた
蝋人形館に来た時はまさか殺すとは思っていなかった
だが、蝋人形にはブキミな力がある
死神がそそのかし、マラーからナイフを抜いて
娘を獣人の生贄に捧げて先祖に対して償いをした
ガランを殺したのも伯爵 名誉を守るため
それらの証拠品を会った時にすべて見せていた!
机の前にあった青い紙切れは人形館の入場券
事件の晩はトランプをしに行ったと話したが
そんなアリバイは調べればウソだとすぐ分かる
目の前で腕時計を見るフリまでした
あなたが犯人だと言ったら、褒めてくれました
もう一度電話するバンコラン:
今、青酸カリを飲んだら、犯罪はなかったことにします
マルテル家の名誉は守られるでしょう
飲まなかったら、永久に嘲笑われる
トランプを2枚引いて、私の数が大きかったら私の勝ちとしましょう
伯爵:
あなたのカードはダイヤの5
私のカードはスペードの3
あなたをお待ちします
*
父親が名誉を守るために娘を殺すほどだったのに
最後に自らの死を選ばなかったのは意外だった
でもよく考えれば、罪を認めて世間に恥を晒すことのほうが
彼にとっては地獄同様の苦しみなのだから
そのほうが重い決断だったということか
■解説 常盤新平
バンコランが扱うのは、いつも背筋が寒くなるような薄気味悪い殺人
カーの初期作品にしか出てこない
ディクスン・カーで書く時の主役はフェル博士
カーター・ディクスンの時の主役はヘンリー・メルビル卿